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第7話

翌朝、翠と一緒に登校すると、予想通りの展開になった。 噂は瞬く間に広がり、下校時にはその噂の真相を確かめようと校門の周りにも校舎の窓にも人だかりができていて、笑いそうになった。 翠と二人で校門を出ると、「マジかよー!」「なんだよ、あの1年!」というぼやき声が聞こえ、「美女と野獣だ」というセリフには翠が下を向いて吹き出した。 「翠、笑いすぎだろ」と正面を向いたまま小声で突っ込むと「だって・・くくくっ」翠が俺の背中をバンバンたたきながら笑いをこらえている。 それが後ろからまだ様子をうかがっていたやつらには仲良さげに見えたのか、「ぎゃー」「翠ちゃーん」という悲鳴が聞こえてきた。   それから半月ぐらいは忙しかった。いろんな人が俺に絡みに?いや、会いにくるのだ。 そんなとき、俺はほとんど何も話さない。もともと無口で口下手なのもあるが、黙って相手の目を見ると、なぜか勝手に退散していく。 俺は今までの経験上、それが一番有効だと知っていた。 空手の試合だって同じだ。最初に押忍(おす)!と互いに挨拶をして目を合わせた時点で半分は決まっていると思う。 もともと進学校なので、そんなにはっちゃけた危ないやつはいないのも助かった。   そうこうするうちに6月の体育祭に向けての準備が始まった。 うちの高校は部外者にも公開しているので、あおたんは「絶対見に行く!」と言った。 それはもう張り切るしかない。 あおたんに少しでもカッコいいところを見せたい。 俺は準備も練習も黙々とこなした。

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