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第6話
次に再会したとき、彼の指には指輪が光っていた。
白いコートが、月の淡い光に照らされて発光しているように見えた。
久しぶりに会う彼の影が、僕の元に伸びている。
結婚するって聞いてから、半年は経っていただろう。
僕のその頃には諦めていた。
指輪をはめていたのなら、彼は結婚することを選び、今日は僕に友人でいようと言いに来たのだろうと思った。
「入って」
家に招いて、ドアが閉まってから、振り返って微笑んだ。
「結婚、おめでとう」
上手く言えたかな。大丈夫だったかな。
不自然じゃなかったかな。
色々と頭の中をぐるぐる回っていたが笑顔で言えたと思ったのに。
彼のコートがひらりと待って、帽子が落ちる。
一瞬、時が止まったかと思った。
そして彼が僕にキスして、なだれ込むようにベットに押し倒してきたんだ。
「やめっ」
抵抗したのに、体格が違う。びくともしない。
「いた、い。離してっ」
最初は抵抗していたけど、段々と触れ合う部分が熱くなっていって、止められなかった。
だって僕はずっと君に触ってほしかった。足りないと思っていたのだからね。
全然足りないし、もっと触ってほしいと思っていたんだ。
乱暴にベルトを外され、下着に手が入ってきた瞬間、びくびくと背中がしなった。
そこを触るということは、彼は僕を抱くということだ。
彼に抱かれる。
嬉しかった。
たとえ、彼の手は熱くても――指輪が冷たく肌に触れてこようとも。
僕は嬉しかったんだ。
彼はひどい男だ。
結婚しているくせに、僕を親友に戻してはくれなかった。
なんてひどい男なんだろう。
けれど、僕は幸せだった。
親友から、名前のない関係になってしまったとしてもだ。
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