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第2話
「一槻 こっちへおいで」
「んーわかった」
お風呂上がりにお茶を飲んでいると、正晴おじさんに呼ばれる。
今日は初めてのアルバイトが終わり、ちょっとした興奮状態にあった。思ったより手応えもあって、自分の出来栄えに大変満足していた。
血行が良くなった身体は心地の良い疲労感に包まれている。
「こっち。いつもの場所に座りなさい」
側へ寄ると強い口調で膝へ乗るように促された。おじさんの膝に跨るようにしていつもの場所に落ち着く。何かあるときはこうして膝へ乗って話をするのが中島家のやり方だ。
ここ最近はあんまりやってなかった気がするなと、懐かしい気持ちで座った。
猫のようにスリスリと額を合わせる。俺よりも遥かに背の高い正晴おじさんは、膝にでも乗らなければ目線が合わない。
「……今日はお疲れ様。働いてみてどうだった?」
「すごく楽しかった。俺、バイトさんに褒められたんだ」
ピンっと軽く頬を弾かれた。
「その表情、最近見ていなかったから嬉しいけど、僕は面白くない。働いてる時も誰かが一槻に心を奪われやしないかと気が気じゃなかったよ」
おじさんは、俺よりもずっと整った顔を歪めて涙ながらに俺へ訴えた。正晴おじさんには北欧の血がほんのちょっと混ざっていて、普通の人とは違う。だから背も高く、いつも余る程の色気を発している。平々凡々純和風の俺とは全く質が違っていて、向き合うと恥ずかしくてしょうがないのに、おじさんの物差しで見る俺は何十倍にも増して可愛いらしい。
これも昔からだから、慣れた。
「考えすぎだよ……」
「いいや、そんなことない。一槻の可愛さにはみんな気付いているよ。僕の手前上、隠しているだろうけど、分かるんだ。僕の一槻なのにイライラしてしまう。歯がゆいよ」
そして少しの間、強い力で抱きしめられる。
落ち着いたかと思ったら、次はやんわりと股間を揉まれた。風呂上がりでTシャツだけの俺は無防備で、尚且つ久しぶりの情事に胸が高鳴っていた。もっと触ってほしい。
「一槻のここ、ちょっと触らせて。僕だけの大切な一槻……」
揉みしだく手は優しくもあり、いやらしくもあった。パンツの中で形を主張し始めた息子をくにくにと弄り、先っぽが生地に擦れる快感に自然と腰が揺れる。
「あ……ぁっ……そこ、そんなに、いじんないで……ぁぁッ……おじさん、後ろも……さわって……」
「もう……お前はどこもかしこも可愛い」
あっという間に俺は下半身を露にされた。おじさんの膝の上で彼の肩につかまりながら、はしたなく後ろの催促までしてしまう。
ジェルで湿った指が慣れた手つきで挿入ってくる。ゆっくりと、高みへ連れていってくれるおじさんの指は、水音を立てながら大きく動き始めた。何度も何度も出し入れを繰り返し、リズムに合わせて俺の声も出る。
「……ぁっ、あ……ん、も、だめ……イッちゃう……」
「一槻……好きだよ、愛してる」
耳元で艶やかな愛の囁きを聞きながら俺は絶頂を迎えた。後ろがきゅうと指を締め付けて、痙攣する。それでも自らの腰は止まらない。
本当は分かっていた。
いくら遠縁とはいえ、家族同然の保護者とこんなことをしてはいけないことも、ましてや男同志であってはならないことも。
引き取られてから、当然のように自然と躾られ、ごくごく普通に彼を受け入れるようになっていた。
でも、今更戻ることは出来ない。
発情した瞳のおじさんにソファへ押し倒される。彼のモノで貫かれる瞬間を期待して身震いがした。
窓から見える三日月が悲しげに光るのをぼんやりと眺めていた。
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