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第28話
喉に詰まったものが邪魔をし、中々声が出ない。
どれが正解? など考えている俺はもう、既に間違っているのだろうかーー。
「ーー……はぁ?」
唇に感じた柔らかさと、リップ音だけをリアルに感じた。
無駄な事を考えていた俺は、咄嗟の行動は取れず、離れて行く晴矢の顔を目で追う事しか出来なかった。
硬直してしまった俺に、晴矢は小首を傾げている。
「ーーあら? 違った?」
言ってる意味が理解出来ない。
キョトンとした顔に、無性に腹が立った。
「ーーっい、てぇー……」
気付いたら張り手をかましていた。
暴力は良くない、分かってはいるが今回は仕方ないーーと、自分に言い聞かせる事にする。
「何がしてぇんだよ! 今、真面目な話ししてたよな? ふざけんなよ!」
自分でも驚いたが、不思議なくらいスムーズに言葉が出ていた。
俺が叩いた頬を擦りながら、晴矢は少しだけ笑っていた。
「いや、無言で見つめてたから……キス待ちかって思うだろ?」
「……っ! 思わねぇーよ!」
もう一発殴ってやろうかとも思ったが、そこはグッと堪えた。
すまん、と両手を合わせてこちらの様子を伺ってくる姿を見ると、年相応には見えない。寧ろ、自分より子どもに感じ、何故今まで紳士的な弟を演じれてたのか謎である。
ーー……気づかなかった俺も、大概か……。
深呼吸し、自分を落ち着かせた。一発行ったおかげなのか意外にも頭はスッキリしていて、すぐに冷静になれた。
「……なんで、最初に言って来なかったんだよ」
「……初対面のやつに言えるかよ……頭イカれてんのかってオチしか見えねぇよ」
確かに一理あるが、どうしても別の選択肢を考えてしまうのは物分りが悪いからなのか。
「ーーそうかも知れねぇけど……そうじゃ無かったかも知れねぇじゃん……そしたら、こんなややこしく、なってなかった…かも」
どうしても先走ってしまう、幼い自分がコントロール出来ないーー自身の器の小ささを再確認し、舌打ちした。
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