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第6話

おっじゃましまーす!といつものようにあおたんが部屋に入ってきて、鼻をクンクンさせた。 「あれ?なんかすごくいい匂い!」 そりゃ、部活後の汗臭い部屋に天使を迎えるわけにはいかないからね、お気に入りのデオドランドを全身にスプレーしちゃいましたよ。 「あ、これ?」 見つかっちゃった。 「龍ちゃんの借りてもいい?」 「いいよ」 Tシャツの中にスプレーしながら 「わあ、ひんやりするんだこれ。いい匂いー」 と言ってTシャツをパタパタさせているあおたんはマジで天使だ。 「俺もこれ買おう。これすれば、運動の後も汗臭くなくていいよね」 おいおい、あおたん色気づいちゃって、好きな女の子でもできちゃったの?いや、もう彼女とかいたりして・・・。それはかなりショックだけど・・・仕方ない・・・よな。 あおたんが俺の正面に胡坐をかく。 「ねえ龍ちゃん、今日姉ちゃんと一緒に帰ってきたの?」 「ああ」 「明日の朝も一緒に行くの?」 「うん」 「・・・いいなあ。楽しそうで。俺も早く一緒に行けるようになりたい」 「蒼も同じところ受けるのか?」 「うん。絶対龍ちゃんと同じところに行きたい!」 ぜひそうしてほしい。俺もあおたんと一緒に登校したい。 「ねえ、高校楽しい?」 「まだ、よくわからんな。ただ・・・翠が大変なことになってる」 「大変?」 「中学生なんて1,2年はほとんど小学生と大差ないし、3年だってやっと色気づきだしたところだろ?でも高校はもっと雄になったやつがたくさんいるわけだ。そこに翠が放り込まれたら、どんなことになるか大体想像つくだろ?」 「姉ちゃん、そんなにモテるんだ?」 「追いかけまわされてると言ってたな。だから俺がボディーガード的な位置に立ってやることにした」 なんとなく彼氏という言葉は使いづらくて、ボディーガードと言ってしまったが、あおたんの顔がぱああっと輝いた。 「さすがだね、龍ちゃん!カッコいい。姉ちゃんのこと守ってやってね」 さすが天使。 「蒼は姉ちゃん想いのいい子だな」 思わずまた頭に手を乗せてしまった。あおたんは照れ臭かったのか、顔を真っ赤にしながら 「龍ちゃんが横についてたら、そうそう手を出してこないよね。見るからに強そうだもん。 いいなあ、こんなに体が大きくて。腕もほら、こんなに違う」 と二人の腕を並べてひっつけ、太さを比べている。ぎゃー、あおたんそんなにあっちこっち触って密着させないでー、と心の中で叫びながら 「まだまだ、蒼はこれから大きくなるんだよ」 と澄ました声で言った。 「でも1年しか違わないよ?龍ちゃんは去年から大きかったよ?」 「俺は生まれた時からデカかったんだ。お袋も大変だったらしい。二人の兄貴の名前に獅子と虎の字を使ったから次は鳳凰から使おうかなんて思ってたのに、俺が規格外にデカかったから、龍の字を使うことにしたって聞いた」 「へええ。でも龍ちゃんが強そうに見えるのは体の大きさだけじゃないな。もっと中から滲み出るオーラみたいなの?それと、この顔」 「どうせ老け顔と強面の二重奏だよ」 「ぷはっ、何それ!そんなことないよ。俺は男らしくってかっこいいと思うよ」 あおたんが片目でパチンとウィンクしながらそんなことを言うので、俺はその場で昇天しそうになった。 「あ、蒼は大丈夫か?お前も例によってアイドル扱いで追いかけられてるんだろ?」 「でも、俺は男だから」 「いやいや。最近は美少年を狙うおっさんも結構いるらしいから気をつけろよ」 現にここに、たまに変なこと考えちゃってる男、いるしな。 「大丈夫、俺にはこれがあるし」 とあおたんがいきなり正拳突きでみぞおちを狙ってきたので反射的に外受けで防ぎ、お互いに顔を見合わせてにやっと笑った。

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