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第4話

 出張先から帰ったばかりだろうに、疲れを隠して彼は僕から手を離すと背を向けた。 白いコートがひらりと、舞う。  親友だった男。井出 遼。現在は大学の助教授で僕と同じ32歳。  身長は190センチをゆうに超え、ブランドものの白いコートがストイックで、堀が深く男の僕でも、遠くから見ても惚れ惚れするような極上の男だ。  その、誰もが欲しいと手を伸ばしても、触れることすら許されないような男が、今、僕の目の前にいる。僕の言動に激怒して、彼から触れてきている。 「お前がお見合いをすると聞いた」 「ああ、上司から強く進められて、困っていたんだ」 どうして君がしっているんだい?  後ろから抱きしめながら尋ねると、彼が小さく舌打ちするのを聞いた。  まあ、君のコネで入った会社だ。君につながっているのは知っているけどね。 「お見合い、してみようかな」 「……」 「君は結婚してるんだから、僕がお見合いして結婚したら、おあいこですね」 白いコートを、くいっと小さく後ろへ引く。 背中を向けてる彼に、僕を見てと、小さく合図する。 彼は、ひどく辛そうな顔をして振り返って再び僕を壁に押し付けると、激しいキスをしてきた。 僕は、コートにしがみつく。 皺になって、模様みたいになって、僕の痕を背中につけて世界中を歩いてしまえって思う。 だから僕は背中にしがみついた。

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