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第6話
さて、日曜日。やっぱり寒い。隣の蓮に擦り寄るようにくっ付く。蓮は軽く溜息をつく。そりゃそうだ。惚れてそれなりの事をしているのに、中々次がない。それなのに無神経に擦り寄る恋人。ごめんなさい。
タイマーが鳴って、ようやくベッドから身を起こす。米党のお姫様がいるので、殆ど朝は和食。週末だけは、キッチリ出汁から味噌汁を作る。他の日は、まぁね、それなりに。
「いっただきまーす。」
マッタリと過ごして、さてお出かけしますか。
蓮と2人で家具屋巡りの筈だった。安くて良い物探すと思って。だが、蓮は違ってた。そう彼はリッチマンなのだ。
若者に人気のIKEDAに直行。おい、マジか。俺、予算そんなに無いぞ。
ベッド売り場に直行して、お目当ての物を探す。すると蓮が、足を止めて俺に声をかけた。
「凛は、マットレスとかこだわりある?」
そこにあるベッドはキングサイズ。え?キング買うの?ダブルちゃうの?
「うんにゃ、特にないよ。もしかしてキングサイズ買うの?」
「・・・当たり前じゃん。エッチの最中に落っこちたら萎えちゃうでしょ。」
あぁどうかこの会話誰も聞いてませんように。
「お客様、お決まりでしょうか?」
居た~後ろに。真後ろにピッタリと店員さん張り付いてた~。
もう、ヤダ。絶対聞かれてる。大体、成人男性2人組の時点でバレてる気がする~。
「すいません。このサイズ下さい。あとこれに合わせて布団類も。このカードで。一括でよろしく。」
そのカードは、黒い色をしていた。おい、蓮、君一体何者なの?
布団やら配達日の詳細は俺が決めて、結局ベッドは蓮に買って貰ってしまった。値段は怖くて聞けない。
帰りにコーヒーショップに寄ってスィーツを楽しむ。蓮はブラックコーヒーのみ。甘味が駄目だなんて人生損してると俺は思う。お土産もショップで買って帰宅したら、お嬢がいない。
{バァバの所に行ってきます。帰りはわかりません。 華}
俺の携帯知ってるのにメール一つくれない。今時、置手紙だ。塩対応も程々にして欲しい。
蓮も帰宅して、平和な日曜日が終わった。
蓮は心配性だから、言わなかったけど平日の昼間にちょくちょく教会に通っている。ヴァンパイアの癖に。でも居心地が良いし、パワースポット的な場所だ。最初分からなかったがカトリック教会だった。よく考えたら、俺的には対立する立場の場所。だってあのエクソシスト、悪魔祓いが実在する教会だぜ。なんで居心地が良いのかは不思議だ。
今日も無人の聖堂に1人。十字架を見つめて時間が過ぎる。
祭壇には聖櫃がある。調べたら、あの中にはミサという儀式でキリストの肉に変えられたパンが納めてあるらしい。
神を信じているか?と聞かれたら今なら信じられると思う。だって、空想の存在だったヴァンパイアが此処にいる。
ずっと無意識に聖櫃を見つめていたら、フッと人の気配がした。慌てて振り向くと、すぐ後ろに外国人の男性、しかもグラビアから飛び出してきたような美形だ。淡い金髪、銀色に近いロン毛で目も珍しい金色。
俺を穏やかに見つめている。神父じゃなさそうだ。この季節には寒そうなシャツとスラックス。
髪の色といい、目の色肌の色。
俺のもう一つの姿によく似ている。鏡に映らないので、もちろん蓮や華から聞いた姿だ。
柔らかな笑顔で俺にこう言った。
「まもなく貴方は自分のやるべき事を知るでしょう。貴方はそれを受け入れ、役目を果たさなければなりません。」
なんの事だ?日本語上手いけど意味が分からない。
「貴方は、神の裁きを受け存在してはならない者が行く所へいく筈でした。しかし、貴方の行いを神は全て見ました。貴方は特赦を受け今や神の祝福の下に存在しています。」
う~と、要はヴァンパイアの俺は、神の裁きを受ける筈だったけど、どうやら許されてその代わりなんかしないといけないらしい。
でもまだ、よく理解していない。大体この人誰よ。
頭を抱えているうちに、その外国人は居なくなってた。
多少恐怖感もあって、悩んだ末に蓮に電話した。そして、外国人が話した内容を出来る限りそのまま伝えた。そしたら、すぐに俺の家に来ると言う。黙って教会に通ってた事怒ってるかな。
俺も帰宅して、ハァと一息入れる間も無く、蓮が家に来た。蓮は結構近所に住んでいる。
「それで?何かされなかったか?」
少し呆れ気味に聞いてきた。やっぱり心配かけてしまった。
「大丈夫、話しかけられただけだから。」
良かった~とリビングのソファーに腰を下ろす。
「心配かけてごめん。さっき言ったけど、結構通ってた。けど今日、初めて人に会ったんだ。意味分かんない事言われたけど」
「凛の事、ヴァンパイアって知ってる感じだった?」
どうなんだろうか?俺の事を名前では呼んでない。だけど人間とも言ってない。彼は俺の事を<存在>と言っていた。存在してはならない者と。
存在。今は人間モードだけど、本当の本来の姿は、ヴァンパイアのディウォーカー。
もう一度、資料や文献の山と格闘する必要がありそうだ。
資料の山に囲まれて、俺の小さな可愛い脳味噌がショートしそうだ。息抜きに、また教会に行った。今日は丁度庭掃除している男性に会った。この教会の司祭らしい。
「あの、金髪のロン毛の白人男性って信者さんにおられますか?」
「いえ、うちの教会には外国人はいませんよ。」
え?信者さんじゃないの?じゃ何者だよ。なんか熱心な信者さんみたいだったのに。
資料との格闘と教会通いが、数日続いた。だって気になって仕方がない。週末の蓮との時間もその事から離れられない。勿論日曜日は信者さんが沢山集まるから教会には行けない。
蓮もどうやら俺と同じで、その人物が気になって仕方がないようだ。
だって、あの外国人は言った。「まもなく知る」と。
今日はIKEDAから、ベッドが届く日。古いベッドも引き取ってくれるから、入れ替えだけで済む。で、平日なのに蓮がいる。俺だけで大丈夫って言ったのに、自分が買った物だからと立ち会うらしい。
業者が来た。華は学校で居ない。
自室に案内して、俺と蓮があーだこーだ言って配置して貰う。あれ、待てよ。キングサイズのベッドの客が男2人で指示だしてるってヤバくない?他に家族もいない。
絶対、絶対これゲイだってバレてる。
蓮は分かってやっている様だ。顔がニヤついている。
くそぅ、当分エッチ禁止令出してやる!
ベッドが来たからって早々ヤラせるか!
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