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第83話

   今日から入院。  病気じゃないし、元気なんで暇だ。  仕方ないので、日記を書く事にした。  入院1日目。  スィートルームみたいな個室。テレビに冷蔵庫。バスルームも広い。ただ、俺が男だから、あんまり部屋から出ない方が良いと思うから寂しいかな。他の妊娠さんは、最上階のレストランで食事を取るらしい。俺は部屋で1人。気楽だけどやっぱり寂しい。  入院2日目。  今日は、運動不足解消に、病院でやってるヨガに参加。男とバレないかドキドキしたけど、臨月の腹とロン毛のお陰か、誰も怪しまない。そりゃそうだな。このフロアに入院してんのは皆んな妊婦だ。ただ、デカイよね。1人だけ。バレないのが、分かったから売店に行ったり、食事をレストランに変えて貰った。プレママさん達と友達になった。楽しい。  入院5日目。  やっと蓮が来た。  仕事前倒しにして来たらしい。  「寂しくなかった?」  と、聞かれたのでママさん達と友達になったって言ったら驚いてた。  お土産のスィーツ、美味しかった。体重が殆ど増えなかったから、もっと食べてと看護師から言われてしまった。  チビがデカくなって、胃が圧迫されて食べれなくなってしまった。  蓮が、暫く泊まるので、病院に許可貰って病院近辺を散歩できる。やっぱたまには外に出ないとね。  入院10日目。  あと4日で、チビに逢える。  蓮も、泊まったり、通ったりして出来るだけ一緒にいる時間を増やしてる。  今日は裕太が、来た。  「これ。体重増えないんでしょ?じゃ食べれる?」  大好きなケーキ屋のスィーツ。食べます。  「お腹触っていい?」  「うん、いいよ。」  「うわっ、触らなくてもお腹グニグニうごいてるよ?スゲ~。」  「うん、足とか分かるよ。」  「チビ~、出てきたらお兄ちゃんとも遊ぼうね~。」  裕太も本当は俺みたいに子供欲しいんだろうな。腹に触れた時、感情が流れてきた。  入院12日目。  「で、出来るかな?」  「大丈夫。大丈夫。」  鍵閉めて、その抜き合いをした。腹が張ると言ってから、エッチしてなくてお互い溜まってたから、やっちゃった。病院だけど。  入院13日目。  いよいよ、明日、帝王切開。蓮も昨日から産まれるまで、泊まるらしい。なんと、別料金払ったら、一緒に食事出来る。他のママ達も産後や、直前になると旦那さんと食事してる。なんか、嬉しい。普通の夫婦みたい。  「凛ちゃん、旦那さんイケメンね!美男美女だから、きっと赤ちゃんも可愛いわよ。」  ママ友から言われた。嬉しいけど美女じゃないんだよね・・・。  入院14日目。  今、起きた。日記も今日まで。多分、書く暇無くなるだろう。華や、裕太、ロイまで来てくれた。手術は、昼1時から。食べれないから、甘い飲み物で我慢。緊張するな。  もうすぐ1時、点滴が入る。手術着のピンクのワンピースが恥ずかしいな。  「凛さん、気分は大丈夫ですか?」  看護師が様子を見に来た。  「大丈夫です。お腹空いてるだけかな。」  「そうですね。もう少し我慢して下さいね。じゃ、オペ室に行きましょう。」  ゾロゾロ、華達を引き連れてオペ室へ。入る直前、蓮が写真を撮った。  「頑張って!」  笑顔で返事。  オペ室はヒンヤリして、やっぱ緊張する。イタリアから来たエクソシストの医師もいる。立会い出産は普通、帝王切開だと出来ないけど、通訳を兼ねて蓮もオペ室にいる。  手術台に上がり、脊椎に部分麻酔。怖いから、ずっと蓮の手を握ってる。  「ここ、感覚ありますか?」  「いえ、ありません。」  麻酔が効いた。いよいよ腹を切る。  「蓮、少し怖いよ。」  「大丈夫。付いてるから。」  「うん。離れないで?」  「分かった。手握ってて。」  「では、予定帝王切開術、始めます。よろしくお願いします。」  腹を切られる感覚は無い。ただ、腹の中に手を入れられる圧迫感はある。グニグニして気持ち悪い。  「はい、もう出ますよ。お腹押します。」  そういえば、性別聞いてなかったな。分からないって言われてから。どっちかな?  グッと腹を押されて何か引き出される感覚。  「ふっ、フギャー!」  元気な産声。生まれた。蓮の子!大好きな蓮の赤ちゃん!涙が溢れる。  「おめでとう、凛。元気な赤ちゃんだ。ありがとうな。」  蓮も涙目。  「おめでとう御座います。元気な男の子ですよ。」  男か。華、当たったね。オペ室の外からも声が聞こえる。  「はい、ママの所にいようね。」  看護師が、産湯で綺麗にしてくれた赤ちゃんを連れてきた。  「可愛いな。凛に似てる。」  「そうかな?蓮にも似てるよ。」  手術の縫合が終わるまで、一緒に居た。時々薄目を開けて眩しそうな顔して、モジモジ動く。  エクソシストの医師が何か言ってる。  「何?」  「何か、変わった事があったら、すぐに報告する様にって。ヤバイかな。赤ちゃん連れて行かれるかも。」  「ヤダよ!渡さない!」  「大丈夫。いざとなったら、皆で大暴れしたら、エクソシストなんて相手にならない。それにチビはもう能力使える。」  「あ、そうか。そうだね。皆んな近くにいたね。良かった。」  部屋に戻ったら、先に赤ちゃんが部屋に居た。  赤ちゃん用のベッドから、俺が休むベッドに赤ちゃんを移す。  「可愛い。なんで、俺手放す事考えたんだろ。馬鹿だね。」  「そうだ。頑固で馬鹿だ。誰にも渡さないから。」  「可愛いわね。今の赤ちゃんって、生まれてからすぐ顔整ってるわよね~。」  「本当、可愛いなぁ。」  裕太の切ない感情が流れ込む。  腕の中で、スヤスヤと眠る赤ちゃん。涙が浮かんでしまう。蓮も涙目。  「名前、どうしようかな。」  「うーん、悩むね。」  華達から色々な名前の候補が上がった。  ふと、裕太の予知夢が頭をよぎった。  「ね、蓮。赤ちゃん、天使のお告げで授かったじゃん。」  「うん、そうだな。」  「天、うーん。天・・・天馬は?」  「天馬か。うん、良いね。天馬。元気に駆け回りそうだ。天使の御告げで、駆け回る元気な子になるよ。」  「天馬ね、良いじゃない?」  「天馬か。良い名前だな。」  ロイも華も、賛同してくれた。  「じゃ、あだ名はテンちゃんだね!」  もう、あだ名かよ。  「よし、決定。名前は天馬。明日、役場に行ってくるよ。」  「ありがとう。頼むね。」  身体回復能力はあるけど、血液飲めないので、普通の人間より多少早いくらいの回復だから、暫く痛くて動けない。でも、看護師さん、強い。  「癒着とかあるから、身体動かしてね。」  麻酔切れて結構痛いんだけど。  流石に母乳は出ないからミルク。かぁちゃんなのかとうちゃんなのか、分かんないけど、母乳あげれなくてゴメンな、天馬。  母子同室が病院の基本らしい。母性本能を育てる為だとか。まぁ、2人とも育児は初めてじゃないし、父性本能はあるよね。  でも、天馬は手がかからない。昼間起きて、ゴクゴクミルク飲んで、起きてて、夜は全く起きない。楽。  「チビん時、手がかからないとデカくなってかかるってさ。夜泣き位、しとけよ~天馬。」  「夜泣きとか、したらかなりの間、エッチ出来ないね。大丈夫?」  「あ、そうか。前言撤回だ。夜は寝ろ。いいな。夜泣き禁止。」  禁止って、生後3日の赤ちゃんに何言ってんだ。  予定通り、1週間、病院に居た。エクソシストの医師も小まめに部屋に来て天馬を観察してる。天馬は、それが分かるのか大人しくしてる。  天馬の能力は腹の中で既に目覚めてて、生まれてからも泣いたりすると物が飛んだりする。コントロールを教えなきゃいけないな。  体型も、直ぐに戻った。華からの勧めで、肉割れ防止のクリームでマッサージしてたから、肉割れもないし、切開の跡も消えた。  自宅に帰った。  部屋が、いつの間にか赤ちゃん模様になってる。リビングには、ベビーベッド。寝室にもある。ぬいぐるみや、オモチャ、絵本の山。  「これ、どうしたの?買ったの?」  「いや、貰った。華とロイ達から。」  あ、そうなんだ。  「当分、オムツとミルクだけだね。買うの。」  「そうだね。俺が買いたかったんだけどね。」  ベビーベッド要らないとか言って買わなかったけど、あったら、あったで便利だな。ベッドの下は収納だし。  抱いていた天馬を寝かせる。  「やっぱ、我が家が1番だ~。ん~寛げる~。」  「多分、今だけだと思うけどな。」  そして、育児戦場と化す我が家になった。

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