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第11話
それはそれで、俺には吉報でしかなかった。
優しく、大人で、なにより晴矢の隣は居心地が良い。それでゲイなんだと、聞いたら遠慮する必要はないと言うかーー惹かれるのに時間はかからなかった。
ーー……そっから、ここまでくんのは長かったな。
身体の関係を持ったのは最近の事で、去年からだ。
初めて告白したのは出会った翌年、勢い任せでなんの作もなく突っ走った結果、玉砕。
その経験で学んだ俺は、1年間恋愛本を読み漁り導き出した答えが、セフレと言う道だった。
あの時は、ざっくりした認識だったが、大人の割り切った関係と言う文言に目からウロコだった。
新しいセフレと言う武器を引っ提げ、立ち向かったが『子どもが何言ってる』と軽くあしらわれてしまったーーが、何の戦利品もなくおめおめと帰る訳には行かない。粘りに、粘った結果、キスだけなら、とお情けを頂く事に成功する。
しかし、それが間違えたルートだった事に気が付いたのは去年の事だ。
晴矢が来た初日、浮かれまくっていた俺は、追加されたキスと言うコマンドを使いまくった。だが、このコマンドは俺だけのものであって、晴矢の選択肢には無かった様だ。
拒否される事はないものの、晴矢からしてくれる事は1度も無く、それに気付いてしまったら自ら求める度に、虚無感がどんどんと膨れ上がりーーーー2日目の夜、爆発し晴矢の寝込みを襲った。
もうあの時は、完全に理性など吹き飛んでいたと思う。
勿論、起きた晴矢に全力で止められたし『自分を大事にしろ』と、諭されたが、暴走モードに入った俺にはそんな呪文は通じる訳もなく、最終的にはこれまたお情けで抱いて貰えたーーと言うか、ただの泣き落としだが。
「…………マジで、ガキっぽい」
だからこそ、今年はいい加減オトナになろうと決意した。
なし崩しに関係を強要してしまった自覚はあるし、罪悪感も一応持ち合わせている。
晴矢はやはり嫌だったんじゃないかとも考えたが、昼間の態度をみると杞憂だったようだがーー。
始まりが最悪だった。けれど、晴矢はそんな面倒臭い状況でも受け止めてくれている、と今日確信した。
やはり、大人にならなければいけない。
これ以上、好きな人の手を煩わせたくない、そう強く思った。
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