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第73話

 裕太が、闇の者との混血?闇の者になる前に処分?  「裕太を処分?出来るわけないじゃないか!」  「裕太の家族は普通の家庭だぞ?闇の者との混血?意味がわからん。」  穏やかに寝息を立てて眠る裕太。可愛らしい童顔で、恋心を殺して友人を選んだ優しい子。  「悩んでも仕方ない。裕太の家に電話する。」  「してどうするの?相手が答えると思う?」  「もしもし、夜分遅くに申し訳ありません。今、関東に裕太君と祭りに、はい、えぇ、いつもお世話になってます。時間も時間なんで、ストレートにお尋ねしたいんですが。」  聞いてて居た堪れない。  「あぁ、そうでしたか。すいません。立ち入った事を。はい、じゃ、失礼します。」  「何だって?」  「裕太は、養子だって。両親は不明。」  「裕太は知ってんの?」  「うん、成人した時話したらしいよ。」  闇の者との混血。だから捨てられたのか。どちらにせよ、殺せない。  ネックレスに触れ、ガブリエルを呼ぶ。来るか?呼んでも来ない時もある。  「何だ?聞きたい事でもあるのか?」  現れた。  「処分って、殺すって事?そんな事出来ない。」  「君らが出来ないなら、出来る者にやらせるまでだ。」  「処分以外で、助けられる方法は無いの?」  「そうだ。まだ人間だ。殺せない。」  「無いこともないが、本人が受け入れられるか、私には分からない。」  「方法があるんだな?教えろ。」  「・・・まず君らの説明からしろ。そして、ディウォーカーになれたら助かる。しかし、ディウォーカーになれるかどうかは、神の御意思だ。」  「分かった。明日、朝日が昇る前にガブリエル、ここに来い。そして、裕太をディウォーカーに出来るように神に伝えろ。」  俺は裕太に寄り添い、優しく頭を撫でる。裕太まで化け物にしなきゃいけないのか?出来なきゃ殺される。涙が止まらない。  「どうして?どうして・・裕太は何も悪くないのに。ケンもそうだった。俺達に関わるとみな不幸になってしまう。」  蓮は、俺の肩を抱き、  「違う。関わると不幸になるんじゃない。俺達が彼らの運命を辿るのを見なきゃいけないんだ。」  「裕太?裕太、起きて。話がある。」  深夜、数時間寝かせてから起こした。  「な、何?夜中だよ?どうかしたの?」  「とても大事な話だ。」  俺達の今までの事、役目、能力、人間では無いことも話した。    「に、人間じゃないの?嘘だ!だって、凛も蓮さんも温かいし、昼間動けるじゃないか。」  「ほら、心臓、動いてない。」  裕太の手を胸に導く。鼓動がしない事に驚き、手を引いた。  「次は、裕太、お前の話だ。」  「俺、俺、化け物なの?嘘だよ!心臓動いてるもん!年もとるし、病気も、ケガも・・・」  裕太の言葉が止まる。  「病気もケガも、した事ない・・・。車にはねられても、ケガ1つしなかった・・・。」  身体回復能力だ。20代後半でこの若さや幼さは、年齢も止まってるかもしれない。  「今はまだ人間だよ。問題は人間性を失って本当の化け物になったら、殺さなくてはならなくなる。」  「俺、殺されるの?嫌だよ。怖いよ。死にたくない!」  「助かる方法は、俺や蓮の様なディウォーカーになるしかないみたいなんだよ。」  「家族は?家族は年老いて死んでいくのに取り残されるの?」  裕太は泣きながら、これからの運命に怯えている。  「2人はいいよ。パートナーがいるもの。俺は?ずっと独りぼっちで何年も何百年も生きなきゃいけないの?」  膝を抱えて、震えながら嗚咽している。悲しすぎる。  コンコンとノックする音。  こんな深夜に誰だろ?  「はい・・・、ロイ!どうしたんだ?」  ロイが、やってきた。  「ガブリエルが、ここに来いと伝えてきた。理由はわからん。」  何故、ロイを?俺達にも分からない。  「何故、彼は泣いてる?泣くのはよせ。不幸が集まる。」  ロイが優しく裕太をなだめる。  「うっうっ、あ、貴方は?」  「私はナイトウォーカーだ。簡単に言えば昔ながらのヴァンパイアだ。」  「集まったな。もうすぐ夜が明ける。裕太、裕太であってるな?」  ガブリエルが、裕太に声をかける。  「はい。俺が裕太です。」  「そして、ロイ。役者は揃ったな。」  どういう意味だ?  「ロイ、君は長い時間をナイトウォーカーとして過ごした。神は全てご存知だ。」  「その神が私に何の用だ?」  「ロイ、貴方をディウォーカーに変化させる。そして、闇の者と対峙するのだ。」  「私が、ディウォーカーに?必要ない。私は今まで通り、人間を愛し、1人で生きていく。」  「今からもう1人、ディウォーカーになる。そのパートナーになるんだ。」  裕太のパートナー?ロイが?何で?  「ロイの働きは大きい。ディウォーカーがたった4人ではいずれ、限界が来る。裕太もこれが最後のチャンスだ。化け物になって処分されるか、ロイと共にディウォーカーになり生きていくか。」  朝日が差し込み、部屋が太陽の光で満たされる。そこには新しい生き方を選んだ2人も居た。  ロイも、もう数百年ぶりという朝日を静かに見つめる。  「不思議な感覚だな。数百年、逃げてきた太陽に、今包まれてる。」  「俺は?俺は今からどうしたら良いの?」  ディウォーカーにはなれたが、自分の意思と言うより助かる為になった。ロイとも初対面なのにパートナーにならなくてはならない。  「生活自体、何も変わらないから安心して。大丈夫。闇の者達が、暴れ出したら退治するだけ。後は何も変わらない。」  裕太の側で、話しかける。  「いきなりパートナーが、数百歳のジジィで申し訳ないな。君がどうしても嫌なら、共にいる必要はないと思う。」  「わからない。俺、わからないよ!」  突然起こされて、友人がヴァンパイアで自分も化け物。で、パートナーは、数百年生きてきたヴァンパイア。そりゃパニックになるよ。  「裕太、裕太と呼んでいいかな?ゆっくり話をしよう。パートナーに無理やりなる必要はない。友人でいいんだ。」  優しく穏やかなロイ。俺と蓮は、席を外した。  「うまくやれるかな?ロイと裕太。」  「うーん、ロイは多分、裕太の事良く思ってるよ。凛をナンパした時みたいな感じ。裕太はどうかな?現実を受け入れられなきゃ厳しいかな。」  「裕太、私が怖いかい?」  「ううん、怖くない。だって、俺がディウォーカーになる為に貴方もなったんでしょ?」  「あぁ、そうだよ。ナイトウォーカーでも良かったんだが、可愛らしい君が1人で泣いてるのを見捨てる訳には行かなかったんだよ。」  「俺が可愛い?普通だよ。」  「確かに、凛と比べたら普通だが、君しかない魅力もちゃんとあるよ。」  ロイは優しく裕太の顔に触れ、優しくキスを交わした。  「怖くないね。私としては、パートナーになりたいんだが、無理強いはしたくない。」  「ロイさんが、パートナー・・・。凛から少し話は聞いてる。人間を愛して、沢山見送ってきた優しくて愛情深い魂だって。」  「そうか。裕太はどう思う?」  「そんな人にパートナーになりたいって言われたら断れないよ。貴方は優しい。」  「そうか。私も君が住んでる街は大好きなんだ。近くに住んでも平気かな?」  「うん、いいよ。俺も実の両親が不明で独りぼっちなんだ。ロイさんも近くに住んでくれたら、寂しくない。」  「ロイで、良い。わかったよ、裕太。君の街でゆっくりと過ごそう。」  半日ほど部屋を空けて戻ったら。  その。ベッドで2人が寝てました。はい、裸で。  「進展、はぇーな。おい。」  「俺もそう思う。」  でも、寝顔はとても穏やかで、ロイにピッタリくっついてる。ロイも顔付きが緩んでやっと愛する相手を見つけた安堵感が浮かんでる。  「なんか、疲れたな。もう一部屋取って休まない?」  「そうだね。俺も眠い。」  まぁスィーツ巡りと買い物は流れちゃったけど、裕太を殺さずに済んだし、ロイも孤独から愛の人になれた。  「一晩で、色々あり過ぎだよ。疲れた。」  「てか、ロイはあんなに手が早いのか。良かったよ、凛喰われなくて。」  「はい?何でそこに俺が出るの?」  「ロイ、最初凛を見つけた時、本気だったんだぞ。危ない危ない。」  なんだそりゃ。  ロイは、今まで協力者のお陰で生きながらえてきた。彼らに説明と礼、それから住処を始末する為に、遅れて引っ越しをするらしい。  「ロイって、優しいねっ!凛と同じかそれ以上!」  なんか初恋したJKぽいぞ。裕太。  「そ、そんなに良かった?」  聞いた俺が馬鹿だった。それから小一時間、ずっとロイの話ばかり。こりゃもう落ちてますな。蓮はずっと笑ってる。  「まぁ落ち着け、裕太。不老不死だ。焦らなくても、ロイとずっと一緒だ。」  「そうだ、そうだよね!身体の相性も合うし、意外と性欲も彼、強いんだよ。フフッ、俺にピッタリかも。」  聞いてない事も報告してくれた。ありがと。  「姿は、人間のまま?」  「うん、ロイとも話し合ったんだ。試しにディウォーカーの姿になったら、ダメ、人間の姿になれってさ。」  「試しになってみて?」  スッと、身体が変化した。本来の姿だ。  「あー、凛の系統か。そりゃダメだな。」  「凛の系統?」  「集まってきちゃうんだよ。男がね。」  人間の姿に戻って、  「そりゃ面倒くさいね。ロイだけで良いもん。」  もう惚気てるよ。はぇーよ。  「あぁ、後、ランジェリー着る時、凛も一緒って言ったら見に行くって。」  お前、人の性癖を勝手にバラすな。

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