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第40話 騒動

  「───あの、もうイイかな?」 病室の扉のところで僕と色の濃厚なキスをチラ見している医師がそう聞く。 ハッと飛び起きるように正座をする僕と色に、医師はやんわりと笑った。 「大分、顔色がよくなったね。入院手続きをしたけどお家に帰る?」 点滴の様子をみて、医師は僕の頭を撫でる。僕をこんなふうに子供扱いをするのは、この医師が小児科担当だからだろう。 「帰れるの?」 上目遣いでみあげる僕に、医師は乾いた声で笑って帰れるよという。 「でも、無理はしちゃダメだよ。さっきみたいなことも、できるだけ止めておこうね」 そう続けられると、恥ずかしさのあまり顔まで赤くなった。 「点滴が終わったら帰れるように看護師の方にもいっておくから、今日は帰ろうか?」 顔を俯せてしまった僕の頭をまた撫でて、その隣にいた色の頭まで撫でて病室をでていく医師は、入り口に唖然として立っていた母さんにも同じことをいって、でていった。母さんは恥ずかしいやら嬉しいやらよく解らない顔をしていたけど、「月坡、アンタね!」と頭を打たれるはり手は健在で、少しだけ安心した。 ぐちぐちと母さんに叱られながらも、僕はその日病院から家に帰った。 「月~坡、お帰~り♪」 元気よく僕に飛びつこうとする星玻を、父さんは首根っこを掴んで阻止する。こんな時間だと父さんも帰ってきてるワケだが、父さんの表情は険しいモノがあった。 どちらかというと僕よりも星玻を責めることが多い父さんは、その星玻に物申したいことが山のようにあるようだ。ニコニコとした笑顔が怖い。 「星玻、今日は大事な話があるから父さんと一緒に寝ような♪」 いつもながら父さんの馬鹿力には敵わない星玻はみゅーと声をあげて、逃げようとした。だが、ソコに母さんまで加われば、星玻はもう袋のネズミでいうことを聞かなければならない。 「助け~て、兄さ~ん~」 こういうときだけ色に泣きつく星玻だが、選択肢は間違っていない。星玻以外は皆、色に甘いのだ。 「………やだ………、はんせい………する……」 星玻の願いを却下して星玻を父さんと母さんにつきだす色は僕を横抱きにして、リビングに向かう。僕はおろおろするばかりだ。 「この、裏切者!!」 色がなにを裏切ったのか解らないが、星玻はそう叫ぶ。叫ぶが、父さんと母さんの顔は怖い儘だ。色も無表情で星玻を切り捨てる。 父さんと母さんが星玻をあんな怖い顔で怒ったのは星玻が僕に暴行をくわえて以来だ。 「星玻……、なにしたんだろう?」 不安そうに振り返ると父さんがなにやら紙をいちまい持っていた。遠目だからココからだとよく解らないが、なにかの重要な書面のようだった。 「さて、星玻、コレはどういうことだ!」 晩ご飯を食べてから叱るのだとばかり思っていた僕は即行で怒りだす父さんに驚く。 「どういうことだっていっても、そういうことでしょう!」 半ば、逆ギレみたいに怒鳴る星玻に、母さんまでもが噛みついていた。 「星玻、母さんと父さんはちゃんと説明しなさいっていっているのよ!」 父さんが持っている紙を父さんから奪い取る母さんは、ソレを星玻の顔に叩きつける。あんな母さん初めてみたと、色の肩で顔を隠す僕は星玻をちらっとみた。 「煩いな!兄さんに頼まれてそうしただけだよ!ボクは悪くない!」 母さんの手と紙を振り払って、星玻が父さんと母さんに噛みつき返す。母さんがソレを聞いて、星玻に怒鳴りつけた。 「色くんがそんなこと、アンタに頼むハズないでしょう!」 母さんはもうカンカンで、いまにも星玻に手をあげそうになっていた。 「ちょっ、母さんダメだよ!」 リビングに入ろうとする色を制止ながら、僕が叫ぶと父さんが僕を睨んで、「月坡は黙ってなさい」と物凄く怖い顔をした。一体、星玻はなにをしたんだと色に降ろしてと頼むが、色はまったく聞き入れてくれなかった。  

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