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第4話
高校の入学式当日から翠は目立ちまくっていた。
「すっげーかわいい子がいる」
「モデルみたい」
「彼女にしてえ」
同級生たちがさざめきあっているのが、相変わらず皆より頭一つ飛び出している俺からは俯瞰するようによく見えた。
当の翠は注目されることには慣れているし、度胸もあるので平然としている。
しかし、四日目の昼休み、隣のクラスの翠が俺を呼びに来て廊下の隅っこに連れて行った。たくさんの男の視線が背中に刺さっているのがわかる。
「龍ちゃん、助けて。私、疲れてきちゃった」
「どうした?」
聞けば、想像通り男に追いかけまくられているらしい。すでに上級生の男たちにもマークされ休み時間や帰り道に取り囲まれたりしているのだという。
休み時間は終わりがあるが、帰りは相手も粘るのであしらうのも大変だとぼやいた。
「お前、俺を虫よけに使うつもりだな?」
「ダメ?部活の後、一緒に帰ってくれるだけでいいの。龍ちゃんに彼女ができるまででいいからさあ」
ふ、俺はあおたんがいるから彼女なんて要らない。
俺は了承した。友達が困っているなら助けてやらなきゃな。部活の後校門で待ち合わせることにして別れた。
教室に戻ると、クラス中の男の目がこちらを見ているのがわかったが、俺は無視して自分の席に座った。
しばらく遠巻きにしていた数人が「お前が聞けよ」などと押し付け合いをしたのち、髪を赤く染めた金森という男が寄ってきた。
「八神君って、花村さんと付き合ってんのー?仲よさそうだったけど」
虫よけとしてはここでそうだといった方がいいのか?でもやはりそれは翠と話を合わせてからでないといけないな。
俺はじっと金森を見た後
「幼馴染だ」
とだけ、答えた。教室にほーっというため息が広がるのがわかる。
「あ、そうなんだ」
そういって元いた場所に戻った金森は数人の男子と「こええー」「びびったー」とひそひそやっている。そんなのはもう慣れっこだからどうということはない。
俺はあおたんさえいればいいのだ。
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