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第42話 歩む道

  ソレから数日、僕は小悪魔ともいえる星玻に振り回されていた。ことごとく、僕と色の間に入ってきては邪魔をする。 父さんが出張中ということもあって、母さんも色も我が道をいく星玻を止められないでいた。 そんなある日の真夜中、ふいに目を覚ましたのは僕を中心にして色と星玻のふたりに抱きつかれて寝ていたからだろう。 暑苦しいと思っても、爆睡中の星玻が重くって動かせれない。 諦めてぼんやり天井をみていたら、色がごそごそと動くのが解って僕は色の頭を撫でみた。 最初は吃驚したように硬直したが、僕がいつものようにやわやわと撫でている内に、身体の強張りが解けていく。 「………少しは安心した?」 日中あまり構ってあげれてないことをいうと色はだいじょうぶと返してくる。強がってるなと思って両手で頭を撫でてやると、色は嬉しそうにすり寄ってきた。 「色、僕は大丈夫だからいっぱい甘えておいで」 そういう間もなく、僕は色に唇を塞がれる。鼻から抜ける甘い吐息は久しぶりだ。星玻がずっと傍にいて、そうさせてくれなかったから。 「………ん、………はぁあん、………らめ………」 甘い声が漏れる。浅いキスに色が足りないと離れていく色の頭を掴んで、僕は色にしゃぶりついた。 大丈夫じゃないのは僕の方だ。色の我慢強さは鋼鉄の壁並みなのだ。だから、傍で星玻が眠っているのに、僕は色を誘惑する。 「…………して、…………色が、………ほしい………!」 完治もしていない身体でソレを求めることは自殺行為だと思うけど、もう限界だった。だが。 「……だめ、………つきは………、………しんじゃう…」 色の方が冷静で、節度があった。つきはになにかあったら、おれ、かなしいという色は正しい。 「…な、んで………」 胸が苦しくって色が恋しくって恋しくって仕方がないのに、色は優しくキスをするだけだった。 どくどくと心音が大きくなって、息があがる。苦しいのが胸なのか、呼吸なのか、解らない。 「……つき、は…、……すき、……だいすき…、だから、………なかないで……」 親指の腹で涙を拭られて、また、合わせるだけのキスをした。舌が絡みつかなくっても吐息だけが絡みつけば、心がかっと熱くなる。 「…いろ、………すき、…………だいすき………」 愛してると言葉にできないのは、僕にしがみつく星玻がいるからだろう。どこまでも、愚かで、どこまでも、阿呆な僕だ。 高まった感情が落ちついて、ゆっくりと離れていく色の唇がもう恋しい。親指と人差し指で触れてその指にキスを落とすのは、名残惜しいと心の底から思っているからだろう。 「………ねぇ、色………」 僕が星玻を選んだら、どうする? ふいにでた言葉に僕自身が驚いていると、色はこういった。 「つきは、いった。おれのところかえってくる。そういった」 だから、おれ、ずっとまってる………、と。 僕は泣いていた。ああ、どうして、色はこんなにも僕に優しいんだろう、と。 「………ゴメン、色、……………ゴメン………」 そして、僕はずっと色にそう謝り続けることしかできなかった。悲しいワケではない。色の言葉が嬉しかったワケでもなかった。 タダ、僕が発した言葉が色を傷つけてしまったことが悔しくって悔しくって仕方がなかったのだ。  

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