40 / 61

第40話

「ーー煽ったのは俺だけどよ……お前がヤリチンって事は言うなっつったよな?」 間近で聞こえた声に、顔を上げると苦笑いを浮かべふらつく俺の身体を支えてくれた。 「……晴矢さん? あ……俺……っ」 「……大丈夫だ、俺の名前呼んだときは入れ替わってた」 ーーよかった……。 安堵から全身の力が抜け、晴矢にもたれ掛かる。そのまま引きずられるようにソファへと移動させられた。 「とりあえず深呼吸しろ……カフェイン入れすぎてハイになってんじゃねぇか? 普段飲まねぇクセに……」 「……コーヒーて、そんな危ねぇやつ……だっけ……?」 晴矢が渡して来た水をひと口飲み、一息ついてはまたひと口飲んだ。 「……いや、知らねぇけど」 思わず口に含んだものを噴き出しそうになる。 「な……だそれ、ほんと……テキトーだな」 暑いと言いながら、狭いソファの隣に足を組んで座った晴矢は、俺のグラスの氷を指ですくうと口に放り入れ、すぐに噛み砕いて食べていた。 「ーーお前らは考えすぎなんだよ……いや、お前は素直に言い過ぎなとこもあるけど」 「見てたなら……さっさと、出てくればよくね?」 「バーカ……お前らが話さねぇと意味ねぇだろーが……つか、なんであそこで迷った? どう考えても伊月一択だろ、っんとに世話の焼ける 奴等だな?」 「そう……だけど……」 自分の中では一択で無いことに気付いてしまったのだ。正直、落ち着いて来た今でも、改めて聞かれた所でハッキリと答えられる気がしない。 「……だけど、なんだ? 俺の事が好きなのか?」 「……だって……そうなんじゃ、ねぇの?」 晴矢が深い溜息をついた。 「ーーじゃあ、俺の何処が良いわけ?」 「……分かんねぇ」 「じゃあ、伊月の何処が良い?」 「……っ! だからわかんねぇって! だって、今までのお前ら、見分けつかねぇし……今更どっちとか言われても分かるわけねぇだろ?! 実際、お前の事伊月さんだって思ってヤッたしな?! 今だって……本当に晴矢さんかどうかも分かんーーっ!」 急に立ち上がった晴矢に腕を掴まれ、連れて行かれた先のベットへ投げ捨てられた。 「ーーってぇな! なんな、だ……何、してんだ……?」 Tシャツを脱いだ晴矢が、ゆったりとした足取りでこちらに向かってくる。満面の笑みで小首を傾げた姿に、思わずベット奥へと後退りしてしまうーー。 「ーー何って……どっちか、分かる様に教えてやろうかなーって……身体、にな?」

ともだちにシェアしよう!