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第37話 道しるべ

  「と、いうワケだから、星玻、留守番宜しく!」 玄関で色の腕でに腕を絡めている僕は、唖然としている星玻に家の鍵を差し出す。 「イイ、ちゃんと留守番してるだよ!ついてきたりしたら本気で怒るからね!」 こんな強気な僕をみたことないと色までおろおろしていたが、星玻は一瞬で回復した。 「やぁだ!ボクもいく!!」 そして、絶対に鍵を受け取ろうとしない星玻は、僕の腕の袖を引っ張った。 「あのね、誰かひとりは留守番しないと母さん宛てに届く小包が受け取れないでしょう!」 「じゃ、兄さんが留守番すればイイじゃん!」 頑固なのはお互い様というように、星玻も負けじと僕に喰らいつく。 「なにいってんの?お呼ばれしたのは色だよ。その色がいかないなんて不自然でしょう!」 僕は仁王立ちでそういい切るが、頬っぺたを膨らませた星玻は引っ張った僕の袖を離そうとしない。 当然といえば当然なんだが、僕は溜め息をついてこういった。 「じゃ、僕が留守番しておくから、星玻は色についてってあげて」 と。 受け取ろうとしない鍵を握って僕は色に向いて星玻といっておいでというと、聞き分けのイイ色は無言で頷くがまた星玻が喚きだす。 「やぁだ、月坡が留守番するっていうんなら、ボクも留守番する!」 僕と一緒にいたがる星玻の駄々は凄まじい。コレがもうすぐ二十歳になる男かと思うくらい餓鬼だ。 「星玻、我が儘いわないで!」 僕が声を荒げて怒ると、星玻はやぁだやぁだと駄々をこねだすからタチが悪い。 「もうイイ!僕が母さんに怒られたら色に慰めて貰うから、星玻は星玻の好きにして!」 そういうと星玻が慌てだす。 「月坡が母さんに怒られるのも、兄さんに慰められるのもダメ!」 「だったら、星玻はどうしたいの?」 アレもコレもダメという星玻につき合う僕の身にもなってという態度で、僕は訊く。 「……………う"ぅ!」 言葉を詰まらせるのは打開策がないからだろう。学年は上でも、歳は同じだ。怯むときは怯む。 僕は星玻に詰めよって、答えてと腕組みをした。 「ボ、ボクが留守番したら、月坡、ボクにご褒美くれる?」 渋々だされる提案は、星玻のそう気乗りしない星玻の中では妥協に妥協を重ねたモノ。 「う~ん、そうだね。色みたいに我が儘いわないで僕のいうこと聞くっていうんなら、ちゃんとご褒美はあげるよ」 僕がそう返すと、星玻は一瞬大きく目を開いて何度か瞬きしたと思ったら、今度は僕の横にいる色に詰めよっていた。 「どういうこと、兄さん!いままでずっと月坡からご褒美貰ってたの!」 その問いかけに、色はソレはもう勝ち誇った顔でいっぱいきすしてもらった♪と、自慢げに星玻に語っていた。蒼白する星玻は、僕の裾を離すと僕の手から鍵を奪う。そうして、こういうのだ。 「ボク、我が儘いってないよ!ボク、イイ子だから月坡のいうこと聞いて、留守番してるもん!」 と。 「そう?」 僕が訝しい顔で星玻をみると星玻はうんうんと頷いて、僕をちらっとみるのだ。もう下心丸だしのニコニコ顔で。 「星玻、解った。帰ってきたらちゃんとご褒美をあげるから、イイ子で待ってて」 僕が星玻の頭を撫でると星玻は嬉しそうに待ってるからと、星玻は僕らを見送った。ちょろいなと思いながらも、こういうふうにひとの弱味につけ入るのは最低だと思っている自分がいる。 だけど、僕に愛想を尽かす原因の要素のひとつになるんなら構わないと思っている自分もいるから、なおさら最低だと思った。 星玻の気持ちを受けとることをしない僕も、色の優しさに甘え続ける僕も、愛される資格はないんだと思ってるからだろう。 そう、こじれた感情がうみだすモノは灰汁の強い執着だけで、愛情にも満たない。満たない愛情は積もることもなく、崩れて消えてしまうのだ。 月のように白く星のように紅いソレは、どんな色よりも貪欲で、どんな色よりも淡い。 掠れた雲が昊を覆い隠すように、ひとの心も闇に堕ちればタダの───鬼灯。 暗闇を照すひとつの灯籠でしかないのだ。  

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