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第12話 俺のサムライ 1

俺は龍ちゃんに初めて会った日のことをよく覚えている。 俺の両親は結構破天荒なところがある人達で、幼い頃はいろんな国に連れまわされた。 俺が10歳の時にアメリカから日本へ越してきて、しばらくここで腰を落ち着けるとダッドが言った。アジアは初めてだったし、最初はちょっと人も町もイケてないなんて思っていた。 引っ越した翌日にダッドが近所に挨拶に行くよというので、ちょっと面倒だなと思いながらもついていった。 斜め向かいのおばさんはおせっかいな人らしく、マムや俺たち姉弟が日本が初めてだと聞くと、頼りになる人だし、翠と同じ年の子供もいるからぜひ挨拶しておきなさいと2ブロックほど離れた場所へ案内した。 ずっと奥に家が見えていて、手前の道路側には平屋建ての四角い建物があり、中から何かの掛け声みたいものや、バシンバシン何かをぶつような音が聞こえてくる。 おばさんが、ちょっと待っててというようにゼスチャーすると入口ドアを開けた。中にはおそろいの変な服を着た人たちが見えた。 やがておばさんは、その変な服を着たおじさんと二人の子供を連れて出てきた。 それが八神先生と龍ちゃん、そしてその上の虎牙(コウガ)君との出会いだった。 大人たちは何やら話しているが、言葉がわからないので俺は子供を観察していた。 翠が俺の耳元で、こそっと囁いた。 「あの子、ロボットみたいじゃない?」 俺は思わず笑ってしまった。 「小さい方でしょ?僕もそう思ってたんだ」 二人でクスクス笑う。 多分、この子が翠と同じ年という少年なんだろう。 日本人は小柄が多いのに、翠よりずっと背が高くがっしりしていているうえに微動だにしない。 顔の筋肉も全く動かさず、目だけを動かして俺と翠を見ている。 結局そのとき彼の顔の筋肉が動いたのは、ダッドが俺たちの名前は瞳の色からきていると説明した時になるほどというようにうなずいた時と、「ヤガミ リュウセイ です」とゆっくり名乗った時だけだった。 家に帰って翠と「ターミネーターみたいだったね」などと笑い転げていたら、ダッドがおばさんから聞いた話を説明してくれた。 あそこは空手という武道の道場で、この地域の人達の信頼の厚い先生だということ。 昼間から道場に誰かしらいるから困ったときは訪ねていけばいいこと。 3人の息子がいるがどの子もしっかり者で、学校で困ったことがあったらリュウセイを頼ったらいいと言われたこと。 そのときはふーんと思っただけだった。

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