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第87話
「おかえり、テン。」
いつからか、返事をしなくなった。今、四年生。反抗期かな?と思って、触れずにいた。
テンが、屈んだ拍子に教科書が散らばった。
教科書は・・・落書きだらけ。
『バケモノ!』
『日本人のクセに金髪!』
『近寄んな!』
『死ね!』
「テン、これ、どうしたの?学校、虐められてる?」
「・・・五月蝿い!関係ない!」
テンが弾けた。泣きながら、自分の部屋に篭った。
「蓮、今、話できる?」
「うん、何?」
「テン、学校で虐められてるみたい。教科書、落書きだらけ。罵詈雑言の嵐だよ。」
「虐めか。想定内だけどな。少し話してみるか。」
「想定内?何で?」
「金髪で、両親が男2人だよ。もしかしたら、能力、学校で使ったかもしれない。」
「・・・そうか。俺より蓮の方が良いかもね。」
「テン、入るぞ。」
テンの部屋に蓮が入って行った。
防音がしっかりしてるから、会話は分からないけど、落ち着かない。
「終わった?」
「あぁ、虐められてるな。全部聞いた。」
「そっか。先生と話す?」
「いや、それはしないでくれって。余計酷くなるからって。」
「そうか。分かった。テンの思うようにしよう。」
「それで良いと思う。」
テンへの虐めは、かなり続いた。だけど休んだりせずに、五年生に上がった。
「はい、そこ!道からはみ出ない!」
遠足。つまらない。友達も居ないし。でも休んだら、2人とも心配するし。
少し先をいつも虐めてくる隆達が、グループでふざけながら歩いてる。道路にはみ出してる。別にどうでも良いけど。
「コラッ、危ないから2列になりなさい。」
先生が、注意に来た。
先生の背後に、トラック。変な走り方。フラフラしてる。
運転手が手を横に振ってる。先生は気がつかない。隆達は、トラックに気がついたけど、動けない。トラックが突っ込んでくる!
咄嗟に手をトラックに向けて、
「止まれっ!」
叫んで、隆達と先生の前に走ってた。必死だったから、力使っちゃ駄目って言われてたけど、使っちゃった。
トラックは、少し地面から浮いて止まってる。ゆっくり降ろす。
僕も力が抜けて、ペタンと地面に座った。
「良かった、間に合った・・・。」
「ケ、ケガは?ケガ無いっすか!」
運転手が、慌てて降りて来た。
座り込んでる僕に先生が駆け寄る。
「大丈夫です。ケガはありません。」
「すいません!ブレーキが効かなくて。はぁ、良かった。すいません。」
「天馬君、大丈夫?ケガしてない?」
「はい、ケガしてないです。」
「今の、今の天馬がやったの?」
隆達が聞いてきた。
「うん。そう。バケモノだからね。」
いつも、バケモノ扱いされてるから、嫌味言った。
「バ、バケモノなんかじゃねーよ!カッケーよ!スゲ~!」
カッコいい?何処が?こんな力要らない。
「命の恩人って、ヤツでしょ?先生!」
「そうだな。天馬君の不思議な力無かったら、先生も死んでたかもしれない。」
その後から、僕に対する姿勢がガラッと変わった。遠足も、隆達と一緒に歩いたり遊んだり。力見せてって、言わない。バケモノっても言わなくなった。アレは特別な時だけ使うんだっていったら、そりゃそうだよ!って。
「ただいま!」
「おかえり、遠足楽しかった?」
「うん、ちょっと危なかったから。力使っちゃたけど、誰もバケモノって言わないんだ!カッコイイって!特別な時だけ使うんだって言ったよ。」
「そうか!そうだね。特別な時だけ。偉いね。」
「でね、笑ったら、可愛いって、女の子から言われた。」
「あはははっ、マジか。テン、モテ期が来るぞ。」
「蓮!余計な事言うな!」
「な、天馬ってスゲ~な。あの力、カッケー。」
「それに笑うとこ初めて見た。」
「うん、俺も。」
「俺も。」
「・・・・めっちゃ可愛くなかった?」
「可愛かった・・・。」
「うわー、クソ、なんで男なんだよ!あんな可愛いのに!女子なんか比べ物になんねーよ!」
「禿同。」
「禿同。」
「も、弄るのやめよーぜ。バカバカしくなってきた。」
「な、仲良くなった方が良いと思う。」
「俺も。」
「確か、とーちゃん?女かと思うくらい美人だよ。」
「じゃ、天馬はとーちゃん似か。スゲ~。」
もう、テンの顔に陰りがない。毎日、楽しそうに学校に行って、帰ってきたら1日の出来事を話す。良かった。乗り越えたね。
六年生、もう直ぐ中学か。早いなぁ。
「ね、ホラ、毎日お手紙貰う。下駄箱に一杯。」
ありゃ、本当にモテモテじゃないか。俺もモテてたけど、これ程じゃない。
「あ、あのさ、好きな子いるの?」
「え~、秘密!」
教えてくれない。うーん、男の子だし、早めに性教育必要かな。うん。
ダイニングの上に手紙忘れてった。悪いかなと思いつつ、差出人の名前・・・・。
「どうした?何これ。」
「テンに来るラブレターの山。」
「で、何で凛が固まってんの?」
「差出人の名前、見ろ。」
「ふむ。・・・・。」
「な、固まるだろ。やばくね?」
「殆ど、男子じゃねーかよ。」
「テンは、お手紙って言ってる。ラブレターって思ってないよ、多分。」
「テンは、天然のテンかよ。六年生だろ?気付けよ。」
「多分、俺達、見てるから、同性に抵抗ないのかも知れない。どうしよ。」
「なるようにしか、ならんよ。」
「忘れ物無い?」
「うん、大丈夫。確認した。」
「じゃ今日は、早く寝なさい。楽しみだね。修学旅行。」
「うん。隆達と同じ部屋なんだ。ベタベタ触って来るヤツらから、助けてくれる。」
「え?そ、そんな事されてんの?」
「うん。プロレスって言うんだけど、技かけないで抱きついたりして来る。」
「て、その隆って子に助けてもらってんのか?」
「うん。だって、本気で嫌がったら力でちゃうし。だから、抱きつこうとしてきたら隆達の所に逃げたら追い払ってくれる。」
「おー、俺、分かったかもぉ。テン、隆の事、好きなんじゃない?」
「ち、違うよ!バカエロ親父!友達!」
「そうだよな。馬鹿は、無視しろ。さぁもう寝よう。」
「うん。おやすみなさい。・・バーカ。」
ゲラゲラ笑う蓮。もう、思春期だぞ。発言気をつけろよ。
修学旅行は、ナイト達が守ってくれたらしく、風呂も寝る場所も助けてくれたらしい。うーん。姫的位置?ヤバくない?
六年生も終わり頃から、しきりに早く中学に上がりたいと言う。2つ上に仲のいい子がいるらしい。入学したって1年間だけ一緒なんだけどね。
中学に上がって、春休み。毎日、遊びに出掛ける。その新三年生、葵って子と遊んでるみたい。うん、いいね。引き篭もるより、外で遊ぶ。健康的。
たまたま、今日は蓮と2人で市街地までお出かけ。もう、テンも中学だし、留守番位出来る。
「ちょっと、遅くなったかな。食事どうする?」
「外で食うか。テン、呼んできて?俺、車に居るから。」
「うん、分かった。呼んで来る。」
「テン、ただ今~。遅くなってごめん。ご飯外で食べ・・・。」
ノックせずに、テンの部屋を開けた。開けたらね、全裸のテンと身体が一回り位大きな男の子。彼も全裸。そんでもって、合体中。静かに扉閉めました。
家を出て、車に乗る。
「?テンは?」
「さ、最中だった。」
「最中?何の?」
「せ、SEX。」
「はぁ?まだ12だぞ?どうしたの。」
「静かに扉閉めてきた。」
「へ?止めないで?閉めてきたの?」
「だって、もう合体してたもん。」
「はい?マジかよ!なんで止めねーの!」
車から飛び出そうとした蓮の腕を掴む。
「なんで、引き止めんだよ!やめさせなきゃマズいだろ?女の子、責任取れねーぞ!」
「ち、違う。違う。」
「違う?何が違うんだよ?」
「相手、男の子。テンが、その、あれだ。下だった。」
「・・・マジかよ~。」
マジです。はい。モロ、俺達の影響かと思います。
ね、どうしたらいいんでしょうか。俺達にも分かりません。
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