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第88話

 「とりあえず、家に帰ろう。飯は後だ。」  部屋に入ったら、シャワーを浴びてる音。テンの部屋を覗く。  「・・・テン。その彼が、葵君?」  コクンと頷く。まだ、SEXの名残か顔も身体も火照っているみたいだ。  「初めてじゃないな。テン。」  蓮が、強めに言う。  「・・・・うん。初めてじゃない。」  「テン、落ち着いて聞いてね。お付き合いが悪いとか思ってないよ。だけどね、まだエッチが早い。身体が成長しきってないのに、SEXは負担が大きいよ。」  「だって、好きなんだもん。葵も好きって言ってくれた。」  「好き=SEXじゃないんだ、分からないのか?」  蓮が、イライラしてる。  「ちょっと、蓮、落ち着いて。俺がテンと話す。」  ガチャと風呂から、葵君が出てきた。  「お前、何したか、分かってんのか!」  「す、すいません!」  バタバタと帰ってしまった。  「なんで、葵を怒るんだよ!悪い事してない!」  「12歳、まだ12歳だ。それで、もう何回やったんだ!」  「回数が問題なの?おかしいよ!本気かどうかだろ!」  「じゃ、何で逃げた?悪いと思ってるからだろ!」  「逃げるに決まってる!アンタみたいにデカイ大人が怒鳴ったら逃げるよ!」  パンッと高い音。  「親に向かって、アンタとはなんだ!口の利き方から、躾直しか?」  「・・・大っ嫌い!エロ親父!」  バタンッとドアを閉めた。テンの部屋には、俺とテン。  「今のはテンが悪い。パパにアンタは、駄目。」  「・・もう、終わりだよ、追い返されて怖かったと思う。葵、もう僕の事、嫌う。」  大きな瞳から、ポロポロと涙を流す。  「その位で、テンと別れるなら、テンの事大切に出来ないよ。」  「僕、本当に葵の事、好きだったんだよ。」  「うん、わかる。好きだから、身体許したんだよね。最初辛かったろ?」  「り、凛。うん、辛かったけど、大好きだから・・。」  布団で体を包んで抱きしめる。  淡い初恋は、多分終わる。  それからが、大変。  テンは、蓮と喋らないし、蓮も頑固に折れない。  「あの後、どうなった?」  「うん、やっぱ、葵君、別れたって。」  「ふん、やっぱその程度か。」  聞いていたテンが、飲みかけのジュースを蓮にぶっかけた。  「冷たっ!何すんだ!テン!」  「ぼ、僕の気持ちなんてわかんない癖に!」  「あぁ、分からないね。ヤリ捨てされるのが分かってるのにSEXしまくる奴なんて。」  「酷い!どうして、そんな事言えるの?好きだけじゃ駄目なの!」  「そうだ。好きだけじゃ駄目だ。思いやりが無いと駄目なんだ。」  「分かんないよ!思いやり?」  「身体が小さなテンを押し倒してヤリまくる男が、思いやりが有るとは思えない。」  「大っ嫌い!」  バタンッと部屋に籠る。  「蓮、言いたい事は、分かるけど言い方。 もっと言い方考えて?」  「どんな風に言っても中身はかわらん。今、自覚させなきゃ、誰とでもやる人間になっちゃうぞ。」  「そうだけど・・・。」  学校が始まり、家には蓮が常にいるから休まず学校には行く。ただ、帰りが遅い。夕食ギリギリまで、帰ってこない。  「テン!テン、今大丈夫?」  「あ、葵、葵先輩?」  「こっちに来て?」  「・・・はい。」  「ここなら、誰も来ない。ね、しよ?」  「でも、先輩、別れようって。」  「あれは、演技。ね、やろ。」  「・・先輩、僕の事好き?」  「うん、勿論。」  「じゃ、家にきて?付き合うのは大丈夫なんだって。エッチがまだ早過ぎるって怒られたんだ。だから、家に来て?」  「・・・それは嫌だな。あの人怖いし。・・それより、ホラ早くシヨ。」  「・・ヤダ。先輩、エッチがしたいだけ?」  「あーもー、うっせーな。そうだよ、SEXしてぇーだけだよ!早く脱げよ!」  「や、ヤダ!やめてっ!」  「俺の事好きなんだろ?だったら、股開きゃ良いんだよ!」  (パパが言ってた思いやり・・葵には無い・・)  「やっ、やだっ!」  「何してんだ、テメェ!」  「た、隆!」  「なんだお前!」  隆?何で?葵も少し怯えてる。隆の方が体格が良い。  「嫌がってる奴に何しようとしてんだ!」  「クソッ!テン、お前なんかと二度と関わんねーからな!」  「葵先輩・・・。」  隆が、葵先輩の胸ぐらを掴む。    「お前、余計な事ベラベラ喋んじゃねーぞ。テメェの進学もメチャクチャにしてやんからな。」  僕は2人を見ながらポロポロ泣くしか無かった。本当に葵先輩とは終わり。葵先輩は、身体目的だったんだ。  「テン、入学してからあんま、喋ってないけどさ、あんな奴、早く忘れろ。ほら、服整えて?帰ろう?」  「・・うん。帰る。ありがとう。」  隆は何も聞かない。力を初めて見た時も何も深入りしなかった。  「た、隆も家こっち?」  「うん。引っ越してね。◯◯マンション。」  「僕の家と一緒。気がつかなかった。」  「マジか。そっか、じゃたまには一緒に帰ろうか?」  「うん。良いよ!」  「テンは、泣いてるより笑ってる方が良い。」  「ただ今。」  「お帰り。今日は、早かったね。オヤツあるよ。」  「パパ、居る?」  「うん、居る。話したい?」  「うん、報告かな。」  「パパの言う通りだった。葵は身体目的だった。」  テンがポロポロ泣きながら蓮に報告してる。  「何か、されたのか?」  「・・・学校で、押し倒された。」  「本当か?葵の連絡先わかるか?」  「だ、大丈夫、未遂だから。あの、小学校からの隆、わかる?隆が助けてくれた。」  「・・・あぁ、思い出した。そうか。友達になれそう?」  「うん、おんなじマンションに住んでる。」  「そうか。良い友達作れ。いろんな人と関わって成長するんだよ。テン。」  「今度、家に呼んでいい?ゲームとかで遊びたい。」  「おぅ、良いぞ。来る日教えてくれたら、パパがお菓子作ってやる。」  「本当?うん、今度、誘ってみる。ありがとう。」  良かった。蓮ともちゃんと会話してる。蓮の考えてた通りだったな。良いパパさんだ。  日曜、甘い香りが漂う。  「何、作ってんの?」  「クッキーだ。ちゃんと凛のも有る。」  「お、ありがと。隆君って、どんな子かな。」  「うーむ、そうだなぁ。元いじめっ子だろ?強そうだな。」  チャイムが鳴る。来たみたいだ。  パタパタと、テンが、走る。  「いらっしゃい!パパがクッキー焼いてくれたよ!」  「うん、良い香り。お邪魔します!」  お、元気な声だ。どれどれ?テンと同じ年・・・。  「初めまして、隆って言います。お邪魔します。」  「あ、あぁ、い、いらっしゃい。」  蓮も言葉詰まってる。テンと同じ年に見えない。デカイ。本当に12歳か?  「デカイから、びっくりした?隆は、4月生まれだから、デカイんだよ。」  テンは3月生まれ。1年の差は大きいな。  2人で楽しく遊んでる。うん、遊んでるけどね、テン。お目目が♡マークだよ。駄目だ。また恋してる。わかり易いな。  葵は、まぁ、人並みだったけど、隆君は体格も良いし、イケメンだ。その上、性格も良い。隆君が帰った後も、隆君の話ばかり。葵に襲われた時も何も聞かない、黙って送り届ける。13歳なのに男前じゃないか。  「寝た?」  「うん、寝たよ。いや~、テンはアレだね、また恋したな。」  「俺も分かった。もう、お目目が♡マーク。」  「確かに、性格も考え方も大人だし、男前だな。」  「うーん、そうだなぁ。隆君とならお付き合い、許そうかな。」  「あれ、早いな。まだ、テンの片想いでしょ?」  「バカだな。凛、隆君もテンが好きだぞ。分からなかったか?」  「え?マジ?」  「あぁ。あの微妙な距離感。初々しいねぇ。」  「てか、男同士でも良いんだ。」  「それに関して俺達は何も言えないだろ?」  「あ、そうだな。言えないや。」  クスクス笑う。今度は上手く行くといいね、テン。  一学期も終わり頃、テンが呟いた。  「隆、僕の事、好きじゃないのかも。」  「ん?何で?良く遊びに来るじゃん。」  「うん、来るけど、エッチしない。」  「・・・テン、エッチが全てじゃないぞ?先ずは精神的に繋がらないと。」  「うーん、キスはするんだけどね~。」  あ、してるんだね。あ、そう。  「キスしてんなら、好きなんだよ、我慢してんだよ。」  蓮が一言。  「何で我慢するの?好きならエッチしないの?」  「テンの身体を考えてんだ。慌てんな。」  ポンとテンの頭をはたく。  「うーん、我慢してんだ。そっか。なら、変に2人っきりにならない方が、隆も楽だね。」  「お、分かって来たな。そういう事。」  やっと、普通の恋愛出来そうだね、テン。  て、夏休み初日。同じマンションだから、隆君の両親にも会ってご挨拶したんだよ。したその日にお泊りに来たよ。うん。それはいい。  朝、起こしに行ったら、別々に寝てる筈の2人がベッド・イン。しかも裸。テン、お前、誘っただろ。まだ、蓮は寝てる。  「ほら、起きてっ!服着て、パパが起きちゃうよ?」  「ん、あ、凛。おはよ。」  「おはよ、じゃない。何してんの?服着なさい。」  「す、すいません!」  「いいよ、付き合ってんでしょ?知ってるから。だけど、服は着て寝て?」  「そうだな。服は着て寝ろ。」  あ、バレた。  「すいません。その、まだ早いって思ったんです。だけど・・・。」  「別に謝らんでいい。好き同士でお泊りすりゃ、ヤリたくなる。」  あれ、怒らない。  「怒んないんだ。」  「テンの顔みたら、怒る気失せたわ。朝飯頼む。」  テンの顔ねぇ。確かに幸せそう。  朝飯作るか。  「シャワー浴びなさい。そのまま寝たんだろ?」  「うん、分かった。」  「別々に入るんだぞ。」  「チェッ。」  チェッじゃない。  12歳の2度目の恋は叶いました。  早熟過ぎますが。

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