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第106話
それにしても。
引っ付いたり別れたり。落ち着かない付き合いしてるよなぁ。まぁ、拉致監禁は別にしても。
指輪だって、はめたり外したり。
左手に、光る指輪を眺めながらのんびり湯に浸かってた。
視力もどうにか、回復してきて、光やぼんやりとだけど、人影も分かるようになってきた。まだ、杖はいるけどね。
痩せちゃったから、少し緩いけど、すぐにピッタリになるだろう。指輪をクルクル回してた。
「おーい、長いけど、大丈夫?」
ん?いつもより長かったかな?
「大丈夫〜、もう出るよ〜。」
まだ、治ってないから心配ばかりしてる。蓮は、俺の失明を自分の所為だと責任を感じて俺の世話を必死こいてやってる。
うーん、自分の事位、出来るんだけどな。
「長かった?心配かけたね。」
「ちょっと気になっただけ。いいよ。」
復縁?してから数ヶ月。なんと一切、手を出してこない蓮。まぁ、処理くらいしてるんだろうけど。俺がちゃんと回復するまで、やらないって、エッヘンって胸張って宣言してた。子供かっ。
「もう夏なのに回復しなくて、沖縄行けないね。ごめん。」
「謝らなくていい。沖縄逃げないし、シーズンオフでも、良いくらいだ。」
まだ、視線があわないけど、心は切なくも苦しくも寂しくもない。穏やかで、平和に溢れていた。
『次のニュースです。〇〇家 惨殺事件の犯人が特定され……』
「〇〇家?聞いたことあんな。うーん。」
「聞いた事あんの?知り合い?」
「知り合いっていうか、株主総会とかで、会った気がする。」
「うわー、それ、あれだろ、蓮が行くくらいだから、普通の株主総会じゃないだろ?」
「あー、まーそうね。確か一人息子が助かったんだよなぁ。もう成人してると思うけど。」
「ふーん。捕まるといいね。」
「そうだね。生きてりゃね。」
「ん?どういう事?」
「あのピンク頭覚えてる?」
「ピンク頭?うーん。」
「アイツ、依頼があったら始末する仕事だからねー。ちょっと気になったから調べたけど、多分奴も人間じゃない。」
凛は驚きを隠せなかった。
「あー!思い出したよ。ピンク頭の子ね。ハイハイ。」
暫くして思い出した。バーで、蓮に絡んでたし、うちにも来たな。
「そうだね、力持ってたね。」
「うん、だけど、どうやら街から出たみたいでね。闇の者が現れてもピンク頭来ないんだ。」
「恋人いなかたっけ?」
「うん、いたな。でっかい男。アイツがどうやら一人息子みたい。生き残りの。」
「ふーん。別れたのかな。」
「ピンク頭も年取らないって言ってたから、別れたんだろう。彼氏は普通の人間だからな。彼氏を想えばこそか。」
なんか切ないな。身を引いたのか。あの時院生なら、もういい年齢だ。一緒にいるのも辛いよな。好きなのに。
「独りで、そうやって、好いた相手との別れを繰り返して生き長らえるってのも、辛いなぁ。」
「好いた相手が目の前に居るのに手を出せないのもなかなか、ツラミです。」
「それは勝手に自分で、宣言したからだろ?俺のせいじゃないよ。」
「早く治って〜( ̄^ ̄゜)」
「ん?それは俺にもわからない。自分でぬきゃいいじゃん。」
「ヤダヨ。抜かない。凛とエッチ出来るまで我慢。」
いや、それは止めて。まとめてこられても、身体持ちません。治っても見えてない振りするかな。
「今、見えてないフリするとか、考えたろ?その位、演技か本当か見抜けるからな。|・`ω・)ジィー」
もうね、30年付き合ってんのに、執着強えよ。少し怖いわ。
一目惚れした時の話なんか聞いてて居た堪れない。
『あれは、俺に送られた天からの贈り物だ!』
『吸血鬼?いんや、天使にしかみえなかったよ!』
『凛より美しい生き物を見たことが無い!』
もういい、もういいです。はい。
「さて、飯にしますか。今日は活きのいいヒラメがあったから、刺身に骨煎餅。デカいから半分は、唐揚げにしよう。」
「うわ、ご馳走じゃん。ありがとう!」
「凛の為ならえーんやこーらっだな。」
うん、早く回復して、蓮スッキリさせよ、その方が身の為にもなりそ。
結局、全回復まで、1年掛かった。
朝、目が覚めたら眩しくて、目を開けていられなかった。
「ど、どうした?大丈夫?」
「うん、大丈夫だけど、眩しくて目が開けられない。」
慌ててカーテン閉めて暗くしてくれた。
ゆっくり目を開く。最初はピンボケの世界。それでもいつもより見える。
朝日の光に慣れる頃には、ピントが合ってきた。
「蓮、連の顔、ちゃんと見えるよ!ボケてない。見えるよ!」
涙が溢れて堪らない。1年、1年一緒にいて見えなかった愛おしい相手が、目の前にいる。
視線が合う。これがいかに嬉しいことか、分かるだろうか?共にいても視線はズレて少し寂しかった。今、目の前にいる絶世の美貌の持ち主、愛してやまない相手が涙を流しながら震えている。
愛おしい、嬉しい。抱きしめて抱きしめて、キスをする。
「おかえり、凛。ずっと待ってたよ。」
「ただいま、待たせたね。」
深くキスをする。朝飯?そんなのは、後だ。
凛自ら、服を脱ぐ。
「俺もずっと欲しかったよ、蓮。」
愛情を交わすのに、時間なんて関係ない。
その日1日、寝室から出なかった。
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