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第22話
最近は、結構頻繁に撮影が入る。まぁアルバイトと思えば高給取りだ。内容は・・・多少控えめになったかな。高木君も時々顔出して注文を付けてくれる。でもあれだ。外見がそうだからか、女性的な衣装が多い。中性的なのが良いらしいし。ただ、撮影終わりが不定期で、毎回蓮が迎えに来てくれるわけではないので、トラブルにならない様に気を付けてる。スタジオを出るともうとっぷり日が暮れていた。
ん~蓮にメールするかなぁ。でも最近忙しそうだから、1人で帰るか。ブツブツ言いながら歩いてると
「凛、今仕事終わりか?」
ロイだ。不味い。
「え?あぁ、今から帰るとこ。」
「彼氏の迎えはないのか?」
蓮の事か。
「今日は無い。サッサと帰るよ。」
ロイが、笑っている。
「そんなに警戒しなくても襲いはしないよ。」
いんや、信用ならない。蓮の目の前で2回目のキスされたし。
「人のモノを横取りする趣味は無い。まぁ私を選んでくれるのであれば、話は違うが。」
下心、見え見えじゃないか。
「そうそう、人間の協力者がね、私にスマホとやらをプレゼントしてくれてね。」
ふーん。俺には関係ないけど。
「蓮だったかな?彼に電話を掛けたいんだが番号を教えてくれないか?」
は?何でロイが蓮に電話しなきゃいけないんだ?
「やだよ、勝手に人の個人情報は教えられない。」
フッと目の前からすぐ傍に来た。速さも俺達並みなのか?
「これが凛のスマホだな。ふむ、これが蓮の番号か。」
なんといつのまにか勝手に俺のスマホ取ってる!
「返せよ!勝手に取るな!」
俺の言葉を無視して勝手に蓮に電話してる。
「分かるか?ロイだ。今、凛と居る。」
〔はぁ?これ凛のスマホだよな。何でお前が掛けてる!〕
ほら、もう怒ってる。あぁ~あ。
「1人で帰すのは心配だろう。私が送ってやる。」
〔へ?どういう意味だ?〕
「凛を守るんだろう?寄ってくる奴等から。」
〔た、確かに。そうだけど、お前も危険だ。〕
「それは失敬だな。私は先日、君らの提案に乗ったんだぞ。信用できないのか?」
〔・・・分かった。タクシーで送ってくれ。〕
「了解した、女性のドライバーのタクシーを探そう。」
話が終わったみたいだ。女性のドライバー?そこまで警戒するの?
「凛はもう少し自分の魅力を自覚した方が良い。私は長生きしてるから、そこまで衝動性は無いが、若い男共は君の魅力、その能力に当てられてる。」
そ、そうか?かなり衝動的にキスされた覚えがあるんですが。
「1人で歩くなんて、男共を誘って居る様な物だ。」
ひ、酷く無い?誘ってるとか。そんな気更々無いのに。
「そこまで酷くない。まだロイ以外から襲われてない。」
「そうか?君の身体からは蓮以外に触れられた匂いがするが。」
ち、痴漢か。そんな事まで分かるのか。
「しかも、今やってる仕事も余り褒められたものじゃないな。雑誌をみたが、もう餌を撒いてる様な内容だ。」
ガブリエルと同じ事言われた。うーむ、辞めた方が良いのか?
「さぁ、タクシーを呼ぼう。サッサとしないと彼氏に怒られるだろう?」
た、確かに。
ロイが自分のスマホでタクシーを呼んでくれた。女性のドライバーだ。
「私の役目はここまで。本当は家まで行きたいが、余計な揉め事は必要ないだろう。」
あれ?えらく紳士的だな。と油断したら、またキスされた。クソッ、お前が1番ヤバイじゃねーかよ。
「ただいま~。」
なんかドッと疲れた。ロイは1度で番号を覚えたらしく、タクシーに無事に乗った事も蓮に電話してた。
「アイツ、なかなか紳士だな。ちゃんと報告してきたよ。」
いや、キスされちゃったんだけどな。言わないでおこう。
「あれだ。ロイは外国人だから、キスは挨拶みたいなモンらしいな。」
あれ?何で知ってんの?あ、高木君が来てる。
「心配だったから、高木君来たついでに凛を視て貰った。」
ついでかよ。てか、1発目の挨拶で舌入れてこねーよと思ったが言わないでおく。
高木君もなかなか忙しいらしく華と会えないから、たまに夜顔を見に来る。うーん、純粋な恋愛だなぁ。パパは応援するよ。おい、万年発情期、見習え。
「おーい、寝てない?起きてるー?」
ん?あれ、風呂で寝てた?蓮の声で起きた。
「ん~、今起きた。大丈夫。もうすぐ上がる。」
疲れてるのかな。そういや、随分血液飲んでない。冷凍溜まってる。
「上がったら、血飲みな。準備しとくから。」
「うん、ありがとう。」
俺は定期的に病院から血液が届く。ロイは渇いたら動物を探さなきゃいけない。頑なに人間は襲わないと決めている。よく考えたら、ロイは凄い奴なのかもしれない。
う~ん、やっぱ飲んでなかったからな。疲れが取れるのが分かる、と同時に自分がヴァンパイアだと突きつけられる。蓮と華は血を必要としないタイプだ。
「ちょっと、蓮。もう少しパパを労ってよ。日に日に弱ってたじゃん。」
華さんお怒りです。そうだね、家事やってトレーダーやって、モデルやって。帰ってきたらもう1日置き位に夜のお勤め。血液とらなきゃ弱るわ。てか、約束反故にされてる。何とかしないと身が持たんぞ。
疲れは取れたがやはり眠い。
「先に休むよ。何か眠い。」
「うん、分かった。おやすみ」
蓮がベッドに入ってきたのが分かった。もう5月だし、暖かいから引っ付く必要はないんだけど、やっぱ蓮の腕の中は落ち着く。モゾモゾと蓮の腕の中に入ってまた眠りに落ちる。流石に今日は何もしない。
まさか、頻繁に蓮と交わる事がキッカケになるなんて思わなかった。
今日はなーんも予定が無い。家事して、適当に株確認してノンビリして午後のゆったりとした時間を楽しんでいた。
「凛、危険だ。お前の身に危険が迫っている。」
ガブリエルが、突然現れた。
「き、危険?何?何が起こるんだ?」
「未来の事は言えない。警告だけだ。華と蓮、あと高木も集めろ。1人になるな。後、あのナイトウォーカーも協力させろ。」
そう言い残して消えた。
「ヒント位、教えて行けー!!」
取り敢えず全員にガブリエルの警告を知らせた。ロイはまだ眠ってるはずだけど。
俺はどうしたらいい?分からない、何も分からない恐怖があたりを満たす。
「どういう事だ!」
蓮が1番に帰ってきた。華も高木君も続く。
「分からない。ただ危険だって事しか。」
俺のスマホが鳴る。
「ん?知らない番号だ。」
〔私だ。どういう事だ?〕
ロイからだ。起きたのか。まだ陽は高い。
「分からない。ヒントすら無いんだ。」
〔私の話を聞く気持ちはあるか?〕
ん?何だろ。
〔最近、頻繁に蓮と交わっているだろう。君の能力、惹きつける能力がかなり高まっている。凛、君は現代人だろ。インターネットとやらを見てみろ。〕
蓮が急いでネットを開く。そして、俺の名前で検索すると・・・そこには俺の情報で溢れていた。しかも、日本語だけじゃない。英語や恐らくヨーロッパ方面の言語で書き込まれている。
〔分かったか?様々な媒体を通じて凛の影響が出てる。君を狙う奴が来るだろう。これを見てるのは私達だけじゃない。現代に馴染んでいるナイトウォーカー達もだ。〕
「戦いに備えろって事か?」
〔それもそうだが、凛、君自体が標的だ。〕
は?なんで?
〔君達ディウォーカーの1人目は誰だ?〕
「・・・俺だ。」
〔ネットを見たナイトウォーカー達は、ディウォーカーの力、陽や銀、要は君らの力を欲している。〕
「・・・だから俺を狙うのか?」
〔そうだ。蓮と華はガブリエルによってディウォーカーになったが、君はナイトウォーカーを倒してディウォーカーになった。だから君だけが欲しいんだ。〕
「どうすれば良い?」
〔私が言えるのは1人になるな。それだけだ。外出も誰かと居るんだ。いいね?夜になれば私も動けるが、昼間は無理だ。〕
「分かった。警戒するよ。ありがとう、ロイ。」
〔奴等はもう近くに居る。〕
電話が切れた。
奴等は近くにいる・・・
俺は慌ててネックレスを確認する。撮影する時外すからだ。蓮と眼が合う。俺が怯えているのが分かったみたいだ。
「大丈夫、側に居るから。俺にも責任がある。」
ギュッと抱きしめてくれた。華と高木君が居るけど気にしない。
まさかこのハグが最期になるなんて思いもしなかった。
小雨が降る肌寒い日、一日中薄暗い。警戒して外出もままならない。警告から3日。身辺で変わった事は無い。家には蓮が居て仕事してる。家からも見える徒歩2分?もっと近いか。スーパーに行きたい。
「ちょっとスーパーに行きたいんだけど。」
「ん?あとちょっと待って。一緒に行くから。」
「大丈夫だよ。あの臭いも気配もしない。すぐ帰ってくるし。」
「ダメ。1人じゃ行かせない。」
「ちょっとの間位、自分の身は守れる!」
ちょっとムカついて1人で行く事にした。アキレス?俺が3人の足を引っ張るって事だろ!そんなに弱くない!俺は過信していた。自分自身に。
外に出ると小雨が降り続いている。少し歩くと臭いがした。あの臭いだ。しまったと感じたが、時既に遅し。囲まれた。黒いコートでフードを被った奴らに。ナイトウォーカーだ。太陽が射さない今日を狙ったんだ。雨で臭いも弱い。ネックレスに触れる前に腕を物凄い腕力で捻り上げられる。痛みで顔が歪む。ディウォーカーに変化しても敵わない。髪を掴まれ、首を晒される。
(血液を吸う気か!)
そう悟ると同時に噛み付かれどんどん吸われる。意識が遠のいて行く。
(蓮、ごめん。蓮の言う通りだ。俺はアキレス。弱点でしかなかったよ。ごめんね、蓮。華の事、頼むよ)
俺は殺される、そう感じて心の中で蓮に謝っていた。もう身体に力が入らない。足が崩れる。
(・・・蓮、ごめんね。愛してる・・・)
そして意識が途切れた。
(凛?!)
何が嫌な予感がする。クソッ1人で出すんじゃなかった!
急いで後を追う。十数メートル先に黒い人集り!この臭い、ナイトウォーカーだ!ネックレスに触れ劔を出す。右手からまた人影!あれは、ロイだ!
「何してる!どうして1人で出したんだ!」
答えられない。止め切れなかった。
奴等の中心にグッタリとした凛を見つけた!
「凛!凛っ!しっかりしろ!」
反応が無い。意識が無いのか!
取り巻きのナイトウォーカーを切り裂くが相手が多い。ロイも加勢しているが、凛まで届かない。取り巻きに気を取られ、凛を見失う。凛が居ない!
「凛を返せ!!」
切り損なった取り巻き達は、高笑いしながら、霧の如く姿を消した。
呆然と立ち尽くす。そこに、瞬間移動が出来る華が来た。制服のままだ。
「ま、間に合わなかった・・・」
俺をみて、パンッと引っ叩く。
「何の為に側にいたのよ!パパはどうなるのよ!」
泣きながら、俺を責める。そうだ、俺が悪い。毎夜の如く凛を抱き、能力を高めてしまった。知らなかったでは済まされない。
「仕方ない。こんな天気だ。ナイトウォーカーも日中動ける上に雨で臭いが消えている。」
ロイが、語る。
「アンタだって、ナイトウォーカーでしょ!味方だったら、何で教えてくれなかったの!アイツらの後、付いて来たんでしょ!」
華は感情的になっても、状況は冷静に読む。
「取り敢えず、健太を呼ぶ。健太にパパを追って貰うから!」
そうだな。俺は役立たずだ。1番愛してる者をまた喪おうとしている。何も出来ずに。
(凛、どうか無事でいてくれ、生きていてくれ)
俺の願いはそれだけだった。
夕方、慌てて高木君が来てくれた。状況を華から聞き、身内に不幸があったと会社を休んでくれた。
「どう?パパ分かる?」
「う~ん、意識がハッキリしてないみたいで場所までは分からなないけど生きてるのは確実だ。大丈夫。」
「奴等は凛を殺したりはしないだろう。力が欲しいのだから。」
ロイが話す。
「じゃ、誘拐までして、何するのよ。」
「・・・女性で、かつ凛の娘にはとても伝え難いんだが・・・」
何だ?凛が何かされるのか?
「まず、死なない程度に凛の血液を吸うだろう。複数でだ。問題はその後かも知れない。」
「何だ?勿体ぶるなよ。分かってるのか?」
「いや、あくまでも、過去の経験から話すだけだ。だから、違うかも知れない。」
「なんだよ、可能性があるなら、全て話せ。」
「・・・分かった。恐らく血液の交じりがあって、そうだな。一種の麻薬を摂取したような朦朧とした期間が続くだろう。その間に凛の能力を高める行為をするだろう。分かるだろ、蓮。」
それは奴等と肉体関係を持つということか?
「意識が朦朧としているから、凛は抵抗出来ない。もし、行為の途中で我に帰ったら精神が壊れるだろう。私はそういう人々をみてきた。」
俺は頭を抱える事しか出来ない。
「国内にまだいるの?それくらい分からない?」
華が焦る。凛が壊れてしまう前に助けたいのだ。
「ちょっと待って、凛さんの意識が、強くなってる。ん~、場所は・・・あぁ、ダメだ。もう国内じゃない。華と同じ力を持ってるヤツがいる。」
もっと集中して!と煽る。そうだ、意識がハッキリしてきて、行為、要はレイプだ。犯されたら精神は壊れてしまう。
その時、ロイが高木君の肩に手を置く。
「私のイメージを使いなさい。伊達に世界を数百年も放浪してない。」
高木君、頼む。凛を、凛を早く見つけてくれ。
「凛さんが、僕達が探してる事に気づいてくれたら早いんですが・・・・」
沈黙が続く。高木君の能力が世界中を駆け回っているのだ。
「今、凛さんの視界に入りました。外に意識を飛ばして場所、探ります。」
凛は目覚めているということか!
固唾を飲んで、サーチが終わるのを待つ。
「場所は、ロイさんの1番理解している場所、ドイツです。」
「り、凛は無事なのか?!」
「どうやら、自分を責めて心を閉じています。僕が分かるのはここまでです。遠過ぎて詳細まで分かりません。すいません。」
(ここは、何処だろ?多分日本じゃないなぁ。)
俺は地下牢みたいな所に入れられている。窓が高い位置にあって外はどうなっているかわからない。殺されなかった事実だけがあるだけ。脚は片方だけだけど足枷がついてる。石畳の上に転がされている。
(生きて帰れたら、また蓮に逢えるかなぁ。逢いたいなぁ。でも心配かけた張本人だもんなぁ。もう合わせる顔が無いや。)
ぼんやりそんな事考えてた。身体は怠い。かなり血液を吸われたから。帰る前に干からびちゃうかもなぁ。死ぬ前に蓮にちゃんと謝りたかったなぁ。蓮に謝りたい。それだけだった。
生かされてる理由が解るまでは。
窓から夕闇が迫るのが、分かる。ナイトウォーカー達の時間だ。俺の力が欲しいのだとロイは言った。だから生かされて血液を毎日吸われるのか位に思ってた。
ガタンッと重い扉が開く。俺の鎖を持ち、ナイトウォーカーの男が外へ連れ出した。
囚われた囚人のように、男の後ろを歩く。少しフラつきながら。それを大勢のナイトウォーカーが何か笑いながら俺を見てる。言葉が分からないから、何を言われてるか分からない。
暫く歩くと大広間に着いた。正面には祭壇の様な台がある。何かの儀式に使うのか?
男は、俺をその台に誘導する。台の前まで来るといきなり、俺の服を強引に引き裂く。血液を吸うのに、裸にするのか?!体力も落ちてる俺は抵抗出来なかった。全裸にされて台に上がらされる。複数で吸うのかな?少し怖い。
するとリーダーらしき男が来た。そして、なんと自分の腕を切り、血液を俺に飲ませようとする。何故?
無理矢理口に含まされ飲み込む。すると、頭がボーとしてフワフワしてきた。まるで酔っ払いみたいに。
男は、俺が血液を飲んで朦朧としている様を眺めてる。そして、身体をなぞる。
何をする気だ?意識が混濁しながらも警戒する。下半身を中心に触り始めた。あぁ、分かった。俺の能力を高める行為、SEXだ。
もうこれで、終わりだ。慰めものになって終わるんだ。生きてても、もう蓮には逢えなくなると確実に感じたら、初めて涙が出てきた。死ぬ方がマシだな。と思いながら朦朧とした中、男に抱かれた。
途中、かなり抵抗して身体中傷だらけだ。抵抗したって何も状況は変わらないのに。何人に輪姦されたかわからない。途中で意識を失ったらしく、気が付くと地下牢。身体は複数の男の精液で汚れたまま。
(蓮ごめんね、俺もう汚れちゃった。もう逢えないね。だからもう俺の事忘れて・・・・)
冷たい石畳の上で痛む身体を丸めて眠りについた。
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