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第5話

 今日はデリバリーのピザを注文すると言っていたから安心だけど、スーパーに買い物に出かけるのときは注意が必要だ。誰かに見られてしまえばぼくがその子にこう言うつもり、「母さんに言われておつかいに来た」ってね。  壁の時計を見ればちょうど十二時。一階からぼくらを呼ぶ母さんの声がして、デスクから立ち上がると部屋を飛び出す。 「いってらっしゃい」  階段を下り玄関に向かうと、靴を履く母さんに挨拶をする。 「いってらっしゃい。あとのことは俺に任せて親父と楽しんできな」  手を振るぼくのうしろに立つと、兄ちゃんも母さんに挨拶を言う。すでに父さんは外に出て、ガレージから車をだして道路で待っている。母さんは兄ちゃんに「よろしくね」というと、「いい子にしてるのよ」とぼくの頭を撫でて出ていった。 「っと、じゃあ俺たちも昼飯にしよーぜ。郁、おまえピザのトッピング何がいい。前回ンときみてーに、もうパイナップルはよせよ。俺はやっぱペパロニと、それからソーセージも──」 「兄ちゃん、はやく教えてよ。ぼくもう待ったよ、これ以上は待てない」  まるで無かったことみたいにスルーしてキッチンに向かう兄ちゃんの腕を掴むと、「はやく特別な授業をしてよ」とねだる。

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