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第43話
胸が締め付けられ、息が苦しくなる。
晴矢を選んでも、将来はないーーそう言われているようだった。
晴矢の言う事は正しい。最も、冷静に考えればわかる事だ。しかし、そんな単純な話なんだろうかーーそんな理由で、伊月を選ぶのは消去法なだけではないのかーー。
「ーーっ! でも……」
「でも、じゃねぇよ。現実的に俺はお前の気持ちに応えてやる事が出来ねぇんだよ……はっきり言わねぇと分かんねぇか? お前と付き合う事は出来ねぇの、幽霊だからな」
「……それは…わかってる、けど……」
さっきから自分と伊月に都合の良いように、話が進んでいる気がするーーそう思ったら、気付いてしまった。
ずっともやもやするのは、晴矢の気持ちが見えて来ないからだ。現実的にとか、幽霊だからとかーーじゃあ、そんな事を抜きにした時、晴矢の本心はどうなんだろうかーー。
「……晴矢さんは……俺の事、好きじゃねぇの?」
真っ直ぐ俺を見据えた晴矢は、昨日今日で一番真剣な顔をしていた。
心臓が忙しなく跳ねるーー次の答えが、今後を左右する重要なものだからだ。
こんな決定打でもないと、物分りの悪い俺は自信を持って進む事は出来ないーー。
「……俺は、可愛い子みんな好きよ?」
予想外の答えに、パンパンに膨れていた頭からガスが抜けて萎んでいき、我にかえった。
そう言えば、こいつはそういう男である。
何故、このような男に好意があるなど、思っていたのかーーましてや、晴矢が自分の事を好きなんでは無いのかなんて、自信過剰な事を思ってしまった自分が恥ずかしい。
なんだか情けなくなり、溜息をついた。
ーー……とりあえず……。
「……しね」
右腹に拳を入れたーー伊月の身体と言う事を考慮し、手加減はしたつもりだ。
「いだっ! なんで、すぐ手が出んだよ!」
ここまで引っ掻き回された事を思うと、一発では気が済まないがーー。
自身の気持ちに白黒付けさせてくれたのも、晴矢な訳でーー癪ではあるが、感謝の気持ちを込め、構えていた左拳を降ろした。
「うっせーんだよ、チャラ男が」
「ひでぇーなぁ……俺、意外と一途よ?」
「…………」
ーー……どの口が言ってる。
そう思ったが、もう言い返すのも面倒になって来た。
とりあえず、落ち着いて来たし真っ裸のままでは居心地も悪く、脱がされた服を拾った。
「ーーあら? 着ちゃうの? 続きヤんねぇの?」
「ヤるわけねぇだろ! このクソレイプ野郎」
まあ未遂だか、とも思ったが敢えてそこは言わない。背後から軽めの謝罪が聞こえて来るが、無視する事にする。
「ーーお詫びにさ、いい事教えてやるよ……いや、悪い事か?」
「…………なんだよ……また変な事言ったら、殴るからな」
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