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第17話 俺の天使2(飛び立った天使)

「龍ちゃーん!たすけてー!」 あおたんがこっちに向かってぴゅーっと走って来る。俺は衝撃に備える。 が、今日は俺の背中にコバンザメのようにぴったりと張り付いて動かなくなった。 「ねえ、ちょっとだけ動かないで」 あおたんがひそひそ声で言う。だから俺は校舎の横で動けなくなった。 『そんなに密着しちゃダメ!背中にあおたんの吐息がかかってるし、やばいんだって!』 一人で焦っていると、渡り廊下を1年女子の二人連れがきょろきょろしながらやってきた。 「花村くーん?」 「蒼くーん。あれ?こっちの方に来たよね?2年の校舎に入っちゃったかな?」 二人がすぐそばにいる俺をチラッと見て、慌てて目をふせUターンして戻っていく。 「まだ声が聞こえるから、もうちょっとこのままでいて」 背中でまたあおたんが囁く。『嬉しいけど、困る・・・』 「おーい!もう居なくなったぞー」 「花村弟も大変だなー」 背中側の2年の校舎の上の方から声が降って来る。 振り返って見上げると、窓から4,5人の男子が身を乗り出して笑っていた。 その隣の窓には女子が鈴なりで 「蒼くーん、かわいー!」 「こっち見てー!」 などと、きゃいきゃい言っている。   あおたんが入学して半年。予想通り、あおたんは早々に有名人になった。 アイドルのような見た目に加え、翠の弟である。そして去年の運動会での派手なパフォーマンスは多くの2,3年生が覚えていた。 しょっちゅう女子に追いかけられ、相手にするのが面倒なのか逃げ回ったり隠れたりしている。 俺に助けを求めにきて飛び乗ってくるのも、もはやこの学校の者には見慣れた光景になりつつあった。 あおたんは不思議だ。 結構自由奔放なところがあるのに、憎めないキャラのおかげか女子が夢中になるのは勿論、男子にもやっかまれることなく人気者だ。 こんな風にいつの間にか上級生たちにもかわいがられている。 俺のようないかつい男に毎度抱きついたりしても、笑いに変えてしまう。 やはり天使は誰にでも愛されるのか。 翠もそうだ。 あの見た目で男を虜にすれば、たいていは女の妬みを買うものだが、曲がったことが嫌いで、からっとした性格のおかげで女子の中でもうまくやっている。 この二人には天賦の才があるのだな。 一方の俺は、下級生には随分恐れられているように感じる。 体育祭の応援団長で野太い声を張り上げたのが悪かったのか。あおたんの前だからって張り切りすぎちゃったか。 まあ、見た目もかなりむさくるしいしな。空手のおかげでよく体に痣を作っているしな。 まあ他人がどう思おうといい。 俺が気になるのはやはりあおたんのことだ。 まだ、彼女はいないようだが、このところ少し俺との間に距離ができてきたような気がする。 そりゃ、あおたんも少しずつ大人になっていくよな。いつまでも小さい頃のように俺を慕ってはくれないよな。 見た目も少しずつ変化しているのがわかる。背も伸び始めたように見えるし、少年から青年に羽化するような揺らぎを感じる。 きっともうすぐ俺の手の届かないところへ行ってしまう。 そう思うと、やはりとても寂しかった。

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