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第39話
「ーーそうじゃない……もう、終わりにしよう……俺といても、紀智が悩むだけなのは目に見えてる……こうなったのは、長引かせた俺の責任だ……すまなかった……」
何故か伊月まで笑顔を見せてきた。
突っ立っていた俺の隣に来ると、いつもの如く子供をあやす様に頭を撫でてくるーーちぐはぐな言動に、余計混乱しそうだ。
「……何度謝っても謝りきれないが、振り回してしまってすまない……晴矢の事も、制御出来なかった俺が悪い。傷付けてしまって、本当に申し訳なく思ってる」
伊月の言葉に、思わず頭に乗せられた手を振り払った。
「傷って……なに? 晴矢さんに、傷付けられてなんてねぇ、けど? キズ……付けて来てんのは伊月さんじゃん!」
呼吸もままならない状態で、大声を出してしまい今にも酸欠で倒れそうだーー。
ふらつく身体を、カウンターに預け姿勢を保ってはいるがいっその事、倒れて意識を手放した方が楽なんじゃ無いかとも思えてきた。
「……初めて、だったんだろう? なのに、騙し討ちみたいな真似をして、取り返しの付かない事をした……」
頭痛まで出てきたーー。
「また、その話かよ……あのなぁ……それ、晴矢さんとも……話したから、気にしてねぇ……から……」
「……そうは言っても、そんな軽く流せる事じゃないだろう……?」
ーーああ、もう無理……。
そう思ったと同時に、伊月の胸倉につかみかかっていた。
「ーーっ! しつけぇんだよ! 気にしてねぇっつってんだろ?! 男は、初めてだったけど、別に童貞でもねぇから……寧ろ女とはヤリまくってるし……そんな奴が気にすると思うか?! するわけねぇだろ!」
そのまま胸を押し返し、新しくカウンターに置かれていたアイスコーヒーを飲み干した。
一気に飲んだせいか、噎せてしまい伊月の反応を見る余裕が無いーー俺はカウンターに突っ伏したまま、問い掛けた。
「ーーわかっ、た?」
「ーーああ……そんな相手がいるなら、そこで気の合う子が現れるはずだ……お前は、まだ若いからな……」
声音が変わった伊月に目線をやると、再び人形の様な顔で笑っていたーー。
ーーもう、どうすればいいんだ……誰かーー。
「ーー晴矢、さん」
頭を抱え、無意識に呟いていた。
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