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第13話
地元の小学校に入学してみたら、色々勝手が違うのに戸惑った。
学校のシステムも違えば、先生と生徒の関係も違う。何よりクラスメートたちが一番よくわからなかった。
今思えばやはりアメリカは多民族国家だったのだ。クラスメートの肌の色が黄色かろうが、髪が縮れていようが、普段はいちいちそんなことを気にしていない。
今まで割と何処ででもすぐに馴染んできた俺と翠だったけど、今回はみにくいアヒルの子になった気分だった。
一つ一つのいたずらやちょっかいは大したことはなくても、しつこくて徒党を組んでやるのでうんざりする。休み時間や帰り道が特にひどかった。
しかし、そんな時なぜか、ふらりとリューセーが現れるのだ。
リューセーが二言三言話しかけると、なぜかみんなその場から去っていく。それも怖がっているというよりは、イタズラがバレちゃってばつが悪いというようにへらへら頭をかきながら立ち去るのだ。
リューセーは小学校でも異彩を放っていた。
やはり表情はほとんど変わらないのだが、学校ではもう少し子供らしく、友達と走り回っていたのでターミネーターの印象は薄れた。だが周りより格段に大人びていてみんなに頼りにされていた。
花村家ではよくリューセーの事が話題にのぼった。
「今日の昼休みにね、うちのクラスとリューセーのクラス男子でドッジボールの場所取りで喧嘩になったの。どうやらお互いに自分たちの方が早かったとか言って譲らなかったみたい。
途中で誰かがリューセーを連れてきてね、一斉にみんながリューセーに何か訴えてるの。そうしたら、リューセーはどっちのクラスも一人ずつ代表に説明しろって言ったみたいだった。二人の言い分を聞いて、リューセーが何かちょっと話したら、急にみんなうんうん頷いてオッケーとか言って、リューセーのクラスの子達がどっか行っちゃった。
そのうえリューセーのクラスの男子は、みんなでわいわいいながらリューセーのこと囲んで笑ってるの。私、ちょっとびっくりしちゃった」
「龍晟は大岡越前みたいだな」
とダッドが笑ったけど、そのネタはわからなかった。
「でも、いつも聞いていると、リューセーはサムライみたいね!」
とマムが言ったが、そっちの方が俺はしっくり来た。
刀もちょんまげもないけど、いつも落ち着いていて、なんか強そうで、でも困っている人は黙って助ける。
リューセーはカッコいい。もっと友達になりたいと思った。
そこは翠とも意見が一致して、二人で両親に道場に行きたいと頼んだ。
マムは「サムライ、サムライ!」と大喜びで、ダッドも賛成してくれた。
道場で見るリューセーは更にカッコよかった。
体が大きくキャリアの長いリューセーは中学生とスパーリングしていたが、決して負けていなかった。
俺や翠とはレベルが違うから、ミットを持って相手をしてくれたり、好きなように攻撃させて全部受けてくれたりした。
俺はリューセーに追いつきたくて一生懸命練習した。上手くできると、口数の少ないリューセーが褒めてくれるのがうれしくてたまらなかった。
翠とせっせと道場に通ううちに、八神先生はもちろん長男の獅央(シオウ)君や、虎牙(コウガ)君、他の道場生に随分かわいがられ、少年部には同じ小学校の子もたくさんいたのであっという間に友達の輪が広がった。
中でも一番仲良くなったのは、やはりリューセーだった。愛想がなくて一見取っつきにくそうだけど、実際は気取らない穏やかな性格でとても面倒見がいい。
稽古の後、リューセーはよく俺と翠を部屋に呼んでくれ三人で過ごした。
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