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第50話

 ガブリエルは当面、平和って言った。確かに平和って!来ないじゃん!平和な日常なんて気やしない!  「・・も・もう止めて・・」  ただ今、午後1時。俺のケツには新しい玩具が挿さってる。  エッチ、週1じゃなかったのか?  玩具を入れられ、ゴム付けてスキニーパンツ履いてる。前もキツイし、後ろもスキニーでピチピチだから玩具が深くまで挿さり、逃げようがない。こんなんで、皿なんか洗えない。  蓮は返事の代わりに、リモコンで玩具を、強にする。  「ンンァ!アアッ!クッ、ウウッ!」  身体に合う玩具を見つけた蓮は、またエネマグラタイプのを挿し込んだ。  理由は分かってる。大阪で短時間、会話した若い子と楽しくLINEしてたのが、気に入らないのだ。ようは妬きもち。手についた洗剤を洗い流し、フラフラになりながら、蓮の元へ。  ペタンと座り、蓮の昂りに触れる。  「・・う・浮気とかじゃ・・無いのに。」  この玩具も、相性が良くて腰が揺れ床に擦り付ける。  「ふ~ん。浮気じゃないなら、なんで中身見せないの?」  「・・べ、別に見せても、良いってっ!」  あぁ、双丘がビクビクする。気持ち良い。蓮が足で俺の息子をグリグリと捏ねる。  「んんっ、ハァッ!アァンッ!」  「さてと。お出かけしますか。」  えぇ?また外出プレイ?お尻まで隠れる大きめな上着を渡され、外出。俯いて震える身体を自分で抱きしめ、快感に耐える。顔が熱く、紅潮してる。今回の玩具は静音タイプで音は殆ど聞こえないが、前回のモノより動きが大きく複雑に中で蠢く。車に乗り込み、座った途端、  「ンアッ!んんっ、ハァッ!」  前を両手で押さえたけど達してしまった。涙目で、蓮を見る。  「・・ね。頼むから家でして?」  「ん?こないだ、片付けなくて済むからホテルが良いって言ってたじゃん。」  いや、言ったけど。こんなに頻繁にやられたら家の事なんにも出来ない。  「そ、それに!週1の約束も、反故にされてるっ!」  車は発進して、ガタンッと段差を超える。その衝撃も後孔にくる。  「んっ、んんっ!ハァ、ハァ・・・」  蓮も、もうすぐ俺が快楽に堕ちるのが分かってるから玩具を止めない。深く座り、前方に腰を突き出す格好で座り、前から手を伸ばしてスキニーの上からゴリゴリと玩具を動かす。  「ん、フゥッ!・・あんんっ!」  前のキツさも自分で摩って喘ぐ。  「おっ、エロモードに入ったね凛。」  「んんっ、・・・そうさせたんだろっ!」  「ま、そうだね。」  カチカチッとまたスイッチを入れる。動きと振動が変わり、内壁を刺激する。  「クゥッ!アァンッ!ハァッ、い、良い!」  両脚は内股になって、震える。舌で乾く唇を舐める。  「うわぁ、超エロ。下手なAVよりクルね。」  蓮の空いてる左手を繋いで、指を絡める。  「・・・玩具も、良いけどっ、蓮も欲しいッ!」  「当然。隣で絶世の美形がケツに玩具いれて喘いでるのに、見てるだけで済まないよ。」  「・・声っ出して良い?」  「いいよ?出して。」  ヘッドレストに手を掛け、身体を反らし目を閉じて後孔に集中する。  「フウウッ!んあぁんっ!ハァッ、ん、も、もっと強くしてもいいっ」  「凄いな。今日はノリが良いね。」  「・・・んっ、き、着替えあるんだよね?」  「うん、ある。」  カチカチ。マックスまで強くした。  「あぁっ、ドライ、来る!」  両手でヘッドレストを握り締め、脚を開いてオーガズムが来るのを受け止める。  「ヒィッ!アァ!グゥッ、ウウッ!」  痙攣が走る。あぁ、頭も痺れる、気持ち良い。  「あ、ヤバ。検問してる。」  「・・・ん?な、何?」  快楽に堕ちて悦に入ってる俺はすぐに理解出来なかった。前もじっとり濡れてシミが出来てる。ゴム、無意味。  リモコンを弱めた。  「んん、なんで弱めるの?」  「警察官が来る。凛、寝たふりか声殺して。」  け、警官?検問?や、ヤバイじゃんか!俺、もう前から溢れてるのに。  「蓮、どうしよっ!前、止まらないっ!」  両手で押さえるけど、漏れるのが止まらない。  「脚、閉じて。大丈夫、寝たふりして。」  「ども~、すいませんねぇ、飲酒運転の検査に御協力お願いします。」  窓を開ける。冷んやりとした空気が入ってくる。  (スイッチ切れよ、バカ蓮!)  そう、弱めるだけで切らない。こっちは漏れるのを必死に抑えて、身体の震えも堪えてるのに!  「ハァ~。」  「どうも、御協力ありがとうございました。安全運転、宜しくお願いします。」  「はい、お疲れ様っす。」  「ん?そちらの助手席の方、具合悪いんですか?大丈夫?」  カチカチッとスイッチを入れる馬鹿。ビクンッと身体が跳ねてしまった。  「・・だ、大丈夫です。」  前から堪えてたモノも、もう駄目だ。止まらない。  「大丈夫です。何でもありません。」  警察官の目を見つめ、能力を発動。  「あ、あぁそうですか。じゃ、先に進んで下さい。」  な、何とか切り抜けた。検問を抜けると同時に蓮の頭を叩く。  「バカじゃないの?何でスイッチ入れるんだよっ!切れよ!」  「イタイよ、いや、ちょっと悪戯心が・・・。」  「Uターンしろ。家に帰る。」  「えぇ?マジで言ってる?もう目の前なんだけど。」  頭に来た俺は、ズボンを下ろし、自分で挿さってる玩具を抜く。車の後ろに投げ捨てた。  「悪かったってば。そんなに怒んなよ。」  「俺は、SEXドールじゃない!」  渋々、Uターンして帰宅。今回はマジにキレた。着替えると当面の着替えをバックに入れて、部屋から出る。  「な、何してんの?何で荷物持ってんだよ。」  「暫く、実家に帰る。頭、冷やせ。」  「冷やすのは凛だろ?ちょっとふざけただけじゃん。」  「・・・恋人が漏らしたり、喘ぐのを人前でやらせたいのか?」  「別にそこまで考えてないよ。謝るから落ち着けって。」  「蓮のSEXに対する意識について行けない。毎回流されて、言えなかったけど。」  「凛だって楽しんでたじゃないか!」  「それは、2人っきりだからだ!人前であんな事やられた身にもなれよ!」  「だから、謝ってるだろ!謝罪も受け付けないのかよ!」  「自分がエスカレートしてる事に気がついてない!だから怒ってんだ!」  どう見たって謝ってるように見えない。左指から、指輪を抜く。    「これ、預ける。よく考えろ。」  「ちょ、ちょっと待てよ!事をでかくすんなよ!」  「でかくしてない。デカイんだよ。そんなにSEXしたけりゃ、沢山金あるんだ。女買ってこい。」  バシッと音がした。頬が熱い。引っ叩かれた。  「今のは凛が悪い。俺は凛しか抱かない。」  「だからと言って、自分の好きな時に俺の意思を無視して抱くのは悪くないのか!」  初めて大喧嘩して、引っ叩かれた。涙目にはなったが、俺は悪くない。泣かなかった。  会話は途切れ、俺は家を出た。  「ただ今~。」  「あら、お帰りって、顔腫れてるじゃないの。」  「・・・うん。喧嘩したら、叩かれた。暫く、ここに居ても良い?」  「・・・まぁ、長く付き合えば色々在るわね。良いわよ、自分の家じゃないの。」  「ありがと。世話になります。」  「アンタ、指輪は?指輪どうしたの?」  「・・・置いて来た。」  「ハァ、馬鹿ね。話が拗れるだけよ。自分達で解決なさいよ?口出さないからね。」  解決か。解決するのかな。蓮は俺が居なくても困らない。炊事をやるお手伝い、雇えば良いんだから。  自分の部屋に入ると何故か、涙が溢れてきた。  ドイツで監禁されてた時もイタリアで呪いを掛けられても、いつも蓮が助けてくれた。俺には蓮が必要だけど、蓮には俺が必要なのか自信が無い。身体の繋がりだけなのかも知れない。ケンの言葉が重くのし掛かる。  『蓮にいいように抱かれて、愛情と勘違いしてる。』  夕食は食べる気にならなかった。風呂に入り、早々に布団に潜る。  (夏、カミーノ行きたかったなぁ。もう無理だよね。)  泣きながら眠りに落ちた。  数日経つが、蓮から何も連絡も来ない。確か離婚した時も呆気なく別れたな。今回もそうなのかな?また捨てられるのか。  華には連絡しとこう。  「華、今、大丈夫?」  〔うん。大丈夫、何?〕  「蓮と別れるかも知れない。だから、カミーノ、3人になるかも知れない。」  〔はぁ?何で別れるのよ。喧嘩位で別れるとか馬鹿な事しないでよ?〕  「・・・喧嘩した。引っ叩かれた。」  〔え?殴られたの?どこ?顔?〕  「うん。顔。でも引っ叩かれたのはどうでも良いよ。今、実家に居るけど、全然連絡も来ないし。」  〔・・・喧嘩の原因は?〕  「・・・・。」  〔SEXか。そうでしょ?もう、姫達めんど臭いわ。姫はそのまま、そこに居て。私、蓮見てくるから。〕  「分かった。迷惑かけてごめん。」  「ちょっと、何これ?」  私は瞬間移動出来るから、電話を切って直ぐにマンションに飛んだ。家の中、荒れ放題。酒とタバコの臭いでむせ返ってる。  「ん~。何だ、華かぁ?何しに来た?笑いに来たか?捨てられた馬鹿男見に来たのか~?」  酔っ払いが、絡んで来た。あ~面倒臭い。2人してお互い捨てられたと思い込んでる。バケツに水を入れ、蓮の頭からぶっ掛ける。  「な、何すんだよ!」  「おい、万年発情期!姫は捨てられたと思ってんぞ。どうすんの?自分が蒔いた種でしょ、自分で動かなきゃ、本当にお別れが来るわよ!」  「・・・凛が俺に捨てられたって思ってんの?」  「そうよ。連絡も来ないって凹んでた。自分が悪いと思うなら、態度で示しなさいよ。姫はネガティヴだからね。」  そう言って、私はアパートに戻った。後は2人の問題。  濡れた身体を拭きながら、部屋を片付ける。片付けたら、迎えに行かなきゃ。凛が心閉じてしまう前に。自己中だった。興味本位で凛に触れ弄んだのは、俺だ。凛は、我慢して受け入れてただけだ。凛は悪くない。  泣きながら部屋を綺麗にする。  「すいません、ご無沙汰してます。」  夕方、凛の実家に行く。久しぶりだ。  「やっとお迎えね。上がって?自分の部屋にいるから、ちゃんと話し合いなさい。」  10日ぶりに凛と顔を合わせる。気まずい。  「その、叩いて悪かった。手を上げるなんて最低だよね。ごめん。」  「いいよ、済んだ事だ。」  凛の心は冷めているみたいだ。  「今まで、自己中で凛を抱いてた。俺が全面的に悪い。すまなかった。」  「頭、あげて。全部、終わった事だ。」  終わった事?済んだ事?凛は別れたいのか?  「ねぇ、凛。凛は俺と別れたい?」  「わからない。蓮にとって、俺はどんな存在?蓮には、俺が居なくても大丈夫みたい。」  「違う!凛は必要な存在だよ?10日、たった10日で俺の生活は荒れ放題だよ。凛が居ない。魂にポッカリ穴が空いたみたいだった。」  「家事は、家政婦雇えば済む。SEXだって、蓮は女性にモテるから困る事ないだろ?」  駄目だ。完全に心閉じてしまった。10日間も逃げてしまったから。  凛の手に触れる。ビクッと緊張が走ったのが分かる。哀しい、俺に対して緊張してる凛。ドイツの件を乗り越え、イタリアの呪いも乗り越えたのに、俺の所為で心が離れてしまった。凛の両手で、自分の顔に触れさせる。  「どうしたら良い?どうしたら、また帰って来てくれる?」  「・・・あの家に俺の居場所は無いよ。今のままじゃ、ただのSEXドールだ。」  「そんな事ない!あの家には凛が居ないと駄目だ。頼むから、戻って?離れたいなら、俺が出るから。落ち着くまで、距離を置きたいなら、俺が出るから。」  「駄目、蓮の家はあそこだけじゃないか。俺には実家も、華のアパートもある。蓮は出なくて良い。」  出る出ないが、問題じゃない。伝えたい気持ちが言葉にならない。  「・・・れ、蓮、泣いてるの?」  「凛、凛が居ないなら、俺はなんで存在しなきゃいけない?ガブリエルに頼んで、灰にしてもらう。」  「だ、駄目だよ!そんな事、そんな事しないで!」  2人して泣いている。お互いが必要な事は分かりきってるんだ。  「俺の所為でもう大事な人が死ぬのは耐えられない。だから灰になるなんて、言わないで。」  「凛が居ないと俺は駄目だ。駄目なんだよ。凛が居るから、戦えるし、働く意欲も湧くし凛を誰にも、誰にも渡したくない。」  もう、言葉は要らなかった。凛の左手を取り、指輪を通す。拒絶しない。目が合いキスを交わす。愛おしい、愛おしいと伝える為に。  唇を離し、俺の肩に顔を乗せて  「お家、帰る。ここは淋しい。」  凛は、帰って来てくれる。強く抱きしめた。  「あれ?部屋綺麗じゃん。」  「うん。華が来て、バケツで水、ぶっかけられたから、ついでに片付けた。それに凛が帰って来てくれるって信じてたからね。」  「ソファー濡れてないよ?」  「うん、床に寝てたから。」  俺が実家に帰ってからまともに生活してなかった様だ。ゴミ袋にはビール缶が沢山。ベッドも、寝た形跡が無い。  「何か作るから、寝てなよ。まともに食べなくて、呑んでたんだろ?」  「う~ん、そだね。凛が帰って来てくれたら一気に身体重くなった。」  クスクス笑い合う。出張でもっと離れてた時もあるのに。理由が違うだけで、こんなに変わるのか。  夕食が出来上がる頃には、蓮はソファーで熟睡してた。寝てなかったのか。俺の方が、被害者ヅラしてたけど、ちゃんと寝てたし、食べてた。蓮はまた天涯孤独になる恐怖と対峙してたんだ。  「ごめんね、蓮。俺の方がいい年こいて、冷静になれなかった。許してね。」  そっと毛布を掛けて休ませた。  蓮が寝てる間に、良い関係を維持する為に必死に情報を集める。その、夜の件も含めて。  (ふむ。成る程。俺の態度も良くなかったのか。いつも、最初嫌がって、最後はその、なんだ、おねだり?する位、ノリノリだもんな。だったら、最初から受け入れろって事か。)  情報元が2chだけど、まぁいいか。  結局、蓮は朝まで爆睡して、俺もベッドで寝た。  「う~ん、腹減った。」  ん?蓮起きたか。  「温めなおすから。」  「いや、いいよ。このまま食べる。」  美味そうに、全部平らげた。嬉しいな。  「ニコニコしてる。なして?」  「え?ん、美味そうに食べてくれるから。」  そう?だって美味いから。そう言って淹れたてのコーヒーを飲む。  「うん、凛が淹れたコーヒー美味い。」  そりゃ研究したもん。あれ?俺今、スゲ~幸せな気分だ。  こんな日常を忘れて小さい事に頭来て家を出るなんて、馬鹿な事したなぁ。  「凛、本当に綺麗になったなぁ。出会った時も綺麗だったけどさ。」  「何だよ、いきなり。何も出ないぞ。」  こっち来て?と言われ、キッチンからダイニングに。蓮が膝をポンポンと叩いてる。膝に座れって事?言われたまま、膝の上に座る。  「まぁ、いつも淹れるだけだろ?飲んでみ?美味いよ。」  うー、コーヒー苦手なんだけど。  一口飲む。あれ?甘い。砂糖入れてないのに。  「コーヒーも豆によって、甘くなったりするんだよ。美味いだろ?」  「うん。これなら飲める。ケーキにも合いそう。」  「俺達もさ、形に拘らずにさ、俺達なりの関係作ろう?俺、二度と凛と離れたくない。頑張ってブレーキかけるから。嫌なら殴っていいから。暴れていいから我慢して受け入れなくて良いから。」  「うん、分かった。俺も変なプライド捨てて蓮と向き合うから。その代わり、ちゃんと受け止めろよ?」  俺の胸に顔を埋めてる。服が濡れる感じがする。泣いてるのか。この大男が愛おしくて堪らない。  顔を上げさせ、唇にキスをする。唇をこじ開け、舌を入れる深いキス。  「凛、まだ朝だよ?俺の事、試してる?」  「愛し合うのに、時間関係ある?」  蓮は俺を抱き上げ、寝室へ向かう。  これでいい。これが俺達の形。

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