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第15話
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ジュリオの耳にルビーのピアスをつけてから、男は間を開けずに部屋を訪れるようになった。初めは二日置き、それが一日置きになると、すっかりジュリオと寝食を共にするようになる。
そしてもうひとつ。
彼の名は”バルバトス・カーンツェイル”といい、ジュリオの暮らす国とは違う地に住むらしい。彼の名を知らないジュリオは、けれどてっきり国王と疑わずにずっと王様と呼んでいた。
するとバルバトスは「王に違いはないが、おまえの言う人間界の王ではない。俺は魔界の王だ」と教えてくれる。初めのうちは本気に取ってはいなかったジュリオではあるが、幾度と宮殿を案内されるうちに考えが変わる。
バルバトスを初めて見たときも思ったが、宮殿ですれ違う者たちはみな人間とどこか違う。たとえばバルバトスは息を呑むほどに美しく、彼の耳は長く先が尖っていてジュリオのそれとは違うのだ。
他にも目立つ相違は数多く、彼らが人間ではないと認めざるを得ない事実を目撃する。ある者は頭部に角が生えていたり、また口から鋭利な牙が伸びていたり。背には大きな翼が生え、空高く舞う者もいた。
それらを目の当たりにしたときは腰が抜けそうなほど驚いたものだが、人間とは順応に長けた生き物だということをジュリオ自身が身をもって体感した。
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