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第39話 目的地
「あ"ああ!!兄さん、ズルい!!」
ボクもと僕に抱きついてくる星玻を僕は全身で受け止めて、星玻の頭を撫でる。少し髪の毛が湿っぽいのは湯船を洗ったからだろう。
「お風呂掃除、終わったの?」
そう訊くと星玻はうんうんと頷く。そして、湯船にお湯を張っているよとつけ加えてから、横にいる色にはこういうのだ。
「兄さん、洗濯物まだたたんでないじゃん!」
なに、先に月坡からご褒美貰ってんの!と。
色があまりにもしゅんとした顔をするから、僕が星玻に弁解する。
「いまのはご褒美じゃないよ」
「じゃなに!」
般若のような怖い顔で僕ではなく色に噛みつこうとするから、星玻を制止する。
「僕が色に頼んでぎゅっとして貰ってたの」
星玻も僕が頼んだらぎゅっとしてくれるでしょう?というと、星玻はぎゅっとしてイイの?という顔をする。星玻の場合、僕がいわなくってもぎゅっとしてくるから、そうでもないと思ったが、結局、星玻にいっぱいぎゅっとされて疲れた。
その合間にご褒美のキスをして、星玻が満足する頃にはくたくただった。
晩ご飯ができたのか母さんが僕の様子をみにくるとぐったりした僕をみて、星玻を叱っていた。僕があまり星玻を叱らないでというと母さんは渋々、星玻を叱るのをやめた。
ソレもあるが、僕の顔色が相当悪いようで、母さんは星玻を睨みながら、病院に電話を入れている。ソレが終わると、星玻に向かって怖い顔をした。
「星玻、アンタは留守番!解った!」
洗濯物をたたみ終った色に僕を担がせると母さんは僕を病院につれていく。病院の方もなれた様子で僕を向かい入れるから、なんだか悪い気がした。
診察を受けて、点滴を処方されて入院する。そんな流れで、月に何度か病院に運ばれて、僕は入院することになる。
「色、ゴメンね。疲れてるのに……」
病院まで担ぐ役を任されてばかりの色に僕は謝ることしかできない。いちにち入院するだけでも、色の不安も大きくなるし、家計の負担にもなる。母さんと父さんにも迷惑かけてるよなと、入院手続きをして戻ってきた母さんに僕はこういった。
「母さん、ゴメン、迷惑ばかりかけて……」
僕の口からそういう言葉がでると母さんは急に立ち上がると、「星玻が心配していると思うから電話してくる」と病室からでていってしまった。後ろ向きの母さんの肩が少し震えていたから、また母さんの地雷を踏んでしまったかもと僕は苦笑いをして、色の顔をみる。すると。
「………つきは、………だいじょうぶ、………おこってない………」
色は僕の頭を撫でて、きょうはおれもとまるからあんしんしてというのだ。色が一緒にいてくれるのは凄く嬉しい。嬉しいけど、疲れている色に無理をして欲しくない。だから、僕は色にこういうのだ。
「無理しないで。色が倒れたら悲しい……」
と。
色の表情が強張るのは解る。僕に拒絶されたような感じがしたからだろう。
「……つきは、……まだ、……ほしはの、こと、………すき………?」
色の不安は僕の心にある。色を好きという僕よりも星玻を好きなんだろうという僕の方が勝っているように感じているからかもしれない。
「うん、好きだよ。だけど、色を好きっていう好きとは違う好きなんだ」
そうひと呼吸置いて、僕は続けた。
「僕は誰よりも色が好き。好き過ぎて死にそうなくらい色が好き。色がいないと呼吸もできないし、心臓も動かないんだ。ソレくらい、色は大事で、僕のすべてなんだよ」
だから、僕のために無理しないで。僕のために体調を崩さないで。お願い。
僕の言葉に開いた目をさらに大きくする色は、わかったというように僕にキスをする。色のソレは唇が触れるだけの軽いモノなのに、僕はくらくらと目眩して全身が震えた。
興奮に近いモノがあったのだろう。ソレだけで、呼吸が乱れて、その先のことを求めそうになってしまう。
「ああ、ダメだ………」
色不足だと呟いて、色の身体を抱きしめる。数秒前にいった言葉などどこへいってしまった!と自身に突っ込むのと同時に、僕の舌は色の舌を絡めとっていた。
くすくすと笑う色に押し倒されて、僕は深く色を受け入れたのはいうまでもないだろう。
「……つきは……、……がまんしないで………」
僕が色にいう口調で色はそういう。こういうときの色には絶対に敵わない。
そう、絶対に敵わないのだ。
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