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第4話

「うわあ、すごい綺麗なひとたちだなあ……」  城に近づくにつれ、招待に預かろうと列をなす若者のすがたを目にしたジュリオは感嘆のため息をつきそうごちる。女性も男性もみな一様に華やかで、まるで楽園の花畑にでも迷い込んだかのようだ。  華麗な様子に気を取られるジュリオ。けれどそれが仇となり迫りくる不運に気がつかなかった。あっと肝を冷やしたときすでに遅し、ジュリオの眼前で貴族の馬車が急停止する。  恐怖に身が竦み動けないジュリオのまえに、馬車から赤い法衣で身を包んだ男が降り立つ。 「その者、怪我はないか」  小柄なジュリオから見れば、巨大なヒグマのように思える体躯をした壮年の男。今日の儀で若者に祝福を与えるため、教会より城に向かう途中だった枢機卿だ。  固まるジュリオに声をかけるが、一向に返事がなくて枢機卿は気を悪くする。危うく馬に踏み潰されるところだったのだ、声さえ凍ってしまうのも無理はない。しかしながら身分の低いジュリオが司教を無視するなど許されない。  胸躍りうつむくジュリオの頤おとがいに手をかけると、おもてを上向かせて尚も声をかける。 「返事をせんとは舌でも抜かれたのか。どれ質問に答えよ──」  そこまで口にした枢機卿だったが、今度は自身が絶句をする番だった。

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