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第43話

 翌日も晴天。観光日和だ。目的地は、ホテルから近いので、朝はゆっくりブランチと決め込む。  日曜だからか、1人で来た時より混んでる。でも、休みだったスィーツ店も開いてるし、人混みに紛れて手を繋げるし、楽しい。今日は髪を下ろし、蓮のシャツ(彼シャツって言うらしい)着て、膝丈のハーフパンツ。よく見たらいや、よく見なくても男だろうけど、ゲイカップルに見えるかな?  「あっ!こないだの兄ちゃん!こんちわ!あれ、彼氏さん?いらっしゃい!」  面白Tシャツの兄ちゃんだ。酒の席でカミングアウトしてたし、手を繋いでるし、彼氏とすぐに分かったらしい。  「こんにちわ、売れてます?」  「ボチボチだねぇ、ここより居酒屋がメインだわ。」  蓮をチラ見。  「いやぁ、彼氏さんも体格良くてイケメンだね。お似合いだ。」  豪快に笑う。蓮も妬いた事が馬鹿馬鹿しいのが直ぐに分かり、  「こないだは、お世話になりました。なんか、奢ってもらったみたいで。」  「いいの、いいの。楽しけりゃ、何でもOKだよ!」  「今夜、居酒屋開きます?」  「あぁ、開けるよ。来てくれるの?有難いねぇ!」  「豚の角煮が絶品!とこっちから、聞いて食べてみたくて。」  「角煮だけじゃないさぁ。良い酒も揃ってるよ!こんな美形が2人も来たら、今日は女性客で満席になりそうだ!」  店内に入る。  「何だよ、カッコいいTシャツあるじゃん。何でアレ、チョイスするんだよ。殆どニートTシャツだよな。」  悪かったな。面白いと思ったのに。  「部屋着にはなるから、いいか。」  数点見繕って購入。  「あんがとね~、夜、待ってるよぉ~!」  「えーと、次は、紅芋生タルト!製造工程も見れるって。」  旅行誌を見ながら、スィーツ巡り。  「俺、ソーキそば食べたい。」  「じゃ、タルトの後に行こ。」  「牧志そば。安くて美味いらしいな。牧志市場にも地元の甘味があるみたいだよ?」  「え?行く、行くよ。ステーキも食べたいなぁ。」  欲張るな、明日も来れば良い。と諭された。  「う~ん、甘い香り。わぁ、本当に紫色だ!」  「子供みたいだな。もうすぐ50だろ?」  笑いながら言うな。確かに中身はもうすぐ50だけど見た目は20代前半だから良いんだ!以前は、ギャップに戸惑ったけど今は見た目の精神年齢に近寄って来た気がする。  出来立ての紅芋生タルト、戴きまーす。  「旨っ!蓮も食べたら良いのに。」  「いい、この甘い香りだけで腹一杯だわ。」  お土産に買って、次は牧志そば。  「トロットロだね。ソーキ。美味しい。」  「こっちの炊き込みご飯も美味いぞ。」  「沖縄に住んだら絶対、太るな。」  軍用品店にも寄って、お買い物。体格が良い蓮は、外国サイズの服もカッコよく着こなす。俺はタッパはあるけど胸板そんなに無いし、ブカブカで何とかズボンを買えるくらい。しかもレディース。複雑。  「ケンにもなんか買うかな。アイツ体格良すぎて日本製あんまりサイズ無いからな。」  確かに無いな。確か195cmだったよな。  ケンにいくつか見繕い、店から直接東京に送る。  例の居酒屋で夕食を頂く。こないだの客は居なかったけど、今日も呑んで歌って踊る。三線の音色を聴きながら地元料理をたらふく食べた。  「ほんと、旨いもんばっか。満足、満足。」  「なぁ、凛。提案なんだけどさ、あのさ。」  何か言いずらそう。何だろ。  「うん。何?」  「指輪、買ったら付けてくれる?左手に。」  言葉が出なかった。プロポーズじゃんか。  丁度、4℃の前だ。  顔が火照るのが、分かる。どうしたら良い?即答?拒否は有り得ない。答えはYESしか無いんだけど。  「サ、サイズ。サイズあるかな?」  「付けてくれるの?」  コクンと頷く。正式には無理だけど、一緒に暮らしてるし、蓮以外のパートナーは考えられない。店舗に入る。恥ずかしいな。男2人でマリッジリング買うなんて。  「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」  「マリッジリングを。値段は気にしません。サイズがあるデザインを見たいんですが。」  蓮の後ろに立って、俯いて黙って立ってる。  「お客様と後ろのお方、お2人のサイズ見てみましょう。これで、測ってください。」  サイズモデルを出され、測って見たら俺、レディースサイズだった。大きい方だけど。蓮も測り、在庫がある物を出された。  「お肌も白くてお美しいですから、ダイアモンドが在っても指輪に負けませんね。今日は在庫が沢山御座いますので、ごゆっくりご覧ください。」  「うーん。悩むね。俺はメンズもんだからどれも似たようなのだけど。石入ってても良い?」  うーん。石入りは流石に女性向けだろう。  「ん?これ良いな。4℃アクア二ティコレクション。石あるけど、小さいし目立たない。」  「に、似合うかなぁ?一応、男の手だよ?」  小声で蓮に言う。店員さんは、どうやら、俺の事女性だと思ってるみたい。  「こちらは、メンズの小さめなのも御座いますよ?」  あれ?バレてる?  「男性2人って流石に可笑しいでしょ。」  蓮が、先に言った。  「いいえ、意外と多いんですよ。ですから在庫も出来る限り置いてます。」  店員さん、満面の笑み。強い。  「でも、お客様、失礼ですがモデルされてませんか?」  あれ?知ってるの?蓮も驚いてた。  「雑誌で、拝見した方とよく似ていらっしゃるし、弊社の広告に出てらっしゃいますよ。」  一冊の雑誌を手に持って、開いた。  「あぁ、羽根のやつか。そういえば撮ったよ。」  「忘れてたの?」  うん。忘れてた。  「お客様なら、男性でも石が有ってもおかしくありませんよ。指輪の方が負けます。自信あります。」  指輪が負けるって自信持って言われても何か恥ずかしい。  蓮が気に入って、蓮と店員さんから勧められたアクア二ティコレクションにした。サイズも在庫が有ったので、購入。  「おめでとうございます。また、お近くに来られたらお寄り下さい。」  小さな白い箱にブルーのリボン。部屋に戻り、ソファーに腰掛ける。  「箱開けて?付けてあげる。」  震える手で、リボンを解き箱を開ける。中身は店で見たけど、改めてみると流線的なラインにダイヤが慎ましく並んでる。蓮が、石付きのリングを取り、俺の左薬指に通す。  「うん、よく似合う。でも、凛の肌が綺麗すぎてダイヤが霞むね。」  泣きそうで、何も言えない。震える指で、蓮のリングを取り、蓮の指に通す。  「有難う。これからも宜しく。」  泣き顔見られたくなくて蓮にしがみ付く。  「・・・俺も至らない所、沢山あるけど宜しく。」  優しく頭を撫でられた。2人とも再婚組だ。俺は離別。蓮は死別。新しいパートナーは男だけど、きっと上手くいく。  先に風呂に入って、1人で左手に光る指輪を眺める。まさか、旅先でプロポーズされるなんて。一緒に居れるだけで、幸せを噛み締めた昨日。多分、昨日決心したんだろう。男にプロポーズなんて勇気いるよな。だって、結婚なんて相手を縛り付けかねないんだから。  そっと指輪にキスをした。  「そんなに嬉しい?」  見られてた。  「そ、そりゃ嬉しいよ。だって目に見える形で、その関係を確認できるんだから。」  「2回目のプロポーズでも、緊張したなぁ。だって拒否されたらどうすればいいか考えて無かったから。」  拒否なんてするもんか。俺と一緒に歩む為に人生と人間の命を捨てた男だ。  「拒否なんてしないよ。最初からそのつもりなら、深い付き合いなんてしない。蓮が一途なのも身を持って理解してる。まぁ、多少変態チックなのがたまに気になるけど。」  「何だよ~。凛だって付き合うじゃんか。」  だって、蓮に触られるだけで気持ち良いもん。  「どこでも発情するのがなぁ。」  「・・・あんまり意地悪言うと今日もやるぞ。」  いや、休息日下さい。御免なさい。  「ん~あと3日?早いなぁ。ウチナータイムにすっかり慣れちゃったなぁ。」  蓮は、居酒屋で気に入った古酒を酒屋で買って、チビチビ呑んでる。  「だなぁ。このマッタリ感の空間からでたくないわ。」  スマホで明日の天気を見た。んー、良くない。ステーキ屋行きたいんだけど。  「明日、天気良くないみたい。海に行けないし、どうする?」  「上原ミートだろ?タクシーで行くべ。後はホテルのレストランで済ませれば良い。」  結構、デカイホテルでレストランも数件ある。土産屋も充実してるから、明日はホテルで、マッタリするか。  夜でも、雲が増えたのが分かる。明日は降るなぁ。ドサッとベッドに飛び込んで、寝る体勢になる。  「ん、もう寝るの?」  「うん、食べ過ぎたし、嬉しい事もあったし。早く寝て夢見たい。」  蓮が、クスッと笑う。蓮は本当にイケメンだ。俺に自覚が足りないとか言うけど、街行く女性達がチラ見してんの俺知ってるからな。  「俺まだ眠たくないから、先に寝ていいよ。」  「わかった。飲み過ぎるなよ。」  「はい、はい。おやすみ。」  早く寝たせいか、目覚めも早かった。予定無いのに。少し荷物片付けるか。蓮は酒呑んで寝たから、まだ深い眠りの中だ。  (えーと、土産は、これにまとめよう。まだ増えるかも知れないし。)  蓮のスーツケースを開けて、洗濯物や新しい物を入れ替えてたら  ゴトッ。  何か落ちた。  「・・・・。」  早朝から見てはいけない気がするモノが転がってる。色は・・・ピンク。形は・・・。買った店はドンキだ。  今日の日程が、直ぐに浮かんだ。  旅先に大人の玩具持ってくる奴ってどうよ。  一昨日と昨日の感動を返せ。  寝てるケツに突っ込んでやろうかな。

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