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第14話

ーー……真っ赤じゃん。 顔に出ていないのが不思議だが、首からオープンカラーシャツの間から露出している素肌は赤らんでいた。 胸がちくりとする。 成り行きを見守っていた、と言えば聞こえがいいが、何もしなかったという事実に多少の責任は感じるーー大人気ない祖父が1番悪いのだが、やはり身内の所業であり俺にも責任はあると思う。 そう考えていると、叩き起こす事は出来なかった。 そして、今の状況である。 1時間以上胡座を組んで、同じ体勢の俺は限界が近かった。 晴矢の頭の重みで右足の感覚がほぼなく、見ていた動画に集中出来なくなってきた。 「……晴矢、さん?」 声が小さ過ぎたのか、特に反応が無い。 「なあ、もう11時なるって……起きろよーー」 軽く肩を揺すってみたら、横を向いていた晴矢が仰向けになり、吐息を漏らした。 吐息に微かに混じる声が、妙に色っぽく不覚にも反応してしまいそうだ。 「ーーっ! 酔っ払い、早く起きろって……体バキバキになんぞ…………おいって、風呂も入ってねぇだろ? 起きろってーー」 うん、うん、と返事は返してくるものの一向に目を開こうとはしない。 しまいには、目元に腕を乗せ何も言わなくなってしまった。 「おい! そんな眠たいなら家帰れよ……な、あーー」 少しだけ開いた唇に目を奪われる。 口で呼吸する度上下する鎖骨も視界に入り、心臓が忙しなく動き出した。 ーー苦しい、のか? 恥ずかしいくらいに、喉が鳴ってしまう。 祖父母は2階に居るとはいえ、同じ空間にはいる訳で降りてくる可能性はある。 少しだけ顔を出した理性が、必死に止めに入ったが、男子高校生の俺を説得するには少々理由が弱かった。 ーー……これは、酔っ払いの世話だ……うん。 言い訳を頭の中で繰り返し、晴矢のシャツのボタンへと手を伸ばした。 ひとつ、ふたつーーと、みっつ目を開けようとした時、やっと自制心が機能してくれた。 心音が聞こえるんじゃないかと思うくらい脈打ち、身震いした。 「ーーはる、おみさん?」 返答はやはり無い。 寛げたシャツの合間から見えそうで、見えない胸元が想像力を掻き立てる。 少しだけーーそう自分に言い聞かせ、震える手をシャツの隙間から滑り込ませた。

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