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第16話

遠かった距離が一気に縮まり、2人は約束交わした。5年後、何も隔たりが無くなったその時、一緒になろうとーー。 そして、約束の5年後。 待てども、待てども、約束の場所へは彼は現れなかったーーそう、現在の俺の状況も、今見ている海外ドラマとほぼ一緒だ。 スケールこそ違うものの、感情移入し過ぎて辛い。 待ちぼうけを食らって、2時間は経ちそうだ。もうすぐ、ドラマも3話目を見終わるが、風呂にいった晴矢は、一向に上がってくる気配はない。 あの後意外にも、晴矢は家に行くことをあっさりと了承してくれた。 三度目の正直と言ったところだろうか、やっとご褒美を手に出来ると思っていた矢先、これだ。 ドラマの主人公の如く、今にも泣きじゃくりたい気持ちに駆られる。 ーーやべ、マジで泣きそう。 ドラマの中の彼女にシンクロしたのか、今の状況がそうさせているのかは分からないが、目頭がジンジンと熱くなり、自然と涙が零れてきたーーが、次の展開に涙は引っ込んだ。 ーーいやいやいや、なんでここで彼氏の弟がくんだよ……しかも、白スーツにバラの花束って。いきなりファンタジーぶっ込んでくんなよ。 海外ドラマでは、入り組んだ人間関係やぶっ飛んだシナリオは日常茶飯事の様に描かれているが、正直興醒めした。 フィクションの世界にどうこう言うつもりはないが、現実世界はそんなに甘くない。都合よく、白馬の王子様が現れる事はないし、魔法使いが手を差し伸べてくれるわけでもない。 ーー……あーもう、めんどくせぇ。 自分がどうしようもなく幼稚で、屈折した人間だと思い知らされている様でーー最後まで見ることは出来ず、スマホをベッドに投げ捨てていた。 「……あー! もお!」 「ーーえ? どうした?」

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