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第8話
いつもと違う熱が侵食してくる。
「カツミさん」
彼の柔らかい熱が、優しく口に触れる。
すぐに離れたその熱を目で追い、右手の人差し指で、ゆっくりと確認する。
心地よい熱が人差し指を咥え、私が確認したように、その熱もまた、私の人差し指をゆっくりと確認していく。
十分に確かめ終わったのか、ゆっくりと人差し指から離れていく。
「…しょっぱい」
そう言って行き場のない熱を移すように、再度口に触れ、侵入してくる。
柔らかい熱は、いつの間にか容赦の無い熱に変わり、確実に私を捕まえる。
自分でも分かっていた。
「…カツ…ミっ…さ、んっ…」
彼が、縋るように私の名前を呼ぶ。
最初からキミの熱に捉われているのに。
「カっ、ツ…ミ、さっ」
熱を送り込みながら、何度も何度も私の名前を呼ぶ。
彼の作る音が波音を蝕害する。
「…ハヤっ、…トっ、く…ん」
彼の名前を呼ぶと、一気に熱が回った。
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