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第96話

「う、ううん?」 目が覚めたら、あの屋敷じゃなかった。 「凛、大丈夫か?今、ホテルだよ。」 懐かしい愛おしい人の声。 「蓮・・・俺は・・」 「あの状態でのオーガズムは、身体の勘違いだ。凛が自ら、受け入れたものじゃないさ。」 ・・・ロイ。 「よく、耐えたね。凛、お帰り。」 裕太もいる。 「僕達は、先に帰ります。ゆっくり休んで下さい。」 健太、ありがとう。 「僕、残りたい!」 天馬。 「天馬、よく顔みせて?」 「凛、僕の身代わりになってくれたんだよね、ごめんね?」 すりよってくる。まだ、親が必要な時期に居なくなったんだ。寂しかったよね。 「謝る必要はないよ、テン。結果的に俺の方が良かったと、アイツらは言っていたから。」 「テン、蓮さんと2人にしてあげよ、ね、先に帰ろ?」 隆君。君は本当に器がデカイな。テンの事、頼めるよ。 「ここ、リゾート地だから、暫くのんびりしよう、凛。」 「蓮、いいの?」 「うん、それに指輪、指輪失くしてる。新しいの作ろう?」 「うん。うん、新しいの欲しい。」 我慢してた涙が溢れた。大事な指輪を目の前で壊された。この数年の心の支えだったのに。 一通り皆と言葉を交わして先に帰るのを見送った。 「まだ、顔色良くないな。眠いだろ?ゆっくり休んで。」 「ありがとう。うん、まだ眠いや。」 蓮がベッドに入ってきた。 「一緒に寝よ。俺も眠い。」 「うん、またいつもの場所、もぐっていい?」 「あぁ、いいよ。凛だけの指定席だ。」 蓮の腕の中。夢にすら滅多に出てこなかったのに、また戻ってこれた。諦めかけてた。 「また、汚れちゃった。こんなんでも、かまわないの?」 「どこも、汚れちゃいないよ。凛の心は澄んだままだ。」 「蓮、蓮・・・。愛してる。ずっと、ずっと捕まってた間も。」 「俺もだ。守りきれなくてごめんな?」 「ううん、俺は皆んなを守れたんだから後悔はしてないよ。」 「そうか。さ、寝よ。また、最初からやり直せばいいんだ。」 清潔なベッドと暖かい蓮の腕の中。最高の場所で本当にゆっくり眠った。 「天馬、大きくなったね。もう俺と同じくらいかな?」 「そうだね。まぁ、隆君もデカくなったからあんまり見た目的には変わらないけどね。」 「でも、あの2人がまだ仲良くて、良かった。」 「うん、凛が居ない間、テンが時々不安定になったんだけどね、隆君が寄り添ってくれたよ。」 「そっか。良かった。」 ルームサービスで、ゆっくり食事をしながら会話。 「進学もね、もう一個上のレベルの高校にも入れたんだけど、朝から夕方まで勉強一色で休めないからって、ランク下げてね。でも、まぁ大学には行きたいって言ってるから2人で、勉強会してるよ。」 「へぇ。しっかりしたね。」 「うん。勉強はリビングでやるんだよ。イチャイチャしたい時だけ、部屋に籠る。」 「そういえば、成績下がった事あったからなぁ。」 「ちゃんと覚えてるじゃん。よく耐えたよ凛。」 「指輪のお陰だよ。あとは、世話係の女性かな。手作りの十字架を教会まで運んでくれた。」 「あぁ、彼女か。凛が助けられて泣いて喜んでいたよ。」 「もう村に帰れないって言ってた。どこに行ったんだろ?」 「あぁ、だから村近くの街に小さな家と当面の生活費渡して暮らせるようにしたよ。」 「ありがとう、蓮。彼女との時間は安らぎだった。」 「で、ここは何処なの?」 「インドネシアだ。捕まってた場所よりかなり離れてるよ。」 「そうか。散歩、あとで、散歩したいな。ずっと屋内だったから。」 「そうだね。夕方、海岸散歩しよう。海が綺麗だ。」 夕焼け色に染まる綺麗な海岸をのんびり歩く。 「沖縄も綺麗だけど、ここも綺麗。」 「少し長めに滞在しようかと思う。ちゃんと回復して、日本に帰ろう。」 「うん、ありがとう。指輪は日本で作ろう?多分太る。」 「だな?」 2人でクスクス笑いあう。 「こっちのスィーツ半端なく甘いからな。」 数日経つが、蓮は俺を求めない。行為に抵抗に抵抗があるのが、わかったみたい。悪いなぁ。我慢させてる。 「ね、蓮。バスルーム広いから一緒に入らない?」 「ん?あぁ、無理すんな。そんな事に気ぃ使わなくて良いよ。」 「そんな事じゃないよ。大切。足ツボも押してやるから。」 「い、いや、足ツボ無しなら入るよ。うん。入る。」 身体も回復して、まぁ少し肉ついたかな。早朝には散歩したりしてるけど。 「まだ、痛々しい体に見える?」 「いや、戻ったかな。戻り過ぎた?」 「うっさいな。スィーツ食べてないよ!」 じゃれ合いながら、バスへ。 やっと元のバカップルに戻れた夜だった。 帰国したら、日常が追っかけてくる。毎日の弁当作りに家事。仕事に蓮のお相手。天馬も緊張感から解放されて、下半身も全開。油断したら、隆君を部屋に連れ込む。 笑ったり、叱ったり。 平凡な日常が、いかに大切で、慈しむものか改めて感じてる。 「天馬が高校出たら、引っ越すか。」 「そうだね。」 歳を取らない俺達は一箇所にずっと住めない。また、華達や裕太達と離れてしまうが、心は繋がってる。 「引っ越すの?じゃ、俺達もついてく。」 「私達も、引っ越すわ。健太、仕事辞めたし。」 あ、あそうなの。皆んな一緒か。まぁいいか。 また、ドタバタがあるだろうけど、皆んなで笑え合うなら幸せだ。

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