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第19話
女の子と付き合うきっかけって、好きになったときじゃなければ、なんなんだろう?
よく「好きじゃなくても、とりあえず付き合ってみればいいじゃん」という奴がいるが、とりあえずってなんだよ。
よく知らない相手や好きでもない相手でも一緒に行動するうちに好きになるかもってことか?
でもその相手がたった一人の恋愛の対象に昇格するなんて、俺にはちょっと想像できない。
口ぶりからすると、翠もやっぱり恋愛を前提にしているようだが・・・そういえば、俺はずっと虫よけをやっているが、翠的に不都合はないのか?
「翠は恋愛しなくていいのか?ずっと俺といるとそのまま彼氏なしで高校生活終わるかもしれないぞ?」
翠はしばらく黙ったままうつむいて歩いていたが、ぽつりと言った。
「私、恋愛してるよ、ずっと」
「え?」
俺は心底びっくりした。
「ずっと前から、好きな人がいるの。でも、片思いなんだ」
「告白とかしたのか?」
「ううん。多分、私じゃ無理だから」
翠が諦める相手ってどんなやつだ?こんなに傍にいたのに全く気付いていなかった自分の鈍感さに呆れた。そして改めて聞いた。
「俺はこのままでいいのか?」
「龍ちゃんは困る?このままだと龍ちゃんも彼女できないまま卒業しちゃうかもよ」
「俺は・・・多分、普通の恋愛はきっとできない」
え?というように翠が見上げてくる。
「だから、俺はこのままでいい」
「そう」
翠はかすかに笑った。それ以上のことは聞いてこない。
その辺りはお互いの感覚は長い付き合いでわかっている。だから楽でよかった。
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