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第17話
寝室へと入ってきた晴矢と目が合う。
「ーーっ! 遅い!」
「いや、リビングに居なかったから……寝たのかと思ってーー」
「それでも来いよ! 何時間も何してたんだよ……」
完全に八つ当たりだーー先程まで浸っていた綺麗な世界と比較し、俺の現実はまるで惨めに思えた。
目の前の春臣が困っているのが、手に取るようにわかる。何も悪くない晴矢に、謝らせてしまっている自分が嫌いだ。
「……ごめん」
素直にそう思って出た言葉だったが、晴矢にはそうは見えなかっただろう。
大人になると意気込んでいたくせに、相手の目を見て謝ることすら出来ない。
「いや、俺が悪かった……ごめんな」
晴矢の腕の中は暖かく、自然と穏やかな気持ちにさせてくれる。体温で、とかそう言う話ではなくーーよく分からないが多分、心とか目に見えないものだ。
触れなくても、一緒にいるだけで感じる事は出来るが、物理的に包み込まれていると、より一層安心感を与えてくれるーー俺には、晴矢だけ。そう思う瞬間でもある。
「……もう、いい……今まで何してたんだよ」
「……酔い醒ましに……仕事」
「はあ? 何だそれ。酔っ払いがまともに仕事出来んのかよ」
今泣いたカラスがもう笑う、と言うのは今の俺の事である。
いや、泣いてはいないが、とりあえず晴矢の言動に気分を左右されている事は間違いない。
「……紀智は? 何してたんだ?」
「ん? ドラマの続き見てた、昼間話してたやつ。晴矢さんが寝てる時も見てたんだけど、続きめっちゃ気になっててーー」
自身の言葉で目的を見失っていた事に気付いた。
ただ雑談をする為に、ここにいた訳ではない。
「ーーそ、そんな、ことより……なぁ?」
晴矢の手を引き、ベッドに引き込んでみた。
強引だったか? と思ったが、覆い被さるように倒れ込んだ春臣もその気になってくれたらしい。
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