5 / 11
外面菩薩に似、
義理の息子である清人くんを連れて、研究のため、かつて下宿していた平屋建ての一軒家に住むことになった。
中は意外と綺麗に掃除されていて、昔の名残もある。
自室は下宿生時代に使っていた菖蒲の間を使うことにした。
障子を開け放ち、中庭を見ると、北窓エリンとの思い出が蘇る。
北窓エリンとは、隣の百合の間に住んでいた下宿生。一番の友達で、恋人だった。
ドイツ人と日本人のハーフで、金髪に翡翠の瞳をした色男。女子からよく言い寄られていた。
男からしたら妬みの対象でしかないが、僕は不思議と惹かれた。
読んでいた本や聞いていたレコード、性格、話し方……全てが僕の好みだった。
それでも、恋をしてはいけないと思っていた。
この完璧な友人をこの醜い感情で惑わせてはいけないと。
ある夜、村で花火大会があり、他の下宿生達は皆、花火大会に行ってしまった。
僕とエリンを除いて。
僕はその時、夏風邪を引いてしまい、熱に浮かされていた。
エリンは僕を放っておけないと残ってくれた。
「綾人、大丈夫?」
「エリン、ごめん。君も花火見に行きたかったんじゃないか?」
「綾人と行きたかったから、構わないよ」
エリンはいつも僕の欲しい言葉をくれる。
エリンは汗ばんだ僕の顔を濡らした手拭いで拭いてくれた。
冷たい手が気持ちよくて、つい擦り寄ってしまう。
「エリンの手、気持ちいい……」
ひんやりとした手に頬を寄せると、唇に柔らかい物が押し当てられる。
唇をこじ開けられて、舌を絡められる。
「……っふぁ、エリ、ン……」
「綾人……煽らないで……」
気づけば、エリンは僕の上に覆いかぶさっていた。
ともだちにシェアしよう!