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第44話

 さて、万年発情期の男は、まだ寝ている。  床には新品だけどあまり触りたくないモノが転がってる。使うつもりならスーツケースに戻しても無意味だろう。どうするかと考えあぐねていると  「ふぁ~、おはよ。早いね?」  奴が起きた。  「これ、何?」  蓮が床に視線を落とす。  「これ?ディオルド、張り型、あと・・・」  「呼称を聞いてんじゃないわ。なんでこんなん、持ってきたんだよ。」  「使う為。」  そりゃそうだろうけどさ。  「俺、ヤダって言ったよね?」  「エネマグラは、気に入ったじゃん。それと変わらんべ。」  ぐっ。アレはそりゃ、た、楽しんだわ。認めますわ。だからといって、旅先に普通持ってこないだろ。  「使わないからね。」  「また、またぁ。使ったら楽しいかもよ?」  マジで2日分の感動を返して欲しい。  「降り出したなぁ。上原ミート行けるかなぁ。」  「酷くなる前に行く?まだ、夕飯には少し早いけど。」  とりあえず、日中はアレは使われず、ホテル内でゆったり過ごした。タクシーを呼んで、ステーキ屋に向かう。  「美味いね。本に載るわけだ。」  「うん、沢山食べて精力つけてね♡」  「・・・・。」  ホテルに帰るかと店を出たら、  「寄り道しよ~。」  「どこに?」  「ここ。休憩2時間。」  ホテルはホテルだけど、ラブホじゃねーかよ。  「何でわざわざ?帰ってからでいいじゃん。」  ほんと、情熱の方向が間違ってる気がする。  「利用した事ないからさ、興味ある♪」  「大体、男2人で入れないだろーが。」  「凛、今さ、自分男に見えてると思う?」  髪を下ろし、肌寒いので丈の長い上着。  「見えない?」  「黙ってりゃデカイ女の子だよな。」  「・・・入る気、満々だな。」  手を掴まれ、嫌々連れられる。はぁ。  フロントは無く、部屋の写真付きのディスプレイ。ライトが点いてるのが空きらしい。  「お、ここお手頃。」  蓮がポチッとボタンを押したら、手元しか見えない窓口?から、鍵が出て来た。  「ふーん、あんまり普通のホテルと変わんねーな。窓がないくらいか。」  スゲ~勿体ない気がします。  バックの中から、ローションとあのピンク色の玩具。持って来たんかよ。  「2時間だから、サッサとね。」  蓮から服を剥がされる。うー、やっぱやんの?ヤルなら、普通が良いんだけどなぁ。蓮も素っ裸になり、ベッドに入る。シーツはピンク。まさにラブホ。  「ほら、脚開いて?解すから。」  雰囲気もへったくれもないお誘い。諦めて、仰向けになり、顔を覆う。  「何で顔隠すの?いつもの事じゃん。」  「灯、消せよ。せめて、暗くして。」  「何でだよ、初ディオルドだよ?表情見えなきゃ意味無い。」  見えるのは顔だけじゃないだろ!言い合いながら、ローションで濡らした指を双丘に這わす。  「なんか、今日雑。」  不貞腐れたエッチなんてつまんないんだけど。ブツブツ言いながら、指は休まない。念入りに蕾を柔らかくして、指を挿れてきた。  「・・・ッ。」  今日、気分も乗らないし、玩具使うだろうし、ほんと、お勤めッて感じだ。  「そんなに、気分乗らない?全然勃たないんだけど。」  乗るわけがない。蓮の興味本位のSEXに興醒めしてる。横を向いて顔を合わせない。  俺の腰の下に枕を入れ、双丘に顔を埋めてきた。舌で蕾を愛撫する気だ。解けてるソコは舌を受け入れる。  「・・・んっ。」  流石に感じてしまう。舌を尖らせ内壁の入り口を舐め回す。  「ハァッ、んんっ。き、汚いよっ。」  「いつもの凛の味だよ?汚くない。」  いや、汚いだろ?シャワーも浴びてない。執拗に舌で後孔を弄るから、身体に熱が帯びてきた。蓮の唾液と流し込まれたローションで濡れてまるで女性器だ。指も難なく飲み込む。  「うんっ、ふぅっ!んあっ。」  腰が疼き始める。ジワッと脚が開く。身体は蓮を受け入れようとしてる。気持ちより先に。  「ね、凛。身体に素直になって?相手は俺だから。」  確かにそうだけど。羞恥心がゼロになるわけじゃない。まだね。  「だ、だって玩具使うんだろ?普通のエッチが良い。」  指で後孔を捏ねながら話をする。  「じゃあさ、本音言って良い?」  「んっ、良いけど指止めて。」  「いや、止めない。・・・毎回さ、SEXするじゃん。凛はナカイキしてずっと気持ち良い訳だ。俺は1、2回、中出しして終わり。なんかズルくない?」  ズルいの範囲てか、感じ方が違うんだから仕方ない。  「だって、俺ずっと受身じゃん。仕方ないよ。じゃ、蓮が受身してみたら?」  ヌチャッヌチャッと指を休めず  「いや、それは遠慮する。俺、受身の素質ないと思う。」  「やんなきゃ分かんないじゃん。」  「だって、こんなに感じない。」  グイッと前立腺を押す。  「ああっ!んんっ、ず、ズルい!」  弱い所攻めるなんて。大人しかった息子が起き上がってきた。  「ほらね。ちょっと触れただけで、こんなに感じない。」  指を増やし、ピストンする。卑猥な音を立てて、出入りする指。  「んあっ!はぁっ、れ、蓮っ!」  「何?気持ち良いって身体は言ってるだろ?」  両手で顔を覆ったまま、頷く。素直になるしかないみたい。指も3本咥え込み、いつもなら、蓮の熱い昂りが入ってくる。  蕾に当てられた、ローションで濡らされた玩具は、ヒヤッと冷たく不快だ。  「冷たくて気持ち悪い。」  「前、自分でアナニーした時と一緒だよ。」  一緒じゃない。大きさ違うじゃん。しかもあの時は、欲しくて堪らなくて手を出したんだ。今回は、蓮の一方的な使い方だろ?  「んあっ!クゥッ、大きいっ!」  ピンク色の玩具は見た目より大きく感じ、引き攣りながら挿入してくる。  「痛い?痛いなら止める。」  ショボーンとする蓮。はぁ、しょうがない。付き合うか。  「痛くない。ちょっと慣れるまで動かさないで?」  身体を起こし、蓮の昂りに唇を這わす。舌でガン勃ちしてるペニスにお返しする。挿れられた玩具が身体を動かす度にゴリゴリと内壁を押す。ジワッと体外に出て行くのが分かる。濡れてるから滑るんだ。蓮が腕を伸ばし、玩具を根元まで入れる。  「んんっ、まだ動かさないでってば!」  「だって抜けちゃう。それにコレ、俺が触らなくても動く。」  は?どういう事?蓮のモノを舐めながら聞いていた。  「髪で顔見えないな。髪触っていい?」  「うん。いいよ。」  舐めてる顔が見たいらしい。髪を掴み顔を眺めてる。  「もう、いいかな?痛くないよね?」  「ん?うん、痛くないけどどうするの?」  「コレで動かす。」  蓮の手に小さなリモコンみたいなのが見えた。  カチカチッとスイッチを入れたと同時に体内で、玩具が内壁を捏ねまわし始めた。  「ンンァッ!やぁぁんっ!」  始めての感覚。ローターの比じゃない。強い動きに、もう口で奉仕なんか出来ない。  「つ、強いっ!よ、弱めてぇっ!」  脚が震える。前立腺や膀胱をダイレクトに圧迫して、全神経が玩具に集まる。リモコンで少し弱めてくれた。  「ハァッ、ハァッ、こ、コレヤダッ。」  「まだ慣れてないだけだよ。ほら、前から出てる。」  いつの間にか射精してた。蓮が背後に廻り、玩具を抜けないように持ってリモコンで操作する。  「ハッ、ハァッ!んんぅ!」  内臓が掻き回される感覚。シーツを握りしめて、玩具が与える感覚に耐える。気持ちは、正直あまり良くない。機械的にグルグル腹の中で動いてるだけだ。  「う~ん、凛にはコレ合わないかなぁ?」  だから、最初から嫌だって言ってるのに。  「じゃ、動かしてみるか。」  身体を固くして、耐えてる俺を見てまだ使うか。グルグルと先端が回る玩具にピストンが加わった。  「ヒッ!うゔっ!んああっ!」  腰が玩具の動きを追う。ピストンが加わって耐えていた感覚から、快感にすり替わった。  「アァンッ!ンンッ、ハァッ!」  身体を反り、腰を突き出して玩具を受け入れて感じてる。  「ん、気持ちよくなってきたね?腰が動いてる。」  「んん、あぁ。うんっ、少し良くなって来たっ。」  言われなくても自ら膝立ちして、腰を上げる。脚も開き、奥まで届くように双丘を開く。顔は枕に埋め、さっきまで嫌だった玩具に今は喘いでる。  「少しだけ?かなり感じてるみたいだよ?」  前からは留めなく先走りが垂れている。  「ンンッ、アウッ!お、奥までぇっ!」  双丘は、濡れてヌルヌルだ。ズッズッと奥に届く様に強く突き立てる。腹の中を擦りながら掻き回される。  「ゔわぁっ!んうっ!イ、イイッ!」  やっと薄っすら目を開いたら、自分の左指に光る指輪。口元に左手を引き寄せ、蓮に出来ないキスを指輪にする。すると蓮の左手がそっと添えられた。  「は、ハァッ、蓮っ、蓮、良いっ!」  右手で玩具を出し入れしながら手を繋ぐ。確かに気持ち良い。気持ち良いんだけど、玩具だけでイキたくない。パートナーが目の前にいるのに。蓮の左手に唇を這わせ、快感に喘ぐ。蓮を見上げて、瞳を見つめる。欲しいのは蓮。蓮が欲しい。  「わかるよ。凛。俺が欲しいんだね。だけど、先にコレで良くなって?」  さらに強く突き立てる。  「アアッ!ヒィッ!んぐぅっ!」  グチュグチュと水音を立てながら玩具が俺を犯す。蓮の手にしがみ付き快感に煽られる。  「クゥッ!ンッ!ウウッ!」  あぁ、あの感じが湧いて来た。腹が熱くなり、奥から絞りあげる様な、迫り上がる様な感覚。  「ハァッ、く、来るっ!アアッ!」  蓮の腕を両手で掴み、もうすぐ来るオーガズムを迎え待つ。ガクガクッと太腿が震えて前から透明な液体が溢れる。  「ヒィィッ!くあっ、ああっ!んんぅ!」  全身に痙攣が走る。  「ドライ来た?痙攣してる。」  返事なんか出来ない。止めようとしても前からはピストンに合わせてピュルッと吹いてしまう。ピンクのシーツにシミが出来てる。  「ハァッ!ンアアッ!イヤァァン!」  オーガズムが来たのが分かってるのに、まだ玩具で突き上げる。  「も、もう玩具、イヤァッ!ハァッ!」  やっと言えた一言。蓮は、ズルっとディオルドを抜くと、腕を解き腰を掴む。身体はオーガズムで震えている。  「凛の下の口で、俺をイかせて?」  ヒクヒクッと開いた後孔は蓮の熱い楔を待つ。充てがわれたモノは熱く玩具と違い、蓮の存在を感じさせる。ニュルッと昂りを受け入れ、またオーガズムに達する。  「ンアッ!あぁっ、蓮、蓮ッ!」  ガクガクと震えながら、蓮の挿入に全身で喜ぶ。  「はぁ、今日は流石に少し緩めだな。でも気持ちいいよ。熱くて締め付けられる。」  「んあっ!んん、ハァッ、熱いっ!」  次は熱いペニスが俺を貫く。突かれる度にギリギリッとシーツを掴み、襲って来るナカイキに翻弄される。  「ヒィ、ヒッ・・ん、んんっ!」  止まらないナカイキに唇は開いたままで唾液がだらし無く垂れる。玩具と蓮のペニスに貫かれ、身体は喜びに打ち震えてる。  もう、何度達したか分からない。シーツは、前からの体液と唾液で濡れている。太腿は溢れたローションで濡れ光ってる。半開きの目が自分の半勃ちで揺れるペニスを追う。  (あぁ、また吹いちゃったな。女の子みたいだ)  突き上げられながら、白く霞む意識の中で感じた。  「ウウッ!んっ!俺もイクッ!出すよっ!」  腹の中で熱いモノが弾けた。と同時に意識も真っ白になり飛んだ。  身体を揺らされ起こされる。あぁ、そうか。ここラブホだ。帰らなきゃ行けない。もう身体は綺麗にされ、服も着せられてた。  「ごめん。飛ぶまで追い込んで。どうにも凛にはブレーキが掛からない。ごめん。」  本当にその通りだ。車内でやったり。もうエロ大魔神が。受身が疲れるの分かってんだろ、はぁ。  ノロノロと身体を起こし、恥ずかしいけど、ラブホ前までタクシーを呼んで、本来のホテルに帰る。  「食ったステーキ分、エネルギー使ったよ、腹減った。」  蓮を使いっ走りにして、コンビニまで食料調達に行かせた。  ふぅ、ドッと疲れた。なんでわざわざラブホ?ここでも良かったじゃん。数年付き合って飽きられないだけマシかな?とか思いながら、ウトウト。ん~眠い。空腹だけど、蓮が帰るまで起きてられないかも。座ってたベッドに身体を投げ出す。予想通り、蓮が帰る前に寝てしまった。  翌朝、先に寝てた俺にブー垂れたが、疲れさせたのは誰だよって言い返したら、黙った。  沖縄もあと少し。指輪もして少し変化した俺達の関係。少しでも長く最期の時まで添い遂げたい。  クルクルと指輪を回し眺めながら想ってた。  あと1人、まだ清算してない男の事なんて、2人ともスッカリ忘れてた。

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