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第10話
寝室に連れ込んで、ネクタイを緩め、ソファに脱いだスーツをたたんで置く。
今から、お見合いをしようとした僕に彼がお仕置をする。
今日も気絶するまで気持ちよくなったらそれで終わりだと思っていた。
「花田」
「なんだい?」
「離婚した」
コートを脱ぎながら、彼は急に現実的な言葉を吐く。
「話し合って決めたことで、離婚の原因にお前はいっさい関係ない」
「……へ、え」
面食らって一瞬言葉を探してしまったじゃないか。
脈絡もなく、突然に言うのはやめてほしい。
「あ、慰めてほしいってことかい?」
「だからお前を愛させてくれねえだろうか」
直球だった。
そんなの、ずるいじゃないか。
「お前が女とデートしたり、男に誘惑されてたら、素直に嫉妬させてくれねえか。お前の気持ちいい場所を探して、愛し合いてえんだが」
俺たちの関係に名前をくれねえか。
そんな言葉、反則だ。
僕をののしってくれて、軽蔑して、それでも身体だけでも繋がっていたらよかったのに。
「愛してる、花田」
囁く声は、低くて甘い。
その声だけで、僕は落ちてしまう。
回り道をした。
「お前に泣かれた日に、気づいた。遅くなってすまなかった」
「なんで君が謝るんだ。僕だって、君に……」
今までの後悔を口に出そうとしたら、唇を手で遮られた。
見上げた彼は、微笑んでいる。
「その言葉じゃねえよ、俺が聞きたいのは」
「……僕も愛してる」
言いにくい言葉に、照れてしまった。
だけど彼はそれで満足したのか、僕を引き寄せて一緒にベットに倒れ込んだ。
「あのさ、今までの」
「謝罪なんざ、絶対に言わせねえよ」
ふにっと僕の唇を摘まむと、横に寝そべった僕の髪を見つめる。
「一生、言わせねえよ」
それが今までの僕の復讐への復讐なのかい。
だったら、僕は君の隣で一生、君と一緒に苦しみたい。
僕の彼の大きな指に、自分の指を絡めて額同士をこすり合わせて笑った。
好きだよ。君が好きだ。愛してる。
遠回りした分、いっぱい、言わせてもらう。
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