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第10話

あの時の晴矢も、一生忘れないじゃないかと思うくらい俺には、強烈な出会いだった。 ーーあれはマジで、笑った。 飛び込んだ、と言っても大きめの岩からだからそんな高さでもなかったし、川の深さにしても川底が目視出来るくらいの深さだ。 暫く水の中を歩き、程よい深さの所で腰を下ろした時、春臣が現れた。 ーーすげぇ顔、してたよな……そういや、さっきもちょっと焦ってたけど、この時もそうだったな……今日の比じゃねぇけど。 ばっちり決まったスーツを気にもとめず、一直線に俺の方へ向かって川に入ってきた晴矢。 呆気にとられている間に、引き上げ、担がれ、川岸に連れて行かれた。 そして、その日2回目のお説教タイムに突入したーー大人の男にまたもや怒鳴られ、更に赤の他人というオプション付き。 ーーほぼ何言ってんのか、分かんなかったけど。 要は、俺が自殺でもしようとしているのだと勘違いしていたらしい。 誤解が解けた後2人で馬鹿笑いしたけど、今となっては何の考えも無しに、あんな行動をとった自分は迂闊だったと思う。 若気の至りーーで、済ませていい様な話しなのかは分からないが、大事には至らなかったからこその笑い話である。 その一件から晴矢と言う存在が、俺の殆どを占めている事は言うまでもない。 この4年間、日にちにすれば数十日くらいにしかならないが、色々な事を話した。 その中でも、自分の性癖について話したのは晴矢だけだ。 なんでも受け止めてくれるような包容力が、彼にはあると思う。 俺が勝手にそう思い込んでいるだけ、と言われればそうかもしれない。 だが、それまでの人生で1番悩んでいた事で、それをさらけ出してもいいのではないかと思わせてくれたのは晴矢で、初めて心を許せた人物だった。 ーー……まぁ、晴矢もゲイだったから、真剣に聞いてくれたんだと思うけど。

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