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第10話

 俺達は、メインストリートに戻る。  騒がしい人間達ももう少なくなってきていた。  怒りに突きうごされて動いてはいるが、何をすれば良い?ガブリエルが言った役目って何だ?  すると其処には誰もいない筈のアーケードの天井付近から、生臭い臭いと共に騒めく気配がする。  人が途切れた瞬間、目の前に黒い見覚えのある者達が現れた。  「俺達の食事のゴミが、気になったのか?」  今何と言った?食事?ゴミ?  あの少女をそう言い捨てたのだ。コイツらにとって人間は只の餌か。  「お前達もちゃんと食事を摂っているか?」  笑いながら吐き捨てた。  俺は更に怒りに打ち震えてきた。蓮も同じで怒りに打ち震えている。彼の目は、もう優しい金色ではなく紅く炎の様だ。多分俺もそうだ。  どうすればいい?此の儘、見逃す訳には行かない。  「お前は美しいな。同じヴァンパイアなのに、こうも違うのか?」  リーダーらしいヴァンパイアが俺に近付いて触れようとした瞬間。  突如、中空から華が現れた。手には大きな鎌を持って。  彼女は、無表情で鎌を振り下し、俺に触れようとしたヴァンパイアを切り裂いた。  「何、ボーッとしてんの!ネックレスは只の飾りじゃないんよ!」  華は、そう叫んでまだ残るヴァンパイア達に向かって行く。  俺達は、ハッと気が付き、自分のネックレスに触れた。すると俺の手には華と同じ鎌が現れ、蓮には劔が現れた。  黒いヴァンパイア達は、軽い身のこなしで華の攻撃をかわしている。俺と蓮も怒りに任せ参戦する。黒い奴らは、リーダーを失い逃げ惑う。  ガブリエルのおかげか?俺達ディウォーカーの方が身体能力が上回っているようだ。華は、コツを覚え瞬間移動の様に敵の背後を取りバッサバッサと切り裂いていく。ヴァンパイア達の悲鳴がアーケードに響き渡る。俺達も逃げ回る奴らに追いつき、鎌と劔を振り回し黒いヴァンパイア達を倒していく。  切り裂かれたヴァンパイア達はすぐには死なず、上半身だけで逃げようともがく。そこに蓮が奴らの頭に劔を突き立て息の根を止める。  彼らの最期は生臭い臭いと灰と化した残骸。  気がつくと全て終わっていた。  遠巻きに幾人かの人々。パトカーの音も聞こえてきた。俺達の役目は終わった。  怒りはまだ燻っていたが、今の姿じゃ目立って仕方ないので、人間モードになり俺達は脇道に消えた。  あの少女の事が気になるが後は警察に任せよう。俺達は死人に何も出来ないのだから。  帰りは、蓮の車に乗って帰った。華は後ろが狭いのでブツブツ文句を言ってる。  「華、どうしてあそこが、分かった?」  「何となく。激怒してる感じが伝わってきた。何処にいる?って強く思ったらあそこに飛んでた。」  飛ぶねぇ。様々な能力がある事は知っていたが、瞬間移動とは思いもよらなかった。    「あぁそうだ。パパ達のイチャイチャは、シャットダウンしてるから安心して。私、生モノ地雷だから。」  地雷の意味は判らないが、蓮が笑ってるので後で聞いておこう。まぁ気持ち悪いんだろうな。それに華には聞きたい事がまだある。ネックレスが、武器になるなんて何故分かった?  「だって、ガブリエルが言ってたじゃん。自分を守る物だって。そしたら武器しかないでしょう?」  えっ?そうなの?  「ていうか、パパ襲われそうになってるのに、ボーッとしてるって危機感無さすぎ。それに感情的になり過ぎ2人共。そんなんじゃいつか自滅しちゃうよ。しっかりしなよ。」  俺達の役目は何なのか、華は直ぐに理解して戦っていたのか。俺達2人は怒りの儘に動いていたのに。  「私だってそれなりに調べたりしてたんだよね。あの武器は純銀製らしいし、どうも私達の役目は、化け物退治みたいよ?」  華はいたって冷静に言い放った。  化け物退治。  それが俺達の役目か。ディウォーカーを強くした理由。分かってきたよ。存在してはならない者を赦すという形にして、利用する気なんだな。  神を信じてみようと思ったが今はそんな気持ちにならない。死ぬ事が出来ないこの身体を神は利用する気だ。  今日は、クリスマスイブだ。  モヤモヤは晴れたが、神に不信感たっぷりでクリスマスを祝うって、何か矛盾してるけど恒例行事だし、仕方がない。  ケーキとチキンを準備して、蓮が来るのを待つ。華は幾ら小遣いが貰えるのか気になって仕方がない様だ。正月が来ればお年玉も貰えるのに。  夕方、もう家族の一員となった(いろんな意味で)蓮も来て豪華な夕食が始まる。ケーキとチキンだけじゃないぞ。ちゃんとサラダやスープ作ったもんね。  そういや、華と蓮は、ヴァンパイアになってから、吸血行為をしていない。あれか100%ガブリエルの血で変化したからかな。俺はガブリエルが言った様に、渇きが軽くなって2人の血を飲んだ後は渇かない。  でも、俺はいづれ人間の血が必要となる。どうしたものか。  蓮は今日は帰るようだ。何と華に小遣いとクリスマスカードを渡している。う~ん、コイツ、タラシじゃねーの?  一方、華は予想外の収入と、さり気ないカードで益々、蓮の味方になってる。  「気が利く男って、モテるよね~」  意味有り気な物言いだ。なんだ、パパだってモテるんだぞ........男にだけど(泣)  蓮はあの戦いの後から、ほぼ半同棲になった。何がそんなに心配なんだろうか?あれか?痴漢の件か。どうりで、近所のスーパー以外に引っ付いてくる様になった。  それから、華も入れて3人で俺の吸血行為について話し合った。今までは蓮の血液を間隔を空けて飲んでいた。ヴァンパイアとなった今同族同士での吸血行為は危険らしい。  俺は行き詰まっていたが、蓮がネットで    『ヴァンパイア症候群』  と検索したら、  <レンフィールド症候群またはポルフィリン症>  と一発で、出てきた。   「蓮、ヴァンパイア症候群って言葉知ってたの?」 と聞くと、華が後ろから。 「よく吸血鬼物の漫画とかに出てくる。」  と蓮の代わりに答えた。  「俺達は、死んでるけど別に死亡届出してる訳じゃないから、病院行って保険使って診断して貰ったら、血液貰えるかも知れない。」  蓮曰く、この病気は、定期的に輸血しなくてはいけないらしい。この診断を受けたら定期的に血液が手に入る。希望が見えてきた。正月が、済んだら、病院に行ってみよう。  慌ただしくクリスマスが終わり、直ぐに正月だ。正月は、近所だが実家で過ごす事になってる。  実は俺がディウォーカーになってから1度も帰ってない。華は行き来してるので、怪しまれずに今日まで来た。だが、流石に帰らないと何か言われそうだ。グズグズ悩んでると  「何時かはバレるんだから、悩んでないで正直に話せばぁ?私だって、最初怪しまれたし。」  そうだ。華は変化した後も実家に遊びに行っている。そうだな、正直に話すか。あぁついでに蓮との事もカミングアウトしちゃうか?ショックが1度で済む。はず。  いよいよ大晦日だ。蓮はいささか緊張している。そりゃそうだ。今からヴァンパイアである事、それにゲイだってカミングアウトするんだ。緊張するわな。俺も昨夜は眠れなかった。  徒歩圏内の実家に3人で向かう。  「ただ今~」  出来るだけ自然に、実家に上がる。帰る事と客を連れて来る事を伝えていたので、母は準備に忙しそうだ。    あれ?顔を合わせても何も言われない。蓮の事もあまり触れない。なんか予定が狂ってしまい、思わず母に話しがあるんだけど。と言った。母は、振り向きもせず。  「話?なんの?バンパイアだっけ、後、彼氏が出来たってね。まぁ驚いたけど、迷惑かけないなら何でもいいわ。」  あれ?何で全部知ってるの?  華をみたら、ニヤニヤしている。あーお前か。全部話したんだな。褒めるべきか叱るべきか。う~ん。    華と蓮は、もう居間で父親とおしゃべりしてる。母も父も強かったです。はい。

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