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第2話
「ーー晴矢 さん!!」
殺風景な駅舎の壁ですら絵になってしまうのは、フィルターがかかっているからなのかーーいや、贔屓目で言ってもカッコイイからだ。
否、美形と言う方がしっくりくる。
「久しぶり、紀智 。また身長伸びたんじゃないか?」
「はぁ? 嫌味かよ」
177センチの俺から見ても、晴矢はデカい。180センチはゆうに越えている長身に加え、誰も否定できないこの綺麗な顔面。本当に嫌味だ。
長く骨張った指に挟んだ真っ黒のタバコ、普通だったらナルシストに見えそうなものだが、やはり晴矢が持つと様 になってしまう。
ーーやっぱり嫌味だ。
だが、年1回この嫌味な男に会う為に何時間も電車に揺られ、今年で4回目の逢瀬。
自然に笑みは溢 れ、尻尾がついていたならちぎれるくらい振り回しているだろう。
「てか、早くね? まだお盆前じゃん? 迎え来てくれるのも初めてだしーーって、なんで今日来るって知ってんの? エスパーかよ」
「ミチさんに聞いたんだよ」
「ばあちゃん? えっ! 連絡取ってんの?! 俺にはIDすら教えてくれないのに?!」
「違う違う。さっき偶然庭先で会って聞いた。 お前を迎えに行くって言うから、代わりに来たんだよ」
「…………ふーん」
晴矢の家と俺の家、いや母の実家で祖父母が住んでいる家は所謂お隣さん。
と言ってもこんなド田舎で、家同士隣接しているわけもなく200メートルくらいは離れている一応のお隣さんだ。
確かに晴矢の話しは納得行くような気もするが、なんだかもやもやする気持ちも拭いきれず歯切れの悪い返事をしてしまった。
「……きぃち。 どうした?」
分かりやすく更に優しくなった声音に意図せず身体がピクリと反応した。気にしてくれている事が嬉しい。
晴矢の言動1つで、コロコロと気分を変える自身が恥ずかしくなり、顔を上げることができないーーまるで、学校の女子たちと同じだ。
普段バカにしている存在と、同じ事をしているのは分かっている。でも、上手く制御できないのは、やはりまだ自分は餓鬼なんだなと痛感する。
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