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第3話

「……いつも、お盆の時しか来ねーじゃん。だから……ばあちゃんに連絡して、聞いたんじゃねぇの?」 晴矢は小さく笑うと、俺の被っていたキャップのつばをクイッとずらした。 つられて目線を上げると、色素の薄い瞳がこちらを覗き込んでいた。 「ーーっ何笑ってんだよ……ムカつく」 また餓鬼臭い事を言ってしまった。 でも、27歳の晴矢から見たらどう足掻いても自分は餓鬼な訳でーーーー。 だからと言って、改めるのもなんか違う。 4年間教えて貰えなかった連絡先の問題は軽視できない。 『また、来年ね』 と、言われる度一線引かれている感じもするし、突き放されたと毎回泣きたくなった。 ーーやっぱ、ムカつくわ。 「ーー紀智、去年言ってた事覚えてないのか?」 「……え?」 正直覚えていない。厳密に言えばこの事に紐づく会話がなんの事なのかさっぱりだ。 「俺に早く会いたくて、1日2日前には帰って来る事にしたって」 「はぁ?! そんな事言ってねぇーー」 ーーいや、言ったか? 確かに去年はお盆の何日か前には帰った。 晴矢がこっちに来るのは、お盆期間の4日間だけだ。去年なんか、3日目で帰った時もある。 年に1回、数日しか会えない為お盆の期間は晴矢の家に入り浸るーーだが、一昨年ついに祖父母から不満の声が上がった。 確かに、年1回しか会えないのは祖父母も同じ事でーー気持ちは分からなくもない。 その為、妥協案として去年から少し早めに来ると言う条件で晴矢との時間を死守したのである。 だがーー。 「早く会いたいとか言ってねぇ!!」

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