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第11話
あおたんの努力が実を結び、4月から同じ高校に通うことになった。
合格を聞いた時には俺もすごく嬉しくなって、すぐにあおたんにおめでとうを言いに行った。
きっとまた「龍ちゃん、やったよ!」ってキラキラ笑顔で飛びついてくるに違いない。
鼻の下を伸ばしちゃわないように気を付けようと思いながら花村家のインターホンを押した。
出てきたあおたんはやっぱり嬉しそうだった。
「合格おめでとう。頑張ったな」
頭に手を乗せぽんぽんすると、あおたんの目がキラキラし始めた。ほら、来るぞ。
「これでまた一緒に登校できるな」
そういった途端、あおたんの顔に何とも言えない表情が広がった。
「いいの?」
?どういう意味だ?
「もちろん」
「・・・姉ちゃんは嫌がらないかな?」
翠?高校生にもなって弟と登校するなんて嫌とか?
「あいつはそんなの気にしないだろ」
あおたんのブルーの瞳がふらふらと彷徨っている。翠と喧嘩でもしたのだろうか。
「合格祝いは何がいい?物でもどっか連れて行くのでもいいぞ」
二つの瞳の照準がピタリと俺に合った。
「ほんと!?じゃあ、俺、龍ちゃんと二人で映画行きたい!」
「いいよ」
「やった!」
ここで、あおたんはやっと?飛びついてきた。むふふ、やっぱり嬉しい。そしてかわいい。
結局春休みに、二人で映画に行ったが、あおたんは俺を朝から1日中引っぱり回し、超ご機嫌だった。
俺も「これじゃまるでデートじゃないか」と天使に振り回されながらふわふわと雲の上にいるような幸せな気分だった。
それでいて、頭の片隅でもうすぐこんな関係は壊れてしまうことを予期していた。
4月になってあおたんが同じ高校に入学し、また3人で登校するようになった。
翠は当然という感じで、なんだか中学の頃に戻ったようだ。
しかし、俺は覚悟していた。
去年、翠が入学早々、男たちに追いかけ回されるようになったように、あおたんも女子に猛アタックを受けるだろう。
そして・・・すぐにあおたんは誰かのものになってしまうに違いなかった。
そうしたら俺は木になって、黙って天使が楽しそうに飛び回るのを見ていよう。
もし、天使が飛び疲れたら羽を休められる枝を用意しておけばいい。
その時が来てもうろたえずにいられるように、俺は自分に何度もそう言い聞かせた。
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