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第7話

 実際には着替え中に友達とふざけ合ったことがある。玉袋の長さを競ったりチンコの長さを比べてみたり、がっつり見せ合ったというのが正解だ。けど今の兄ちゃんは怒っていて、言ってはいけないような気がして嘘をついてしまう。  ごめんね兄ちゃん嘘をついてと心で謝っていると、小さくため息をついたあと兄ちゃんが言う。 「いいか郁、もうぜってえ誰にも見せんな。着替えンときは腰にバスタオルを巻け、ションベンするときは便器にチンコつっ込んでしろ、いいな。兄ちゃんの言いつけ守らなかったら、もう一緒にゲームして遊んでやらねえぞ」 「やややだよ、そんな……わ、わかった約束する。絶対に見せないから、今日もお風呂あがったらピヨピヨカートで遊ぼう、ね? お願い」 「ふはっ、わーったよ。じゃあ約束だぞ、男と男の約束だ。破ったらチンコが腐って女になるからな」 「腐っ!? そんなの嘘だ──嘘だよね……?」 「うははっ、さあな」 「どっちだよ──っ!」  それが嘘だってことを知るのは、ぼくが中学三年生になってからだ。女になっては困るので、ぼくが死ぬ気で約束を守ったのは言うまでもない。  兄ちゃんはうはうはと笑いながら、ぼくを肩に担いだままキッチンに向かうのだった。

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