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第10話

流行は移ろいやすい。 同じように、若い想いは熱しやすく冷めやすい。 「カツミさん、また会いたい」 この熱は、きっとすぐに冷める。 彼は、夏の幻想に現をぬかしているだけ。 もうすこしで夏も終わる。幻想も消える。 「キミも私も、夏の海に溺れただけだ」 初めて会った時と同じように、波音を見ながら答える。 陶酔した熱が揺らぐ。 「カツミさん」 彼の左手が、私の右頬を撫でる。 くすぶる熱が惑わせる。 この熱は冷める。 だから、波音から目を離してはいけない。 「カツミさん、…会いたい」 目を離してはいけない。 「…カツミさん」 目眩がする。 「また会いたい」 あぁ、瞼が重く落ちる。 「また、来年も、…ここに来る」

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