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第4話
「言ったようなもんだろ」と、悪戯っぽく笑う晴矢を見ていると毒気が抜かれて行く気がする。1年間溜まりに溜まった汚いもの、それをろ過してくれるフィルターの様な存在だ。
気付いたら一緒に笑っていたのも、やはり浄化されている証拠だろう。
ーーいや、ちょっと待て。
「……今日4日前なんだけど。やっぱ、エスパーじゃん?」
「………………どう思う?」
「え……? なに、その間……や、やっぱ……ばあちゃんには連絡先ーーっ」
吐き出したタバコの煙を顔面に浴びせられ、おのずと蒸し返した言葉は封じられる。
噎 せ返 るほどの甘い匂いに包まれ、視界を奪われたのは一瞬だったが、その間 で晴矢に唇を奪われていた。
「ーー!! ちょっーー場所!」
「ーー誰も見てない」
と言うより、誰もいないだけだが。
とわいえ、狭い狭い田舎ネットワークは舐めてはいけない。
何処で、誰が見ているかなんて一見では分からないものだ。
ベタな所だが、昔見た某映画で木々が話を聞いているなんて設定があったが、あながちフィクションでもない気もする。
聞けるのであれば、見れもするだろうーー。
ーー……アホらしー。
こんなファンタジーな思考回路になっている俺は、相当浮かれているのだろうか。
恥ずかしさを誤魔化す為、懲りずにまた顔を近づけてくる春臣の横腹に軽くパンチを入れた。
「いたっーー短気な所は相変わらずだな」
「うるさい、だから場所考えろってーーっおい! またーー」
「ーー俺は昨日、着いてたよ?」
晴矢の言葉に心臓が跳ね上がった。
抱き締められ、重なったそこから伝わらないようにと願う。
精一杯、冷静を装ってみた所で、震えた声では無駄な抵抗でしか無かったが。
「……な……なん、で?」
答えはなんとなく想像は出来ていた。
聞き返した自分はやはり、頭の中は花畑になっているんだろう。
「ーー紀智に早く会いたかったから」
「ーーっ……イケメン、ムカつく」
「お前が言うか?」
自身で言うのも何だが、それなりに整っている自覚はある。が、そう言う見た目の話しではない。
晴矢の様にむず痒い、恥ずかしくなるような言葉はスラスラとは出ない。少なくても日本男児では晴矢のような奴は少数派だろう。それがまた、お綺麗な容姿と相まって、本当に嫌味な男である。
普段だったら絶対に有り得ないが、今日は俺たちにとって1ヶ月遅れの七夕のようなものだ。彦星の欲しがっている言葉を言うのも、やぶさかでは無い。
「……俺も、晴矢さんに早くーー会いたかった」
まて、俺も彦星か? など、考えている俺はやはり、かなり浮かれていた。
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