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蛇が住むか

朝になった。 ここに引っ越してきてから、あまり眠れていない。 朝ごはんをとるため台所に行くと、綾人さんが台所に立っていた。 「おはよう。清人くん」 振り返った綾人さんの目が少し腫れていた。 エリンっていう人に泣かされたのかな。 「おはよう。父さん」 机の上には、ご飯と味噌汁が用意されている。 今は目玉焼きを作ってくれているらしい。 「あぁ。綾人の味噌汁、久しぶりだ」 綾人さんは料理が上手だから、いつも作ってくれるけど……。 って、え? 「君、清人くんって言うの?なかなか古風な名前だね」 ニコニコと笑って、俺の味噌汁を啜っているのは、昨日の謎の男、北窓エリンだった。 「何であんたがここに!?」 「清人くん、どうしたの?急に大声あげて……」 大声にびっくりした綾人さんは、びっくりして振り返った。 「え、あ、いや……」 「あれ?もう味噌汁飲んじゃったの?お腹すいてたのかな。ごめん、今日寝坊して作るの遅かったから……」 自分のせいだと責め始めた綾人さんに「違う違う」と否定する。 そんなやり取りを楽しそうにニコニコと眺めるエリン。 「おかわり、よそうね」 「ありがとう、綾人。相変わらず、君の料理は世界一だな」 エリンの声は、まるで届いていないように綾人さんは味噌汁をよそう。 もしかして、綾人さん、エリンのこと見えてないの? 「はい、清人くん。先に食べてていいよ」 「……うん」 お言葉に甘えて、先に食べることにした。 「いただきます」 味噌汁、美味しい。 母さんは壊滅的に料理ができなかったから、いつも外食か宅配ばかり食べていた。 「いいなぁ。清人は、いつもこんな美味しいもの食べてるの?」 エリンは横からベラベラと喋り出す。 しかも、いきなり呼び捨て。 俺は無視して、朝ごはんを食べ続けた。 食後、エリンを自分の部屋に連れていくと、「どういうつもりだ!」と迫った。 「言ったでしょ?ここに住んでるって」 「どこに住んでるんだよ!」 「君の部屋が僕の部屋だったんだけど、仕方ないから、綾人の隣の菊の間を使わせてもらうよ。本当は君を追い出そうとしたんだけど、気持ちよさそうに寝てたからね」 くすくすと笑われる。 あの時、障子の穴から覗いたのは、こいつだ。 「お前、父さんに近づくなよ。父さんには新しい家庭があるんだ。今さら、お前が入る隙なんてない」 俺は部屋から出て、スパンと障子を閉めた。 「隙がないなら、こじ開けるまでだよ」 端正な顔を少しだけエリンは歪めた。

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