88 / 109
第88話
「とりあえず、家に帰ろう。飯は後だ。」
部屋に入ったら、シャワーを浴びてる音。テンの部屋を覗く。
「・・・テン。その彼が、葵君?」
コクンと頷く。まだ、SEXの名残か顔も身体も火照っているみたいだ。
「初めてじゃないな。テン。」
蓮が、強めに言う。
「・・・・うん。初めてじゃない。」
「テン、落ち着いて聞いてね。お付き合いが悪いとか思ってないよ。だけどね、まだエッチが早い。身体が成長しきってないのに、SEXは負担が大きいよ。」
「だって、好きなんだもん。葵も好きって言ってくれた。」
「好き=SEXじゃないんだ、分からないのか?」
蓮が、イライラしてる。
「ちょっと、蓮、落ち着いて。俺がテンと話す。」
ガチャと風呂から、葵君が出てきた。
「お前、何したか、分かってんのか!」
「す、すいません!」
バタバタと帰ってしまった。
「なんで、葵を怒るんだよ!悪い事してない!」
「12歳、まだ12歳だ。それで、もう何回やったんだ!」
「回数が問題なの?おかしいよ!本気かどうかだろ!」
「じゃ、何で逃げた?悪いと思ってるからだろ!」
「逃げるに決まってる!アンタみたいにデカイ大人が怒鳴ったら逃げるよ!」
パンッと高い音。
「親に向かって、アンタとはなんだ!口の利き方から、躾直しか?」
「・・・大っ嫌い!エロ親父!」
バタンッとドアを閉めた。テンの部屋には、俺とテン。
「今のはテンが悪い。パパにアンタは、駄目。」
「・・もう、終わりだよ、追い返されて怖かったと思う。葵、もう僕の事、嫌う。」
大きな瞳から、ポロポロと涙を流す。
「その位で、テンと別れるなら、テンの事大切に出来ないよ。」
「僕、本当に葵の事、好きだったんだよ。」
「うん、わかる。好きだから、身体許したんだよね。最初辛かったろ?」
「り、凛。うん、辛かったけど、大好きだから・・。」
布団で体を包んで抱きしめる。
淡い初恋は、多分終わる。
それからが、大変。
テンは、蓮と喋らないし、蓮も頑固に折れない。
「あの後、どうなった?」
「うん、やっぱ、葵君、別れたって。」
「ふん、やっぱその程度か。」
聞いていたテンが、飲みかけのジュースを蓮にぶっかけた。
「冷たっ!何すんだ!テン!」
「ぼ、僕の気持ちなんてわかんない癖に!」
「あぁ、分からないね。ヤリ捨てされるのが分かってるのにSEXしまくる奴なんて。」
「酷い!どうして、そんな事言えるの?好きだけじゃ駄目なの!」
「そうだ。好きだけじゃ駄目だ。思いやりが無いと駄目なんだ。」
「分かんないよ!思いやり?」
「身体が小さなテンを押し倒してヤリまくる男が、思いやりが有るとは思えない。」
「大っ嫌い!」
バタンッと部屋に籠る。
「蓮、言いたい事は、分かるけど言い方。 もっと言い方考えて?」
「どんな風に言っても中身はかわらん。今、自覚させなきゃ、誰とでもやる人間になっちゃうぞ。」
「そうだけど・・・。」
学校が始まり、家には蓮が常にいるから休まず学校には行く。ただ、帰りが遅い。夕食ギリギリまで、帰ってこない。
「テン!テン、今大丈夫?」
「あ、葵、葵先輩?」
「こっちに来て?」
「・・・はい。」
「ここなら、誰も来ない。ね、しよ?」
「でも、先輩、別れようって。」
「あれは、演技。ね、やろ。」
「・・先輩、僕の事好き?」
「うん、勿論。」
「じゃ、家にきて?付き合うのは大丈夫なんだって。エッチがまだ早過ぎるって怒られたんだ。だから、家に来て?」
「・・・それは嫌だな。あの人怖いし。・・それより、ホラ早くシヨ。」
「・・ヤダ。先輩、エッチがしたいだけ?」
「あーもー、うっせーな。そうだよ、SEXしてぇーだけだよ!早く脱げよ!」
「や、ヤダ!やめてっ!」
「俺の事好きなんだろ?だったら、股開きゃ良いんだよ!」
(パパが言ってた思いやり・・葵には無い・・)
「やっ、やだっ!」
「何してんだ、テメェ!」
「た、隆!」
「なんだお前!」
隆?何で?葵も少し怯えてる。隆の方が体格が良い。
「嫌がってる奴に何しようとしてんだ!」
「クソッ!テン、お前なんかと二度と関わんねーからな!」
「葵先輩・・・。」
隆が、葵先輩の胸ぐらを掴む。
「お前、余計な事ベラベラ喋んじゃねーぞ。テメェの進学もメチャクチャにしてやんからな。」
僕は2人を見ながらポロポロ泣くしか無かった。本当に葵先輩とは終わり。葵先輩は、身体目的だったんだ。
「テン、入学してからあんま、喋ってないけどさ、あんな奴、早く忘れろ。ほら、服整えて?帰ろう?」
「・・うん。帰る。ありがとう。」
隆は何も聞かない。力を初めて見た時も何も深入りしなかった。
「た、隆も家こっち?」
「うん。引っ越してね。◯◯マンション。」
「僕の家と一緒。気がつかなかった。」
「マジか。そっか、じゃたまには一緒に帰ろうか?」
「うん。良いよ!」
「テンは、泣いてるより笑ってる方が良い。」
「ただ今。」
「お帰り。今日は、早かったね。オヤツあるよ。」
「パパ、居る?」
「うん、居る。話したい?」
「うん、報告かな。」
「パパの言う通りだった。葵は身体目的だった。」
テンがポロポロ泣きながら蓮に報告してる。
「何か、されたのか?」
「・・・学校で、押し倒された。」
「本当か?葵の連絡先わかるか?」
「だ、大丈夫、未遂だから。あの、小学校からの隆、わかる?隆が助けてくれた。」
「・・・あぁ、思い出した。そうか。友達になれそう?」
「うん、おんなじマンションに住んでる。」
「そうか。良い友達作れ。いろんな人と関わって成長するんだよ。テン。」
「今度、家に呼んでいい?ゲームとかで遊びたい。」
「おぅ、良いぞ。来る日教えてくれたら、パパがお菓子作ってやる。」
「本当?うん、今度、誘ってみる。ありがとう。」
良かった。蓮ともちゃんと会話してる。蓮の考えてた通りだったな。良いパパさんだ。
日曜、甘い香りが漂う。
「何、作ってんの?」
「クッキーだ。ちゃんと凛のも有る。」
「お、ありがと。隆君って、どんな子かな。」
「うーむ、そうだなぁ。元いじめっ子だろ?強そうだな。」
チャイムが鳴る。来たみたいだ。
パタパタと、テンが、走る。
「いらっしゃい!パパがクッキー焼いてくれたよ!」
「うん、良い香り。お邪魔します!」
お、元気な声だ。どれどれ?テンと同じ年・・・。
「初めまして、隆って言います。お邪魔します。」
「あ、あぁ、い、いらっしゃい。」
蓮も言葉詰まってる。テンと同じ年に見えない。デカイ。本当に12歳か?
「デカイから、びっくりした?隆は、4月生まれだから、デカイんだよ。」
テンは3月生まれ。1年の差は大きいな。
2人で楽しく遊んでる。うん、遊んでるけどね、テン。お目目が♡マークだよ。駄目だ。また恋してる。わかり易いな。
葵は、まぁ、人並みだったけど、隆君は体格も良いし、イケメンだ。その上、性格も良い。隆君が帰った後も、隆君の話ばかり。葵に襲われた時も何も聞かない、黙って送り届ける。13歳なのに男前じゃないか。
「寝た?」
「うん、寝たよ。いや~、テンはアレだね、また恋したな。」
「俺も分かった。もう、お目目が♡マーク。」
「確かに、性格も考え方も大人だし、男前だな。」
「うーん、そうだなぁ。隆君とならお付き合い、許そうかな。」
「あれ、早いな。まだ、テンの片想いでしょ?」
「バカだな。凛、隆君もテンが好きだぞ。分からなかったか?」
「え?マジ?」
「あぁ。あの微妙な距離感。初々しいねぇ。」
「てか、男同士でも良いんだ。」
「それに関して俺達は何も言えないだろ?」
「あ、そうだな。言えないや。」
クスクス笑う。今度は上手く行くといいね、テン。
一学期も終わり頃、テンが呟いた。
「隆、僕の事、好きじゃないのかも。」
「ん?何で?良く遊びに来るじゃん。」
「うん、来るけど、エッチしない。」
「・・・テン、エッチが全てじゃないぞ?先ずは精神的に繋がらないと。」
「うーん、キスはするんだけどね~。」
あ、してるんだね。あ、そう。
「キスしてんなら、好きなんだよ、我慢してんだよ。」
蓮が一言。
「何で我慢するの?好きならエッチしないの?」
「テンの身体を考えてんだ。慌てんな。」
ポンとテンの頭をはたく。
「うーん、我慢してんだ。そっか。なら、変に2人っきりにならない方が、隆も楽だね。」
「お、分かって来たな。そういう事。」
やっと、普通の恋愛出来そうだね、テン。
て、夏休み初日。同じマンションだから、隆君の両親にも会ってご挨拶したんだよ。したその日にお泊りに来たよ。うん。それはいい。
朝、起こしに行ったら、別々に寝てる筈の2人がベッド・イン。しかも裸。テン、お前、誘っただろ。まだ、蓮は寝てる。
「ほら、起きてっ!服着て、パパが起きちゃうよ?」
「ん、あ、凛。おはよ。」
「おはよ、じゃない。何してんの?服着なさい。」
「す、すいません!」
「いいよ、付き合ってんでしょ?知ってるから。だけど、服は着て寝て?」
「そうだな。服は着て寝ろ。」
あ、バレた。
「すいません。その、まだ早いって思ったんです。だけど・・・。」
「別に謝らんでいい。好き同士でお泊りすりゃ、ヤリたくなる。」
あれ、怒らない。
「怒んないんだ。」
「テンの顔みたら、怒る気失せたわ。朝飯頼む。」
テンの顔ねぇ。確かに幸せそう。
朝飯作るか。
「シャワー浴びなさい。そのまま寝たんだろ?」
「うん、分かった。」
「別々に入るんだぞ。」
「チェッ。」
チェッじゃない。
12歳の2度目の恋は叶いました。
早熟過ぎますが。
ともだちにシェアしよう!