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第26話

川のせせらぎが単調なリズムを刻み、時折吹く風が木々たちを揺らし、心地よいBGMが生み出されるーー多少主張の強い蝉の合唱団も、この季節しか味わえないものだと思えば乙なものだ。 その中で水と戯れる青年の無邪気な姿は、アイドルのイメージ映像の如く、輝きを放っているーー。 ーー……いや、普通にねぇーわ。 ナレーションを付け、現実逃避を試みてみたがそうそう上手くはいかないものである。 どの位経っただろうかーースマホを家に置いてきてしまい、詳細な時間が分からない。 脅され、ここまで連れてこられ、釣竿を渡された時は次は何が始まるのか、といちいち勘ぐってしまったが、いくら経ってもそれだけで何も起こることはなかった。 ーー……アホらしぃ。 目の前で魚を追いかけ回している姿を見ていると、なんだか拍子抜けしてしまう。 今までの無駄な緊張感を返して欲しい。 「……なぁ、もう帰ってい?」 釣竿を座っていた岩に置き、座りっぱなしで硬くなっていた身体を伸ばした。 「やっと喋る気になったか?」 バシャバシャと水音と共に、こちらにやって来たと思ったら、当然の様に隣に腰を降ろした。 「……濡れるからこっちくんな」 「憎まれ口叩けるなら、もうビビってねぇな?」 「っ! うっせー……何なんだよ……」 やはり違和感しかない喋り方に、顔が歪む。 知っている様で、知らない様でーーなんとも不思議な感覚に、上手く顔が見れない。 「……やっぱ信じられねぇよなーーどうやったら信じられる?」 「……どうって……証拠ねぇし……二重人格とか、じゃねぇの……」 引きこもり中に導き出したもう1つの選択肢だった。 こちらの方が、まだ現実味があるという理由だけだが、俺に霊感などこれっぽっちもない為、伊月の話を確かめる事など出来ない。 「じゃないんだけどなぁ…………あ! 証拠あるわ」 「え? な……なに、笑ってんだよ」 ニタリと笑ったその顔に、何か嫌な予感がした。 「ーーこっちに来た日の夜、2回目の風呂で何してたかなぁ?」

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