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第22話

言葉にすると、更に理解し難い内容に思えた。 全て嘘だと言ってくるんじゃないかとも思ったが、目の前の伊月は今にも泣き出しそうな、苦しそうな表情でーー到底、嘘をついているようには思えない。 ゆっくりと解放された手首から、一気に脳へと血液が流れた。 「ーーっ! なんで黙ってんだよ! 意味わかんねぇ事ばっか言いやがって……分かるように説明しろよ……っ!」 勝手に喚きそうになる唇を、必死に噛み締めた。掴みかかった胸ぐらを押し退け、伊月に背を向けるーーそうでもしないと、話しを聞かず罵倒してしまいそうだった。 「……兄が亡くなって、この家の存在を思い出したんだ……元々、俺の為に用意してくれたものだったが、来たのは4年前が初めてだーーその日夢を見た……川に飛び込んで、自殺しようとしてる男の子の夢だ、まぁ勘違いだったけどな」 「ーーは? それって……」 身に覚えがある話しに思わず振り返ると、優しく微笑む伊月と目が合った。 「……次の日、その夢に出てきた男の子が目の前に現れたーーすぐに『紀智』だ、と言う事は分かった。正夢ってあるんだな、とか思ってたんだが……そうじゃ無かったんだーー」 徐に立ち上がった伊月は、机の引き出しから取り出したものを俺に渡して来た。 「……『紀智と仲良くな。お兄ちゃんより』」 渡さた紙に書かれていた事を、思わず口に出して読んでいた。 益々、訳が分からなくなってくる。 「これを見つけた時、元々知り合いだったんじゃないかと思った……でも、お前は俺の事を『晴矢』と呼ぶしーー兄の事は知らない素振りだった……しかも、俺の夢の話を現実にあったかのように話して来た」 「は……? だってそれ、初めて会った時の話し、だよな……?」 小さく頷いた伊月は、まだ頭の追いつかない俺に話しを続けた。 「ーー俺も最初は状況がよく分からなくて混乱した。それから何度かお前との夢を見て、実際会って、話して……気付いた……紀智が出てくる夢は、夢じゃなくてーー俺の記憶だって事にな」

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